延岡というまちをアーカイブ化していくには。

延岡というまちについての記憶を考えていく。

アカウミガメが来るトコロというタイトルの展示を行う予定。

2013-06-17 02:15:00 | まちづくり
実は宮崎県というのは、屋久島を有する鹿児島県についで2番目にアカウミガメの産卵が多い県で、その範囲は延岡市から串間市まで、日向灘沿岸に及んでいます。

工都として繁栄した延岡の街に、どうしてこの自然界の代表みたいなアカウミガメが、現在も毎年多数やってくるのか?
このアカウミガメの産卵を通してみた延岡という場所について考えてみようという事で、今年度の博物館実習の企画展示を行います。

題して『アカウミガメが来るトコロ』。期間は7/10~20、場所は延岡市民協働まちづくりセンター1Fです。詳細は追ってアナウンスします。


ミュージアムが街へ出て行く仕組みをつくる、学生達の試み。

2013-06-09 19:49:40 | まちづくり
平成25年6月2・3日、東京家政学院大学で開催された第18回日本ミュージアムマネージメント学会大会で発表した「ミュージアムが街へ出て行く仕組みをつくる、学生達の試み」の発表要旨です。スライドはこちらにあります。


1.街の課題にミュージアムがどう関与するか?

日本各地で直面している社会共通の課題に対応する事を目的として、ミュージアムが関与していくべき役割とは何かを考究している。特に少子高齢化や人口減少、商業集積の衰退、集落の限界化、防・減災といった問題は地方において共通した課題であるばかりではなく、首都圏のような大規模人口を抱えた地域でも生じている。

こうした観点から、昨年の発表では地域コミュニティ再生の場としての役割を期待されているミュージアムについて、特にその機能を商店街空き店舗を活用した高齢者の介護予防や、伝統の継承を目的とした若年層と高齢者とのコミュニケーション活動に活用した実践を紹介し、さらに「駅+コミュニティ空間」といった市民活動空間としての公共空間のあり方において、今後の地域社会におけるミュージアムの役割を評価した。

この視点において、大学生を企画の中心に据えて実践した2つの活動を取り上げる。まちづくりにおいて学生が活動に関与する場合、まちづくりそのものへの効果よりも学生の社会に対する経験則の向上、「自分にとってよい経験になる」といった利己性・自己啓発性が中心になる事は免れない。これは一人の学生が学生身分で社会に関与出来るのが短期間に過ぎない点が大きく、なんといっても学生にとっては大学での学習活動が本分であり、継続的なまちづくり活動に関わるのが難しい点に他ならない。

一方で教員とは異なった「アンテナの張り方」、すなわち学生ならではの情報収集やアプローチが可能となる事も実際に多い。そうした点を活かしていくために、毎年のように入れ替わる学生に対して、上級・卒業生達が蓄積してきた経験や問題解決の手法、対象への取り組み方そして課題の継承が極めて重要になってくる。




2.街の課題を継承しつつ、企画力によって解決しようとする取り組み

ミュージアムの機能を通じて、地域コミュニティの課題を解決していくという考え方を学生にテーマとして与え、実践した。
一方は学生有志(5人)が個々人単独で企画を立案し実現していく活動、もう一方は博物館実習(学内実習)を通じた企画展示活動によって学生間での合意形成を行いながら、一つの企画を推進していく活動である。そして双方とも事後の評価を行う事で、課題を次の学年に継続させていくというサイクルの構築を目指している。今回はこの2つの活動、特に前者を中心に述べてみる。

宮崎県延岡市の駅を中心とした中心市街地商店街の3箇所の空き店舗を会場として活用した学生によるプログラム、『駅まちミュージアム2012』を平成24年12月8日~15日の間実施した。実施した5つのプログラムは1)~5)の通りだが、もちろんこれらは企画した学生がそれぞれミュージアムを通じた課題解決というテーマを彼らなりに解釈・消化していったものでもある。

1)市街地のスプロール現象によって住宅地の郊外化が進行し、中心市街地への関与が希薄になってしまった若年層の回帰を目指し、学校とは異なったまちなかの空間で高校生と地域コミュニティの大人が本音で語り合うディスカッションの場の形成

2)フリーの楽曲にあわせて故郷をテーマとした歌詞をグループで制作し、特に大学生に地域社会を見つめ直す視点を付与する活動

3)自らが観察・撮影している地域ネコ(ノラネコ)の写真展を実施し、地域ネコの問題をコミュニティで考えていこうとする活動

4)地元博物館が所蔵する資料を活用し戦争体験をテーマとした、回想法的手法を応用した高齢者の介護予防向けのプログラム

5)商店街等を舞台としたコマ撮りアニメ・自由課題のクレイアニメの制作を通じて、中心市街地の魅力を再発見する活動

これらのプログラムでは計画者である学生個々人が中心市街地に参与観察を行った事で認識していった様々な「まちの問題」と、それを彼らなりに解決していこうとする姿が明確であった。

活動の実施後にこれまでまちづくり活動を実践してきた上級生による評価、そして企画を実施した5人の学生相互による活動評価を行った。上級生の評価には、以前の経験を踏まえながら今回活動した後輩である学生達を客観的に評価出来るという利点があった。また学生相互の評価はそれぞれ企画した学生に対して、スタッフとして活動した他の学生が自らの企画評価とを比較するという視点を狙ったものであった。

上記はゼミ活動を主体として学生有志によって実施されたものであるが、もう一つの取り組みは平成24年度の博物館実習(学内実習)において行った企画で、終戦後から昭和の終わりまで企業城下町である地元に存在した動物園の記憶をテーマとしたものであった(企画展『動物園があった時代(ころ)』、平成24年7月11日~20日開催)。市街地にある施設のギャラリーを活用して開催した企画を通じて、実習生達は地域コミュニティに共通する記憶が、世代を越えて高い関心を呼び、コミュニケーションを活性化させる事を理解していった。
 
 

3.まとめと今後の視点

ミュージアムとまちづくりをつなぐ活動である学生達の試みを通じて、確認出来た事を挙げておきたい。
1)博物館の機能が学生達によって再解釈された事。主にコミュニケーションという考え方に象徴されるもので、場合によっては従来のミュージアムの枠組みに入らない企画も存在するのかもしれないが、まちづくりにおけるミュージアムの役割をあらためて確認出来た。
2)街の課題をミュージアムを通じて継承していく事。先輩-後輩という伝統的な関係を通じた技術や認識の継承・評価は、短い期間でしかない中心市街地への学生の関与を継続させる事を可能とする点を再確認した。

今後の課題として、中心市街地における個々の活動が実際に地域コミュニティにとって一定の効果があるかどうかを評価していく必要性がある。特に利用者のQOLに関わる客観的な効果測定方法を援用して確認していきたい。





つながるしくみをテーマにしたシンポジウム。

2013-06-03 12:50:47 | インポート
この文章は、平成25年6月1日、東京家政学院大学で開催された『第18回 日本ミュージアム・マネージメント学会』で開催されたシンポジウム内容をざっとまとめたものです。メモそのものなので抜け落ちもありますが、ご容赦下さい。

なおディスカッションの前に、慶応大学の小木哲朗先生の基調講演「デジタル時代の社会とつながる博物館の仕組み」がありました。

こちらの内容については、@yaskohi さんにまとめを作って頂きましたので、そちらをご覧下さい。

twitterハッシュタグは#jmma2013です。

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『シンポジウム(指定討論)』

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「SNS時代における博物館の可能性」
佐久間大輔氏(大阪市自然史博物館)

SNS時代といいながらも、パソ通時代から続いている。大阪自然史博物館としては1997年からweb、ML配信。ネットだからといって特別な事はやっていない。本博物館は友の会活動が盛んな事で知られている。

SNSの特徴としては、あるいはパソ通でもそうだがコミュニティはつくる事は出来る。しかしながら、実際博物館でやっても過疎化してしまう事が多い。コミュニティの性質にもよるが、割とtwitterやfacebookは一対一の文体で書かれる事が多く、パーソナリティが出てきやすい。

博物館にはモノと来館者の間には学芸員がいる。SNSサイトでユルキャラを使っておもしろいねとやってみても、博物館が面白いかどうかは別。博物館にいる人間としては博物館を面白くしたい。
SNS、学芸員という表現者の新たな媒体であり、プロセスの可視化による普及教育、学術情報の発信。そもそもネットにない学術情報は他分野から引用されない。顔をみられる学芸員。「知的生産性の技術」の現代版がtw。学芸員を表に出していきましょうという話。

#佐久間氏のスライドについては、http://www.slideshare.net/sakumad/jmma です。

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「科学技術館におけるこれからのつながるミュージアムを目指して」
中野良一氏(科学技術館)

サラリーマンとしてSAをやっていた。twitterやfacebookといったメディアにこだわらないで博物館で何ができるか?

科学技術館における活動
ユニバース:研究者による科学ライブショーの開催
IBM Try science:IBMボランティアスタッフによる実験教育
サイエンス友の会:友の会メンバーを対象とした各種教室の開催。単発・シリーズも。
ディレクトフォース:ディレクトフォース社員による各種教室の開催。館外へも。

類型/ねらい
単発型(イベント・一話完結の教室の類)
→興味・関心の喚起、一定の理解

継続型(シリーズ性のある連続した教室)
→より深い理解、動機付け

ネットワーク型
(活動の拠点が増殖していくイベント、教室の類)
→事業の拡大、より多くの方に参加してもらう


マネージメントの視点
来館者数は毎年60万人で推移していたのだが、昨年は56万人と減り、危機感を持っている。
・科学や技術でどれだけ理解してもらえたか?
・学校の授業と関連付けられたか?
・才能のある子供をさらに引き上げられたか?
・ミッションの明確化
・運営スタッフの育成
・IT技術の進歩についていけるか?

目指すべきつながり

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「多様化する「個」の認知・誘客のストラテジー」
白原由起子氏(根津美術館)


根津美術館のある南青山は住人が大使館員や企業経営者等が1割。展示が年7回あって、これらの告知に関する労力が月1ある。

ストラテジー→中高年が多い所をどうやって若い人々を取り入れるかを考えていてインターネットによる情報化を考えていたが、実はそれだけでなく、「サライ」世代にはインターネットを媒介としている人が多く、チラシ等紙媒体で情報収集しているのは3割程度である事がわかった。

webの刷新。わかりやすく、魅力的に伝え、それを認知や誘客につなげられるか。
メディアミックスの方法。どのメディアとどのメディアをクロスさせるか等。


NEZUNET→ML3,500人の会員。
根津倶楽部→紙ベースの有料会員制。ショップもカフェも入館料が必要。会員になれば「あなたの庭園」が手に入るという考え方。

スマホアプリの配信。
・文化庁の文化遺産オンライン。→文化庁から入力人件費を頂いてデータ化
・森美術館の"CountArt"

誰をサテライトにするか。その人を使ってSNSで拡散、訴求力を求めるか。

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「webでみる博物館の可能性と利用の構造」
本間浩一氏(慶應義塾大学大学院附属システムデザイン・マネジメント研究所)


webの普及によって旅行業が変化した。博物館の変化は、まだそれほど決定的な変化はおこっていない。
ミュージアム・博物館・美術館の3つそれぞれのキーワードのピークの特徴。→美術館博物館は5月8月に検索数に多い。ミュージアムはかわっていない。年々ミュージアムでの検索が増えている。


キュレーションサービス→NAVERまとめなどに注目
「連休に行くべき博物館」が23万view

#語句そのものはみあたりませんが、近いものがいくつかありました。
「G・Wは都内でゆっくりと美術館巡りをしてみたい」
「【GW】東京近郊で行くべきイベント【ゴールデンウィーク】」

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「知の循環型社会における対話型博物館機能の提案」
小川義和(国立科学博物館)


個人と学芸員のコミュニケーションサイトをつくってDBを介していく。
サイエンスコミュニケーション→専門家・非専門家という構図から何か課題があってそれの解決につなげるという方向性へ

学術的価値(組織的価値)
個人的価値(本質的価値)
社会的価値(手段的価値)

この3つの価値をつなげるにはどうしたらいいか。

ミュージアムの役割
市民ボランティア-(ML)-ミュージアム-(価値創造)-社会の課題
個人的価値      学術的価値   社会的価値


#すみません。小川さんの話はあまりメモしておりませんでした。
どなたか補足をお願いします。

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討論

尾木:ゲーミフィケーションという概念の存在。

佐久間:博物館の講演会で30人しか集まらないとかがよくある。それだけ労力を使って意味があるのかと思う。それをシェアしていく事によってより広く、よいコンテンツだったら消費されていく。社会の中に博物館が持っているオリジナルのコンテンツを伝えていける。情報のツールを持っている事。コンテンツの良さがマッチしていればテクノロジーに負けない。

中村:科学技術館のコンテンツ。一つは展示物、一つは活動。我々がいいと思っている事が外からみたら伝わっていない。

白原:webアプリを立ち上げた際に業者が色々な事をやろうとした。最終的に学芸がしっかりとした吟味をする事で2つに落ち着いた。

司会(高安礼士氏):googleだとスミソニアン等のフローマットがみられる。日本はない。海外ではつながる仕組み、webプログラムはどうしているか。

小川:ヨーロッパで、多言語を結びつける。アメリカ、アスペックというポータル。エグジットファイル、学芸員が展示でどう苦労したのかとか。

司会:科学コミュニケーションの文脈で、リスクコミュニケーションとははっきりとわけておかないといけない。

佐久間:テクノロジをおさえた上で、知識の伝達を。そうする事で博物案は次の行きたい所リストにのるのでは。