朝比奈の切り通しの鎌倉側出口辺りには上総介広常の邸があった。
金沢から鎌倉に入るには、朝比奈の切り通しと、もう一筋、六浦からまっすぐに山中を経て広常邸辺りに至るコースがあった。
現在は藪化が進んでいて辿ることはかなわないだろう。
写真の左側の崖上が台地状に平らになっている。
何らかの施設があったのだ。
特に湧水が多いため、土地を石垣とコンクリートで一段高く仕立てているのだろう。
地質が脆弱であるため、鎌倉にある川の岸辺は、多くが切り立つように浸食されている。
朝比奈の切り通しも、数百年を経て自然の浸食と度重なる掘削工事で川底から見上げているような気分になる。
路面は湧水によって常に水が流れているから。
一昨年、大雨により鎌倉の各所で山の斜面が崩れた。
未だにハイキングコースの一部が不通のままだ。
朝比奈の切り通しもその一つで、開通していないということから、立ち寄ることは避けていた。
大雨以降、はじめて訪れてみた。
峠の左右崖面の迫っている辺りが大きく崩れたことを知った。
未だに崩れ落ちた土砂が崖下に溜まったままで、草木が茂りつつある。
他にも各所で崖面が露になっている。
人の手以外に、鎌倉の地形は、このようにして形成されたのであろうなと、改めて感じ入ってしまった。
写真は切り通しの鎌倉寄りの中ほど辺り。
鎌倉石ではなく、硬質の安山岩の石垣が遺されている辺り。
近代の石垣であろうが、江戸時代、あるいはそれ以前に何らかの建物があったのだろうと思う。