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世界金融システム」の破綻から、我々は何を教訓とすべきか?

2008年12月05日 13時16分59秒 | 政治・社会
● 世界金融システム」の破綻から、我々は何を教訓とすべきか?

今回の「世界金融システム」の破綻は、2002年から2006年の間に日米同時に実施された「超金融緩和政策」による米国住宅バブルの発生が発端といえます。

◆ 経済学者植草一秀氏の指摘

経済学者の植草一秀氏は、2008年12月1日付け個人ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」の「麻生内閣支持率急落と高まる金融恐慌リスク」で、鋭い指摘をされています。 

「米国が2002年から2006年にかけて「超金融緩和政策」を実施した。欧州通貨などの主要通貨は米ドルに対して大幅に上昇した。日本円も自然体の政策運営を維持したなら、米ドルに対して上昇し、欧州通貨などに対して暴落しなかったはずだ。

ところが日本はゼロ金利政策、量的金融緩和政策などの超金融緩和政策を実行して、長期間維持した。同時に、50兆円もの規模で、下落する米ドルを買い支えるドル買い為替介入を実行した。これらの政策を最も積極的に推進したのは竹中平蔵氏だった。

米国が単独で超金融緩和政策を実行すれば、ドルが独歩安を示すことになる。米国は超金融緩和政策を中止せざるを得なかったはずだ。日本がドルを買い支え、超金融緩和政策を実行したから、米国は超金融緩和政策を維持することになった。

2002年から2006年の米国の超金融緩和政策が、米国の不動産価格バブルを発生させる主因になった。日本が理に適(かな)わない超金融緩和政策、巨額のドル買い介入政策を実行したことが、米国の不動産価格バブルを生み出す根源的な原因になったと言える」。

◆「日米同時の超金融緩和政策」で起こったこと

2002年から2006年の間に実施された「日米同時の超金融緩和政策」は、日米で次のような事態を引き起こしたのです。

1) 米国では低所者向けの「サブプライム住宅ローン」が急速に拡大し、住宅バブルが発生。米国の投資銀行は「サブプライム住宅ローン」を証券化して、他の債券と一緒にした金融派生商品を開発し世界中に販売、莫大な利益を獲得した。

2007年春頃から住宅価格の下落が顕著となり、「サブプライム住宅ローン」の不良債権化が激増。2007年夏から住宅バブルの崩壊が開始。

2) 「サブプライム住宅ローン」の破綻をきっかけに、大量のデリバテイブ金融証券を世界中に販売した「リーマンブラザーズ」が2008年9月15日に倒産。AIG保険会社や欧米投資銀行、商業銀行の経営破たんが同時連鎖的に拡大。

各国政府と中央銀行が不良債権買取と資本投入などの金融機関の救済策を実施。GM、フォード、クライスラーが倒産の危機。実体経済に波及。

3) 米国が単独で超金融緩和政策を実施していたなら、ドルが独歩安となり米国は「超金融緩和政策」を中止せざるを得なかった。しかし、同時期に日本がゼロ金利と量的金融緩和の「超金融緩和政策」を実施したため、ドル暴落が食い止められ米国の「超金融緩和政策」は継続された。

4) 日本では2001年から2005年の間、小泉政権下で財務省、日銀一体となってゼロ金利と量的金融緩和の「超金融緩和政策」が実施された。円安の恩恵を受けたのは、トヨタやキャノンなどの輸出産業であり、低金利の恩恵を受けたのは、大手企業と消費者金融と外資系金融機関でしかなかった。

日本経済を底辺で支える中小企業・零細企業・個人企業は銀行の「貸し渋り」に遭い、低金利の恩恵は全く受けることが出来なかった。

低金利の「円」を借りる事の出来る外資系金融機関は、高金利の外貨や債券、不動産、証券、原油、農産物、鉱物資源などに投資する、いわゆる「円のキャリートレード」を大規模に実施、莫大な利益を上げた。

5)大規模な「円のキャリートレード」は、原油や農産物、鉄鉱石などの天然資源の価格暴騰を引き起こし、ガソリン、食料品、飼料、生活用品全般にわたり消費者物価を暴騰させ、発展途上国では食糧暴動や飢饉が発生。

6)日本ではその間、50兆円の規模でドルを買い支えた結果、ドルは暴落を回避。円とドルが他の主要通貨に対し、独歩安となった。「超金融緩和政策」と「ドルの買い支え」を最も積極的に推進したのは、小泉純一郎首相(当時)と竹中平蔵氏だった。

7) 現在の急速な円高は長期円安トレンドの修正を一気に表面化したものだ。長期にわたって緩やかに円高が進行するなら、輸出産業は緩やかに対応できるが、長期間円安が続いた後、急激な円安修正が表面化すると、円高差損で莫大な損失を蒙ることになる。

◆なぜ問われない真の責任者の責任

今回の「世界金融システム」の破綻の真の責任者をあえて言えば、新自由主義を信奉する米国のブッシュ大統領であり、「小泉構造改革」を推進した日本の小泉純一郎元首相であり、「小泉構造改革」の司令塔であった竹中平蔵氏である、と私は思います。世界中の人々の生活と生命と財産を、これほどまでに劣化させ、不幸をもたらした彼らの責任は、なぜ問われないのでしょうか?

ブッシュ大統領は、来年1月にオバマ大統領に政権を譲って政界を引退します。彼は、アフガニスタンとイラクへの2つの侵略戦争を「テロとの闘い」の名で開始し、「市場原理主義」を実行して世界恐慌の引き金を引いたまま、途中退場します。

小泉純一郎元首相は、横須賀の選挙地盤を次男に譲って政界引退を表明しました。彼は「小泉構造改革」の名で「新自由主義」を日本に導入し、5年半の間に日本社会を米国に次ぐ世界第2位の「大格差社会」にしたまま、引退します。

竹中平蔵氏は突然、参議院議員を辞職し、古巣の慶応大学経済学部教授に戻りました。今でも「小泉構造改革」の正当性を主張しています。彼は50兆円の規模でドルを買い支えたほかに、「小泉構造改革」の司令塔として「日米構造協議」で米国から要望された「規制緩和」や「民営化」の多くを実現する上で、大きな役割を果たしました。

◆我々は何を教訓として学ぶのか?

今回の「世界金融システム」の破綻は、いままで我々が経験したことのない程の広がりと、破綻した金融商品の本当の損失額が依然として分からないという不気味さを持っています。2度とこのような事態を引き起こさない為にも、我々は何を教訓として学ぶべきでしょうか?

 それは、1970年代から始まり、世界中を席巻した「新自由主義」は結局のところ、大多数の人々を不幸にしたこと、人間が物やサービスを自ら生産して販売し、消費する「実体経済」こそが本当の価値と幸福を生み出すものであること、「お金が自分で価値を生みだす」という金融商品中心の「博打経済」は幻想でしかなく、いつかは必ず破綻するものであること、です。


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