延岡というまちをアーカイブ化していくには。

延岡というまちについての記憶を考えていく。

新居浜へ、行ってみた。

2010-08-31 17:36:06 | まちづくり

twitterで知り合った尚草紙さんからのお誘いで、かつて住友の別子鉱山で繁栄した愛媛県新居浜市へ行った。

2010082820100828dsc_0701 尚草紙さんは鉱山に関わる対象を歴史遺産として保存・活用し、まちづくりを実践的に展開していこうという活動を社会事業として繰り広げ、新居浜で産業遺産の保存・活用を行っている市民団体"えんとつ山倶楽部"と一緒に"別子往還道を育てる会"として活動しておられる。

ある場所の記憶を継承していく事は、継承される対象の意味を理解する事である。そして継承される対象とは、ある場所、さらには人間世界全体において必要な社会の維持や技術の開発といったさまざまな知が詰め込まれた具体的・抽象的な人工物であったり、コスモロジーが反映された自然世界に属する空間であったりする。

過去の記憶を高齢者から引き出して現在のまちづくりに生かす、特に新居浜の場合には産業遺産の活用を手段として、幅広いまちづくりへの適応が可能であるというアドバンテージを構築しやすい環境にあると感じた。それは活用するにみあった優れた価値を有する歴史遺産が存在するというだけではなく、地域社会(これは地区を越えるフォローとして成長していくだろう)における取り組みと意識が高いという事がはっきりしているからだ。

2010082820100828dsc_0758 まず住民に対して遺産が地域社会において極めて重要な存在であるという認識を浸透させなければならないという目標を、地域社会自らが意識として有し、行動しているという点がある。えんとつ山倶楽部はその典型だし、それをバックアップしている行政の体制も、教育委員会傘下の文化財保護だけではなく、市長部局において歴史遺産担当部局を設置している点はおおいに評価出来よう。

次の段階において、歴史遺産から引き出されるさまざまな価値や情報を、具体的にまちづくりの中へ反映させていくという行動が特に積極的に確認出来る点だ。尚草紙さんの役割は、この中で市民と行政との間に立ちながら、さまざまな手法でもってアイデアを提案し、関与していくというものだ。こうした活動はまちづくりを事業として確立させる上でも、重要なモデルの一つとしてなり得るのではないだろうか。

#この辺り、同じく地域にある歴史遺産を活用している次の二つの地域、行政が市民活動を引っ張っていっている日南市、地元の若手経営者達が行政や地域社会に積極的に働きかけている北九州市と比較すると興味深いかもしれない。

2010073016002470c 市民と行政、さらにその間に立つ尚草紙さんらが行っている"別子往還道プロジェクト・記憶の継承地域の絆"事業は、鉱山開発華やかなりし頃に活躍し、そこに生活していた人々の記憶をこれからも遺し、活用していこうというプロジェクトだ。

そしてこの中で、僕らがやっている回想法的手法を活用し、対象となる方々から地域の過去に関わる情報を収集するとともに、回想法の持っている効果を引き出して高齢者のQOLをはかり、まちづくりにつなげていくという事を試みている。

歴史遺産が地域社会のシンボリックな存在として認知されているという意味では、延岡と比較するとそれをまちづくりにおける最も重要な素材として活用していくのに秀でているが、しかし、もちろんまだまだ先は長いのだろう。

例えば新居浜駅前の再開発状況をみると、実に"もったいないなあ"と思える程地域のコンテクストが考慮されていない。背負ってきた歴史の重層性こそが、これからもこの街を構築し、永らえていくためのアイデンティティーなのだとして、広く・深い理解と、それを継承していく意義を考えてもらわなければならないのだろう。


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2 コメント

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先日は、大変お世話になりました。 (尚草紙)
2010-09-01 07:51:12
先日は、大変お世話になりました。
歴史を都市計画に生かす。これはプランニングに地域個性である歴史的変遷を生活する場、学ぶ場、経済に意義あるものとして継承すること。これが、存外できていなかった。これも時の情勢により変化を遂げてきた、地方都市の共通課題であると思います。
最後のセンテンスはまさに課題点です。

今回は、大変学びが多かったです。ブログでも気づきがありました。感謝です。

日南市と北九州は現地に行き、その活動を確認しなければと思いました。
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>> 尚草紙 さま (yamatosh)
2010-09-03 13:12:03
>> 尚草紙 さま

こちらこそ、色々とお世話になりました。

地域振興にかかわる諸政策をみても、地域それぞれの特性に的確に当てはめて活用していくというのは、行政自身には難しいなあと考えておりました。平等性という観点から考えても限界なんだろうと...。

結局このままでは地域それぞれの特性・個性が、削平されて均一化されたものしか出来上がらない、かと行って、きめ細かな対応が出来るはずのNPOの在り方をみても、現状では単なる"下請け"的な扱い方に留まらせてしまっている(或いは運営の難しさからそうならざるを得ない)状況ケースが多かったりする。袋小路だな、と、以前はそう思っておりました。

ここ最近、ソーシャルビジネスという考え方を知って、現行の文化財保護行政の行き詰まりを別次元で飛び越えられる何かが、文化資源の分野にも現れてこないだろうかと考えていた所でした。

そういう意味で尚草紙さんの存在に注目しております。

あと、日南市と北九州市の件ですが、どちらも関わりがあって必要でしたらご紹介します。特に日南市を引っ張っている行政の方々はよく存じ上げており、僕自身、そこから多くを学んでおります。
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