聖テオドロス (759-826)ストゥディオンの修道院長
説教
十字架という賜物はなんとすばらしいのでしょう。なんと美しいのでしょう。十字架の木には、エデンの園の木のようには善悪が混じっていません。見るにも食べるにも美しく、まさにうるわしさそのものです。
この木は死ではなくいのちをもたらし、暗闇ではなく光をもたらします。それは人をエデンの園に導き入れるもので、決してその園から人を追放するようなものではありません。キリストは、あたかも王が四頭立ての馬車に乗り込むようにこの木にのぼり、死をつかさどる悪魔を滅ぼし※1、人類をその暴君への奴隷状態から解放してくださったのです。
主は偉大な勇士のように、この木の上で両手両足と聖なる脇腹をその戦いで刺し貫かれ、罪の傷をいやし、あの悪質な竜に傷つけられた私たちの本性を癒してくださいました。
かつて、私たちは木によって死にましたが、今や、木によって不死性を獲得しました。かつて、木によって欺かれましたが、今や、木によってずる賢い蛇を追い払いました。まことに不思議な逆転です。死に代わっていのちが、腐敗に代わって不死が、恥に代わって誉れが与えられます。
だから、聖なる使徒パウロはこう叫んでいます。「私には、私たちの主イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。この十字架によって世は私に対し、私は世に対して磔にされているのです※2。」それは、十字架の上に咲いた至高の知恵が、この世の知恵の誇りは愚かであることを証ししたからです。十字架の上に実ったあらゆる知識が、悪の芽を摘み取りました。
木という様々な予型すら、大昔から、この最も驚くべき出来事を指し示すしるしでした。学びたいと熱望するのであれば、このことをよく調べなさい。ノアは、その子らと彼らの妻たちとあらゆる種類の生き物を、神が宣言された洪水の破滅から、わずかの木でできたものによって救ったではありませんか。
モーセの杖は、何だったのでしょう。十字架の予型に他なりません。彼の杖は、あるときには水を血に変え、あるときには魔術師たちの偽りの蛇を呑み込み、また、あるときには海を打ってそれを二つに分け、あるときには海の流れを変えて水を逆流させて敵を溺れさせ、正しい者たちを救ったのです。
アロンの杖も同様に、十字架の予型でした。それは一日で花を咲かせ、ふさわしい祭司を指し示しました。
アブラハムがその息子を縛って木の上に置いたときも、その木は十字架の木の予型でした。十字架によって死が殺され、アダムはいのちを回復したのです。すべての使徒達は十字架を誇りとしましたし、あらゆる殉教者も十字架によって栄冠を受け、すべての聖人も[十字架によって]聖化されました。十字架によって私たちはキリストを着て、古い人を脱ぎ捨てました。十字架によって、私たちはキリストの羊として集められ、天の囲いに入るように一つの群れとされました。
復活節第二金曜日 読書
第一朗読 黙示録4:1-11
第二朗読 ストゥディオンの聖テオドロスの説教
※1 ヘブライ2:14
ところで、子らは血と肉を備えているので、イエスもまた同様に、これらのものを備えられました。それは、死をつかさどる者、つまり悪魔を御自分の死によって滅ぼし、死の恐怖のために一生涯、奴隷の状態にあった者たちを解放なさるためでした。
※2 ガラテヤ6:14
しかし、このわたしには、わたしたちの主イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。この十字架によって、世はわたしに対し、わたしは世に対してはりつけにされているのです。
聖テオドロス(759~826年)
正教会、カトリック教会の聖人。東ローマ皇帝レオン5世が815年に聖画像破壊主義を復活させ、これに反対するコンスタンチノープル主教を解任します。テオドロスも鞭打ち、投獄、流刑に処せられます。聖画像擁護者として彼は『聖画像崇敬の擁護論』を表します。
彼は言います。「キリストのイコンを崇敬することを廃止するなら、キリストのあがないのわざを取り消すことになります。目に見えない永遠の「みことば」は、人間本性を取られたときから目に見える人間の肉のうちに現れ、こうして目に見える全宇宙を聖化したからです。典礼の祝福と信者の祈りによって聖なるものとされたイコンは、わたしたちをキリストの位格、またキリストの聖人と結びつけ、そして彼らを通して天の父と結びつけます。こうしてイコンは、わたしたちが目に見える物質的な世界の中で神的な現実に参入することをあかしします。」
(Wikipedia では、Theodore the Studite. http://en.wikipedia.org/wiki/Theodore_the_Studite)
ベネディクト十六世の「中世の東方・西方教会の偉大な著作家」に関する連続講話で、「ストゥディオスの聖テオドロス」について解説しています。
http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/feature/benedict_xvi/bene_message411.htm
説教

この木は死ではなくいのちをもたらし、暗闇ではなく光をもたらします。それは人をエデンの園に導き入れるもので、決してその園から人を追放するようなものではありません。キリストは、あたかも王が四頭立ての馬車に乗り込むようにこの木にのぼり、死をつかさどる悪魔を滅ぼし※1、人類をその暴君への奴隷状態から解放してくださったのです。
主は偉大な勇士のように、この木の上で両手両足と聖なる脇腹をその戦いで刺し貫かれ、罪の傷をいやし、あの悪質な竜に傷つけられた私たちの本性を癒してくださいました。
かつて、私たちは木によって死にましたが、今や、木によって不死性を獲得しました。かつて、木によって欺かれましたが、今や、木によってずる賢い蛇を追い払いました。まことに不思議な逆転です。死に代わっていのちが、腐敗に代わって不死が、恥に代わって誉れが与えられます。
だから、聖なる使徒パウロはこう叫んでいます。「私には、私たちの主イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。この十字架によって世は私に対し、私は世に対して磔にされているのです※2。」それは、十字架の上に咲いた至高の知恵が、この世の知恵の誇りは愚かであることを証ししたからです。十字架の上に実ったあらゆる知識が、悪の芽を摘み取りました。
木という様々な予型すら、大昔から、この最も驚くべき出来事を指し示すしるしでした。学びたいと熱望するのであれば、このことをよく調べなさい。ノアは、その子らと彼らの妻たちとあらゆる種類の生き物を、神が宣言された洪水の破滅から、わずかの木でできたものによって救ったではありませんか。
モーセの杖は、何だったのでしょう。十字架の予型に他なりません。彼の杖は、あるときには水を血に変え、あるときには魔術師たちの偽りの蛇を呑み込み、また、あるときには海を打ってそれを二つに分け、あるときには海の流れを変えて水を逆流させて敵を溺れさせ、正しい者たちを救ったのです。
アロンの杖も同様に、十字架の予型でした。それは一日で花を咲かせ、ふさわしい祭司を指し示しました。
アブラハムがその息子を縛って木の上に置いたときも、その木は十字架の木の予型でした。十字架によって死が殺され、アダムはいのちを回復したのです。すべての使徒達は十字架を誇りとしましたし、あらゆる殉教者も十字架によって栄冠を受け、すべての聖人も[十字架によって]聖化されました。十字架によって私たちはキリストを着て、古い人を脱ぎ捨てました。十字架によって、私たちはキリストの羊として集められ、天の囲いに入るように一つの群れとされました。
復活節第二金曜日 読書
第一朗読 黙示録4:1-11
第二朗読 ストゥディオンの聖テオドロスの説教
※1 ヘブライ2:14
ところで、子らは血と肉を備えているので、イエスもまた同様に、これらのものを備えられました。それは、死をつかさどる者、つまり悪魔を御自分の死によって滅ぼし、死の恐怖のために一生涯、奴隷の状態にあった者たちを解放なさるためでした。
※2 ガラテヤ6:14
しかし、このわたしには、わたしたちの主イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。この十字架によって、世はわたしに対し、わたしは世に対してはりつけにされているのです。
聖テオドロス(759~826年)
正教会、カトリック教会の聖人。東ローマ皇帝レオン5世が815年に聖画像破壊主義を復活させ、これに反対するコンスタンチノープル主教を解任します。テオドロスも鞭打ち、投獄、流刑に処せられます。聖画像擁護者として彼は『聖画像崇敬の擁護論』を表します。
彼は言います。「キリストのイコンを崇敬することを廃止するなら、キリストのあがないのわざを取り消すことになります。目に見えない永遠の「みことば」は、人間本性を取られたときから目に見える人間の肉のうちに現れ、こうして目に見える全宇宙を聖化したからです。典礼の祝福と信者の祈りによって聖なるものとされたイコンは、わたしたちをキリストの位格、またキリストの聖人と結びつけ、そして彼らを通して天の父と結びつけます。こうしてイコンは、わたしたちが目に見える物質的な世界の中で神的な現実に参入することをあかしします。」
(Wikipedia では、Theodore the Studite. http://en.wikipedia.org/wiki/Theodore_the_Studite)
ベネディクト十六世の「中世の東方・西方教会の偉大な著作家」に関する連続講話で、「ストゥディオスの聖テオドロス」について解説しています。
http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/feature/benedict_xvi/bene_message411.htm
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます