放浪日記

刮目せよ、我等が愚行を。

アムド高地旅(9)鳥葬、松の廊下

2020年02月21日 | 2018年アムドの旅
翌朝、「なんとなく頭痛いかも…」という嫁さんの一声で起きる。
富士山に登ったときはなんともなかったが、やはり多少の高山病の症状が出てきたのかもしれない。
こういうときは無理は禁物だが、動けなくなるほどでもないらしく、観光は行くと言う。

昨日は四川省のキルティ・ゴンパを見ているので、この町では、あと甘粛省にあるセルティ・ゴンパを見れば、特にいる理由もなくなる。
時間はまだ6時ごろだったので、午前中にさっさと観光をすませ、予定より1泊早く下界へ戻ろうではないかということに決まった。


朝、まだ誰もいない静かな町の片隅で、朝食の屋台を見つけた。

中国の朝食といえば、こんな感じ。
豆乳に油条(揚げパン)が嫁さんで、包子(肉まん)とゆでたまごが僕の分。
これまでに数えきれないくらいの朝を中国で迎え、同じ数だけ朝食を食べてきたが、この豆乳と揚げパンという組み合わせが、どうも好きになれないでいる。
本当においしいものを食べたら好きになるのだろうか…。



荷物を宿に置いたまま、セルティ・ゴンパへ。
まだ朝が早いこともあり、観光客はほとんどいない。
そして、チケットカウンターも開いていないので、チベタンと同様、無料での拝観となった。
メインの寺院の付近は絶賛工事中。

一部の情報によると、この寺には鳥葬を行う場所があるとのこと。
鳥葬を見たいとは思わないが、そういう場所があるのであればぜひ見てみたい。

寺院のまわりをコルラする感じで進んでいくと、



丘の上へと道は続いているが、鉄条網が張られている場所があった。
ただ、漢民族の観光客は平気で鉄条網をくぐり、奥へと進んで行く。
鳥葬台への道だろう。





道は丘の間を縫うようにさらに続く。
朝から高地でのハイキングはなかなかしんどいが、ここまできたらどうしても鳥葬台を見たくなってきた。
道の途中には、観光客相手に土産物を売るたくましきチベタン女性もちらほら。
こういう人がいるってことは、やはりここは観光ルートなのだろう。
じゃあ、鉄条網張るなよって言いたいが、もしかするとあの鉄条網は人間用ではなく、何かの獣を防ぐためなのかもしれない…。




しばらく進むと、タルチョがはためくスポットに出た。
そしてそのまわりには、大勢の人と車が十数台。
ここが鳥葬台に違いない。

近づいていくと、観光客の一団が鳥葬台から距離を置いていることがわかった。
観光客を対峙するように、ヤクザちっくな屈強なチベタンが数人立っている。

どうやら、この日、鳥葬台では本当に鳥葬をしているようだった…。

屈強な男たちは、漢民族に向かって中国語で近寄るな、写真を撮るな、と注意している。
人の隙間から遠巻きに鳥葬台を眺めていると、数人の僧侶が読経をしており、おびただしい数のハゲタカのような大型の鳥がそのまわりを囲んで羽を広げていた。

そして、時折、僧侶の背後から何かが投げられ、それをめがけるように鳥が集まり、いなないている。

読経。
鳥の声。
宙を舞う赤い肉片。
沈黙のまま見つめる僕。
そして読経。


時代を経ても、この地では変わらない光景が繰り広げられていた。
近くで見ることはかなわなかったが、こうして鳥葬という儀式に触れら……


●▲◎●×●×●▲×▲●!!
■×▲◎▲×●●×◎×▲!!


物思いにふけっていたら、いきなり目の前で罵声が。
観光客の監視をしていた屈強なチベタンAが、ものすごい勢いで漢民族のオッサンに飛びかかり、いきなり殴り始めた。
おいおいおい、一体どうなってるの!
オッサンの連れらしいオバハンは金切り声を発して、屈強チベタンAの腕にすがって止めようとするも、一瞬で振り払われて草原に投げ倒された。
まわりにいた屈強監視チベタンBが、とりあえず止めようとするも、バイオレンスは止まらない。
転びながらも逃げるオッサン、それを追いかけながら屈強チベタンAは腰に差していたナタのような刃物を抜いた!

殿中でござる、殿中でござるぞ!
すわ刃傷事件!
甘粛省の片隅で、まさかの松の廊下!!

オッサンは死に物狂いで逃げ、屈強チベタンAはBやCに羽交い締めにされて、なんとか追うことだけはやめたが、ものすごい勢いで罵詈雑言をオッサンへ浴びせている。

なにやったんだ、このオッサンは…。

それでも屈強チベタンAの怒りはおさまらず、そのほかの漢民族へと飛び火しかけた。
こんなところで吉良上野介になるわけにもいかず、ここは三十六計逃げるに如かずと、嫁さんをかばいながら、一目散に逃げ出した。






鳥葬を見に行ったのか、チベタンが漢民族を殴るのを見に行ったのかわからなくなるくらいのインパクトが頭に残っていたが、観光は続く。







昼に近づいてくるにつれ、寺は観光客で活気に満ちていた。





建物の片隅にあった、コルラの回数を数えるそろばん。
そりゃ、何回目か忘れるよね。





寺から戻り、ホテルをェックアウト。
少し早めの昼食として、青椒肉絲ぶっかけ飯をかきこんで、バスへと乗車。
いざ下界へ。






(つづく)



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