民事裁判の記録(国賠)・自衛隊車とバイクの交通事故の民事裁判

1・訟務検事の証拠資料のねつ造など不法な弁論。
2・玖珠署の違法な交通犯罪の捜査,虚偽の実況見分調書の作成

43:被控訴人準備書面(2)

2007-06-10 13:44:20 | 第3訴訟 第2審 被告国(訟務検事)
平成18年(ネ)第5934号 国家賠償請求控訴事件
控 訴 人  出 羽 や る か
被控訴人  国
                 準 備 書 面(2)

 東京高等裁判所第21民事部ロろ係 御中
                           平成19年6月19日
              被控訴人指定代理人  藤  原  典  子 藤印
                         熊  谷  勇  人 熊印
                         大  迫  輝  己 熊印
                         小  田     昇 熊印
                         梅  木  俊  洋 熊印
                -1-
 
  被控訴人は,本準備書面において,これまでの当事者双方の主張立証内容を踏
 まえ,主張を補充及び整理する。
 なお,略語等は,本準備書面において特に断らない限り,従前の例による。

第1 はじめに
   控訴人は,被控訴人が,別件訴訟における本件事故の証拠資料を隠ぺい・破
  棄して提出せず,証拠資料のねつ造・改ざんを行い,あるいは不法に作成され
  た証拠を弁論に使用した違法があると主張し,併せて本件事故の態様等につい
  て繰り返し主張する。
   これに対する被控訴人の事実上及び法律上の主張は,原審において述べたと
  おりであるが,以下,控訴理由書における控訴人の主張及び当審において明ら
  かになった事実を踏まえ,必要と認める範囲で反論する。
第2 被控訴人の主張
 1 本件訴訟に至る経緯について
  (1)平成11年10月7日午前10時55分ころ,大分県玖珠郡九重町所在の
   本件道路において,本件事故が発生し,控訴人が負傷した(当事者間に争い
   がない。)。
    同日午前11時5分ころ,本件大型トラックを運転していた小野寺は,1
   19番通報をし,同日午前11時33分ころ,救急車が本件事故の現場に到
   着し,控訴人はまず小国公立病院へ搬送され,その後,熊本赤十字病院へ搬
   送された(甲第85号証)。
    玖珠警察署交通課所属の堀部警部補及び間ノ瀬巡査部長は,本件事故発生
   の通報を受け,同日午後0時25分ころ,本件事故の現場に臨場し,同日午
   後0時34分から同日午後1時20分までの間,小野寺の立会いの下,本件
   事故の実況見分を実施し,タイヤ痕等必要な写真撮影を行った。堀部警部補
   は,同日,同見分結果を記載した現場メモを作成した(甲第42,第92号
-2-
   証,乙第4号証)。
    また,陸上自衛隊第8師団第42普通科連隊第4中隊陸曹長(当時)赤埴
   源蔵は,本件事故の現場写真を撮影した(甲第24, 第67号証)。
  (2) 控訴人は,本件事故直後から熊本赤十字病院に入院していたところ,玖珠
   警察署との間で,退院後同署に出頭し,実況見分に立ち会うことを合意して
   いた(甲第92号証,乙第4号証)。
    控訴人は,同月29日,玖珠警察署を訪れ,同月14日付け診断書(甲第
   6号証)を提出した。この時,控訴人は,応対した警察官から,本件事故の
   現場の本件大型トラックの走行車線に被控訴人運転の普通自動二輪車のタイ
   ヤ痕があり,本件事故の原因は,控訴人が道路中央線を越えたことにある旨
   伝えられたのに対し,自分が中央線を越えたのではない旨の意見を述べた。
   同警察官は,控訴人に対し,納得がいかないのであれば現場へ赴き,控訴人
   立会いの下実況見分を行う必要があるので,日を決めて来てほしい等と述べ
   たが,控訴人は,そのまま同署を辞した(甲第5号証)。
    控訴人は,その後,同署に連絡することなく,神奈川県所在の控訴人の自
   宅に帰宅した。同署は,控訴人を立会人とする実況見分を実施するため,控
   訴人に対し,郵便などで同署に出頭するよう要請したが,控訴人はこれに応
   じなかった(甲第92号証,乙第4号証)。
  (3) 他方,自衛隊及び小野寺は,玖珠警察署に対し,自衛隊車両に実質的な損
   害がないので,控訴人の処罰は望まない旨を申し立てた。そこで,同署は,
   平成12年2月10日,本件事故につき,後日紛議が生じた場合は捜査を再
   開し検察庁に対し送致することを前提に,一時保留処分とすることを決定し
   た(甲第92号証,乙第4号証)。
  (4) 控訴人は,平成13年7月23日,横浜地方裁判所に対し,本件大型トラ
   ックの運行供用者である国を被告として,別件訴訟を提起した(甲第1号
   証)。
                   -3-
(5)玖珠警察署は,同年8月ころ,控訴人が本件事故に関し別件訴訟を提起し
   た事実を知ったことから,本件事故に係る一時保留処分を解除し,控訴人に
   対し,同署への出頭を求めた。しかし,控訴人は,高齢及び経済的な問題を
   理由に,これに応じなかった。
    そのため,同署は,最終的に,堀部警部補が保管していた上記(1)の現場
   メモ及び当時撮影した現場の写真に基づき,同年9月27日付け実況見分調
   書(甲第42号証。以下「本件実況見分調書」という。)を作成した(以上
   につき,甲第92号証,乙第4号証)。
  (6) また,自衛隊は,別件訴訟の提起を受け,同月18日,本件事故の再現実
   況見分を実施し,事故現場見取図及び再現見分写真(略語の定義は原判決1
   7ページ参照)を作成したほか(甲第21,第23,第27号証),上記
   (1)のとおり本件事故当日撮影した本件事故の現場の写真により,同月11
   日付けで自衛隊現場写真(略語の定義は原判決17ページ参照)を作成した
   (甲第24,第67号証)。
(7) 別件訴訟における被告の指定代理人浅香らは,同年11月5日の口頭弁論
   期日において,上記事故現場見取図を添付した同日付け準備書面を陳述し,
   このころ,自衛隊現場写真及び再現見分写真を含む書証を横浜地方裁判所に
   提出した(甲第21,第24, 第27,第67号証)。
  (8)控訴人は,別件訴訟において,同年9月3日付けで,裁判所に対し,本件
   事故に係る実況見分調書等の送付嘱託を申し立て(甲第60号証),当該文
   書の所持者であった大分地方検察庁日田支部は,平成14年2月15日,本
   件実況見分調書を別件訴訟の裁判所に送付した(甲第62号証)。
  (9) 横浜地方裁判所は,平成14年8月30日,別件訴訟について原告の請求
   を棄却する判決をし,控訴人はこれを不服として東京高等裁判所に控訴した
   が,同裁判所は,平成15年2月4日,控訴を棄却する判決をした。控訴人
   は,これを不服として最高裁判所に上告するとともに上告受理の申立てをし
                  -4-
   たが,東京高等裁判所は,同年4月11日,上記上告受理申立てを却下する
   決定をした。控訴人は,これに対して許可抗告の申立てをしたが,同裁判所
   は,同年5月6日,不許可の決定をした。控訴人は,この決定に対し,特別
   抗告の申立てをしたが,最高裁判所は,同年9月12日,上記上告を棄却す
   る決定及び上記特別抗告を棄却する決定をし,別件訴訟は確定した(以上に
   つき,甲第8号証ないし第16号証)。
 2 本件実況見分調書(甲第42号証)の作成経緯について
   控訴人は,本件実況見分調書の正確性等について多々論難し,浅香らが別件
  訴訟において,本件事故直後に作成された実況見分調書を提出しなかった違法
  等を主張する。
   しかし,控訴人の主張は,すべて,本件事故において道路中央線を越えたの
  が本件大型トラックであることを前提にしたものであるところ,本件事故に関
  し国が控訴人に対し何らの損害賠償債務を負わないことは,別件訴訟及びその
  上級審の判決等を経て確定しており,控訴人の主張はその前提において失当で
  ある。
   また,本件実況見分調書の作成経緯については,被控訴人準備書面(1)におい
  て詳述し,上記1においてその要点を示したとおりであり,本件事故について
  警察の作成した実況見分調書は本件実況見分調書のみである。そして,同調書
  が,本件事故の実況見分が実施されてから,2年以上経過して作成されている
  理由は,控訴人が,玖珠警察署からの実況見分の立会いのための出頭要請に応
  じなかったことが主たる原因である。上記1で指摘したとおり,控訴人は,本
  件事故後1か月を経過しない時点で,少なくとも玖珠警察署が本件事故の原因
  が控訴人が普通自動二輪車を運転して道路中央線を越えて本件大型トラックの
  走行車線に進入したことにあると認識していることを知り,本件事故の現場に
  は本件事故の際に印象されたタイヤ痕が存在しているとも聞かされ,その後も,
  同署の担当者から,再三,本件事故の現場の実況見分に立ち会うよう求められ
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  ていたのであるから,控訴人において本件事故の現場に赴き,自ら現場のタイ
  ヤ痕の有無等を確認し,自らの認識している本件事故の態様について指示説明
  する機会は十分にあったのである。
   それにもかかわらず,控訴人は自らその機会を放棄したのであって,このよ
  うな控訴人の態度は,その主張全般の信用性に大きく影響するというべきであ
  る。
   なお,本件実況見分調書は,本件事故当日,実況見分の補助者であった堀部
  警部補が,事故当日作成し保管していた現場メモに基づき,適正に作成された
  ものであることは,被控訴人準備書面(1)において,既に指摘したとおりである。
 3 現場写真のねつ造・改ざんについて
  控訴人は,種々の事情を挙げて,警察及び自衛隊が事故当日に撮影した写真
  が,本件事故当日に撮影されたものではなく,ねつ造・改ざんされたものであ
  る旨主張する(控訴理由書43ないし53ページ)。
   しかしながら,控訴人が指摘する写真で,個別に反論が必要と思われる点に
  ついては,原審において認否,反論しているとおりである(原審被告準備書面
  (1)7,8ページ,同準備書面(2)3ページ,同準備書面(3),同準備書面(4)2ない
  し5ページ)。また,控訴人が挙げる事情は,結局,控訴審において新たに主
  張する部分も含め,写真画面上の単なるコントラストの問題や,自衛官の位置
  等について,控訴人の憶測から不自然であると論難しているだけのものであり,
  この点は,原判決において正当に判示されているとおりである(原判決22ペ
  ージ以下)。
   ちなみに,控訴人の主張を控訴人が提出した書証にも忠実にあてはめるなら
  ば,控訴人が撮影した甲第66号証①及び②の写真の右上白色部分,同③ない
  し⑨の写真の樹木の黒色部分などは,「明らかに不自然」といわざるをえない
  ものであり,そうすると,控訴人はこれらの写真をねつ造・改ざんしたことに
  なる。しかし,これらの写真の上記白色部分,黒色部分等についても,撮影時
                 -6-
  の光の具合,あるいは写真をカラーコピーした際のコントラストの問題であっ
  て,ねつ造・改ざんとはいわないのが通常であり,控訴人が自衛隊現場写真及
  び再現見分写真についてねつ造・改ざんであると主張する事情も,これと同じ
  レベルのものにすぎない。
   なお,現場写真の撮影経緯については,上記1で指摘したとおりであり,何
  らの不自然な点も存在せず,そもそも,自衛隊あるいは警察が作成する写真に
  ついて浅香らがその作成に関与できる立場でないことは,原審でも繰り返し主
  張したとおりである。
 4 自衛隊車の制動痕の隠ぺい・破棄について
   また,控訴人は,被控訴人は,本件事故による自衛隊車の制動痕の存在を一
  切認めず,印象されていた自衛隊車の制動痕を隠ぺい・破棄した旨主張する
   (控訴理由書3ページ,58ないし60ページ)。
   しかし,控訴人の主張は,結局,控訴人が存在すると主張するものが訴訟の
  場に現れないときはすべて浅香らが隠ぺいないし破棄したと主張しているにす
  ぎないのであって,何らの根拠もない。
   なお,本件大型トラックを運転していた小野寺は,衝突音がしてからプレー
  キをかけたと証言している(甲第22号証21ページ)。また,本件事故現場
  には,同トラックの制動痕が存在していなかったことは,玖珠警察署が作成し
  た本件実況見分調書(甲第42号証)からも明らかである。付言すれば,控訴
  人が客観的根拠であるとする制動距離及び制動時間のデータ(甲第83号証)
  は,同トラックにとって上り坂でありヘアピンカーブである本件事故の現場に
  そのまま該当するものでないことは当然であり,小野寺急ブレーキをかけた
  という控訴人の憶測を裏付けるものとはなり得ない。
 5 自衛隊作成の実況見分調書について
   控訴人は,当審においても,被控訴人の指定代理人は,自衛隊が本件事故直
  後に作成した実況見分調書を隠ぺいした旨主張する(控訴理由書39ないし4
                  -7-
  3ページ)。これに対しては,被控訴人は,既に原審被告準備書面(1)7ページ
  において反論し,原判決も,控訴人の主張に理由がない旨正当に判示している
  とおりである(原判決21ページ以下)。
   付言するに,控訴人は,本件事故発生10分後である午前11時5分ころか
  ら,玖珠警察署の早水巡査長らが現場に到着するまでの間,複数の警務隊員及
  び近松3佐が現場にいたことを根拠に,本件事故の現場の保存,捜査,実況見
  分及び現場写真撮影がされた旨主張する。しかしながら,上記1のとおり,自
  衛隊は,本件事故当日,現場写真を撮影したが,そのことと実況見分を実施す
  ることは全く別である。現に,本件事故の捜査は,「自衛隊と警察との犯罪捜
  査に関する協定」(乙第1号証の1)及び「自衛隊と警察との犯罪捜査に関す
  る協定の運用に関する了解事項」(乙第1号証の2)に基づき,警察官が行う
  ことになり,実際に,玖珠警察署の早水巡査長らによって,実況見分が行われ
  ているものである(甲第42号証)。
   以上のとおり,自衛隊が本件事故の実況見分を行った事実はない。
 6 本件事故の態様に係る控訴人の主張について
   その余の控訴人の主張については,既に確定している別件訴訟の判決を不服
  とする控訴人が,本件事故の態様について述べているにすぎないのであって,
  本件訴訟における審理は不要である。
   なお,控訴人は,原審における被控訴人の主張に対し,「「控訴人の主張の
  趣旨が,本件事故の態様に関して,控訴人に過失がないという意味で主張を利
  用するのであれば,別件訴訟の蒸返しともいうべきものであり,本件事故の態
  様に関する審理は不要である。」と主張して単純否認を繰り返し,控訴人の主
  張に対しなんら抗弁・反論をしなかった。」旨主張する(控訴理由書2ページ,
  69ページ)。
   しかし,本件訴訟の争点は,浅香らによる不法行為の有無であり,本件事故
  における控訴人の過失の有無ではない。それにもかかわらず,控訴人が,本件
                  -8-
  事故の態様について控訴人に過失がなかったという意味で主張を繰り返してい
  るのではないかと思われるため,被控訴人も,必然的に,本件事故における控
  訴人の過失については別件訴訟で既に判断されており,本件訴訟の争点でもな
  いため,本件訴訟において本件事故の態様に関する審理は不要である旨繰り返
  さざるを得ないのであって,控訴人の非難は失当である。
第3 結語
   以上のとおり,控訴人の主張はいずれも理由がないことは明らかであるから
  本件控訴は速やかに棄却されるべきである。
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