鎌倉八百ヶ谷戸

鎌倉の街はそのものが環境遺跡

善財 一 写真集

谷戸への興味は鎌倉石から

2020-04-11 11:09:33 | 環境遺跡 鎌倉の谷戸
谷戸の写真を撮っている。鎌倉は谷戸によって成り立っている。ワイドに撮れるカメラを用いることでようやく谷戸の様子が見えてくる。と言って、ワイドレンズ特有の歪みは気にいらない。
筆者が鎌倉の谷戸を撮り続けている理由は、鎌倉石に対する興味が最初にあった。鎌倉石とは・・・
 
建長寺裏の鎌倉石の石切り場跡
 
 

鎌倉の石垣は崩れ易いという特徴がある。時を重ねた石段は踏まれて摩耗し、角はなだらかになっている。急峻な山裾はしばしば崩落するため、斜面がコンクリートで保護されているところも多い。鎌倉の地質は、凝灰岩質角礫岩や砂岩であるため、軟らかく、容易に掘り込むことができる。逆の見方をすれば地盤は脆弱であり、掘り込んだ崖などに対して長い年月の風雨に耐えうる石造構造物を目論むことができないのである。

切り出し易いことから盛んに利用された石材は鎌倉石と呼ばれているが、このような理由から有用な材料ではなかった。鎌倉石を用いた古い構造物で、現在でも各所で見られる例では、屋敷の周囲を一段高くした土塀などの礎石が良く知られている。

かつて、切岸の代表的な遺構とされていたのがお猿畠の切岸だが、近年の研究で鎌倉石の採石場であったと考えられるようになった。垂直に切り立つ尾根近くの壁面はもちろん防御にも役立つことから、お猿畠の辺りは、良質の鎌倉石の産地としても、防御壁としても活用されたとみるべきであろう。

因みに、お猿畠のある谷戸の奥部には、やぐらのように深く彫り込んだ石切り場跡が遺されている。

鎌倉石は、鎌倉という街造りの際に開削された山裾辺りからの産出岩が用いられたとともに、良質の鎌倉石も探り出されたと考えられる。

衣張山の石切り場跡

久木の谷戸奥にある石切り場跡

久木の谷戸奥の石切り場跡

久木の谷戸奥にはお猿畠と呼ばれる開墾地がある。お猿畠に沿って切岸があるのだが、近世には石切り場として活用されていたようだ。この写真は、遊歩道が整備される以前。写真の左側に切岸が続いている。

 

 

 

 



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