洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#34 アイルランド漁業者 一連の約束を反故と開発事業者を批判

2023-06-05 16:45:01 | 日記

 

2023年06月03日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#34 アイルランド漁業者 一連の約束を反故と開発事業者を批判]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

アイルランドの沿岸漁業者で構成される“全国沿岸漁業者協会”(National Inshore Fishermen's Association:NIFA)と“全国沿岸漁業者機構”(National Inshore Fishermen’s Organization:NIFO)は、英国のグレートブリテン島とアイルランド島との間にあるアイリッシュ海沿岸沖合の洋上風力発電開発事業者が一連の約束を反故にしたとして批判を強めている。

両団体は、多国籍企業が、起きるか分からない21世紀のゴールドラッシュに挑戦し、アイルランド沿岸沖合で無規制な海洋強奪を行うことで、漁業者が伝統的な漁場から追い出される事態が起きると訴えている。

また、両団体は、EU代表者らが、アイルランド沿岸沖合を自由に手に入れることが出来るごとく対応しており、投資家は絶好の機会だと捉え、一方の現在のアイルランド政権が洋上風力発電開発事業者と漁業者の対話のため、ワーキング・グループを設置しているものの、問題を開発事業者任せにし、任せられた事業者が漁場放棄を説得するための漁業連絡担当者を雇用していると批判している。

アイルランド漁業界紙(WEB)によると開発事業者“コドリング・ウィンド・パーク”(Codling Wind Park)社は、そのイメージを再び和らげるために、沿岸地域と連絡を取るスタッフに対して“漁業従事マネージャー”という用語を使い始めている。

この沿岸地域社会は、洋上風力発電プロジェクトに反対しないことで、金銭的補償と雇用の機会を得て、年間2,000万ユーロ、25年間の基金が約束されることとなっていた。

開発事業者とアイルランド政府は、沿岸地域社会と漁業者に対し、これらのプロセスのあらゆる側面について協議すること、そして実際、それが漁業分野等にとって有益であることを保証したが、これまでのところこれは履行されていない。

また、漁業者らには、警備船の乗組員としてこれらの洋上風力発電所で働くことも約束されていたが、現在、これらの多くが反故にされている。

アイルランドの船舶は“コドリング・ウィンド・パーク”社の風力発電所プロジェクトの警備任務から外され、英国とオランダからの船舶と乗組員に置き換えられている。

2023年5月31日、NIFAとNIFOは、アイリッシュ海沿岸沖合で起きているファクトとフィクションを区別するよう求めた。

正規の許可を受けた漁業者たちが、自らの将来にさえ懸念を表明した時、すべての利害関係者と十分な協議を行うと保証されたが、これらはフィクションで、さらに、作業が進むにつれて、漁業活動への混乱を最小限に抑えるために継続的な協議と対話が約束されたものの、これもフィクションだった。

一部の漁業者が業界を去らなければならないという“最悪のシナリオ”が提示されたが、洋上風力発電プロジェクトには十分な雇用があり、恐れるに至らないとされたものの、これもフィクションだった。

“コドリング・ウィンド・ パーク”社の風力発電プロジェクトでは、アイルランドの船舶は現在その任務を解かれており、船舶の所有者が代わったことで乗組員は解雇されている。

これらは、地元以外の乗組員を雇用するEUの一員でもない第3国の英国の船舶と、外国人乗組員を乗せた他の外国所有の船舶2隻に置き換えられている。

これがファクトで、調査作業が進むにつれて、漁業者が恐れ、予測していた通り、作業域周辺でのツブ貝の漁獲量も60% から70% 減少している。

 

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