最近銃撃話が多いようだ。今度は宮古島市伊良部島長山港で、停泊中の巡視船PSー31「しもじ」が2022年7月19日11時10分頃、機関砲JM61-RFS20ミリ機関砲から誤射。8発を射撃してしまったようだ。同胞は船首側に設置されているが、北(島の内陸)側に飛んだ(岸壁は概ね東西方向)ということは、銃身を約90度回転させていたのだ。幸い人的被害は出ていない。
「点検中の誤射」と海上保安庁第11管区宮古島保安本部は言っており、「調査中」としている。1972年に平良海上保安署(宮古島)ができ、2016年10月1日、宮古島海上保安本部に昇格、同船は11月30日に配属された。長山港は、2017年3月海上保安庁の基地として整備された。
従来の長山港は、主に下地島空港のための航空燃料補給拠点だった(長山港から下地島空港を結ぶ油送管が埋設されている)。場所は伊良部島の東端の伊良部大橋(宮古島と伊良部島を結ぶ約4000mの橋)から西へ約2kmの位置。周囲は農地が多いが県道がごく近くを走っており、また近年、周辺にもリゾート施設も増えてきている。
この長山港は、日本政府が尖閣問題で中国との緊張が増加してきた中で、海上保安庁第11管区は、石垣島、宮古島に海保の拠点を強化してきた。PL(大型巡視船)を石垣島に集中配置し、漁船などによる密漁取り締まりにここ長山港をベースとしてきた。宮古島海上保安本部にPM-35「はりみず」、PS-31「しもじ」、ほか同型艦が計9隻、PCー113「なつづき」が配備されている。
PS-31は総トン数206トン、全長43.5m、最大幅7.8m。外国漁船を規制する目的で、強行接舷するために両舷の強度を強化している。また船首側にJM61-RFS20ミリ機関砲を1門搭載している。これはM61バルカン砲の改良型であり、航空自衛隊のF-15戦闘機などにもJM61が搭載されている。このJM61-RFSは射手が銃撃するものではなく、RFS(目標追尾型遠隔操縦機能)により、ターゲットを狙うものだ。弾は20ミリ、長さ102ミリ。6本の銃身が回転しながら発射する。毎分約4000発、6000発の発射能力がある。
こんなものが接岸中になぜ誤射されたのだろうか? 通常は実弾を外してテストするらしいが、大ボケと言わざるを得ない。当然海保は発射テストマニュアルや発射マニュアルを有しているはずだ。基本の基が守られていなかったのだろう。コンピュータの誤作動があったのかもしれないが、ここ(長山港)で機関砲を動かしてもよいという気の緩みがあったのではないか。
私自身、石垣島や宮古島などで巡視船をよく見ているが、この2年ほど、銃身にかけられていたカバーが外されていることが増えてきたことに気づいている。緊急即応体制の強化なのかもしれないが、それだけ平時と有事が接近していると考え、逆に安全に対して気の緩みがあったのではないかと疑ってしまう。いずれにしても無用なところでの発射は、御免被りたい。海保は、明確な調査を行い、真相を公表し、安全対策を改めることを要求したい。