聖クレメンス一世(紀元30~101年)
『コリントの信徒への手紙』
キリストの御血を見つめ、御父にとってどれほど値の高いものであるかを理解しましょう。その血は私たちの救いのために流され、全世界に悔い改めの恵みをもたらしたものだからです。
あらゆる時代に思いを馳せて、主が各時代にそのつど、主のもとに戻ろうとしている人々に「悔い改めの機会をお与えになった」※1ことを学びましょう。ノアは悔い改めを説き、それに聞き従った人達は救われました。ヨナはニネベの人々に破滅を説きました。そこで彼らは自分たちの罪を悔い改め、祈りによって神の怒りを和らげて、神から離れていた異邦人であったにもかかわらず救いを得ました。※2
神の恵みに仕える人たちは、聖霊に動かされて悔い改めについて語りました。万物の主ご自身も、悔い改めについて誓いをもってこう語られました。「私は生きている、と主は言われる。私は罪人が死ぬのを望まない。むしろ罪人が悔い改めることを望む※3。」そして優しい宣言を付け加えておられます。「イスラエルの家よ、あなたたちの不法を悔い改めよ※4。我が民の子らにこう言いなさい。たとえあなたたちの罪が地から天に達するほどであっても、緋色より赤く、粗布より黒くても、もし真心から私に立ち帰り、『父よ』と言うならば、私はあなたたちの声を聖なる民の声として聞こう※5。」
神は、その愛する者たちが悔い改めにあずかることを望み、全能の意志をもってこのように定めてくださったのです。
それゆえ、神の偉大な栄光である意志に従い、そのあわれみといつくしみに祈ってひれ伏し、その慈愛に立ち帰って、むなしい業、闘争心、また死に導く妬みを捨てるようにしましょう。
兄弟の皆さん、心の謙遜な者となって一切の尊大な心、高慢、愚行、怒りを捨て、聖書に記されていることを実践しましょう。聖書はこう仰せになります。「知恵ある者は、その知恵を誇るな。力ある者は、その力を誇るな。富ある者は、その富を誇るな。むしろ、誇る者は、主を求め、正しい裁きと義とを行って主を誇れ※6。」特に、主イエスが優しさと忍耐を教えて語られたことばを思い起こしましょう。
・・・
灰の水曜日 読書
第一朗読 イザヤ58:1-12
喉をからして叫べ、黙すな/声をあげよ、角笛のように。わたしの民に、その背きを/ヤコブの家に、その罪を告げよ。
彼らが日々わたしを尋ね求め/わたしの道を知ろうと望むように。恵みの業を行い、神の裁きを捨てない民として/彼らがわたしの正しい裁きを尋ね/神に近くあることを望むように。
何故あなたはわたしたちの断食を顧みず/苦行しても認めてくださらなかったのか。見よ、断食の日にお前たちはしたい事をし/お前たちのために労する人々を追い使う。
見よ/お前たちは断食しながら争いといさかいを起こし/神に逆らって、こぶしを振るう。お前たちが今しているような断食によっては/お前たちの声が天で聞かれることはない。
そのようなものがわたしの選ぶ断食/苦行の日であろうか。葦のように頭を垂れ、粗布を敷き、灰をまくこと/それを、お前は断食と呼び/主に喜ばれる日と呼ぶのか。
わたしの選ぶ断食とはこれではないか。悪による束縛を断ち、軛の結び目をほどいて/虐げられた人を解放し、軛をことごとく折ること。
更に、飢えた人にあなたのパンを裂き与え/さまよう貧しい人を家に招き入れ/裸の人に会えば衣を着せかけ/同胞に助けを惜しまないこと。
そうすれば、あなたの光は曙のように射し出で/あなたの傷は速やかにいやされる。あなたの正義があなたを先導し/主の栄光があなたのしんがりを守る。
あなたが呼べば主は答え/あなたが叫べば/「わたしはここにいる」と言われる。軛を負わすこと、指をさすこと/呪いの言葉をはくことを/あなたの中から取り去るなら
飢えている人に心を配り/苦しめられている人の願いを満たすなら/あなたの光は、闇の中に輝き出で/あなたを包む闇は、真昼のようになる。
主は常にあなたを導き/焼けつく地であなたの渇きをいやし/骨に力を与えてくださる。あなたは潤された園、水の涸れない泉となる。
人々はあなたの古い廃虚を築き直し/あなたは代々の礎を据え直す。人はあなたを「城壁の破れを直す者」と呼び/「道を直して、人を再び住まわせる者」と呼ぶ。
第二朗読 聖クレメンス1世 『コリントの信徒への手紙』
※1 知恵の書 12:9~10
神を信じない者たちを戦いのさなかに、神に従う人々の手に渡し、獰猛(どうもう)な獣や厳しい言葉で即座に滅ぼすことも、あなたにとって不可能ではなかった。
しかし、あなたは徐々に罰を加えながら、悔い改めの機会を与えておられた
※2 ヨナ 3:4-10
ヨナはまず都に入り、一日分の距離を歩きながら叫び、そして言った。「あと四十日すれば、ニネベの都は滅びる。」
すると、ニネベの人々は神を信じ、断食を呼びかけ、身分の高い者も低い者も身に粗布をまとった。
このことがニネベの王に伝えられると、王は王座から立ち上がって王衣を脱ぎ捨て、粗布をまとって灰の上に座し、王と大臣たちの名によって布告を出し、ニネベに断食を命じた。
「人も家畜も、牛、羊に至るまで、何一つ食物を口にしてはならない。食べることも、水を飲むことも禁ずる。人も家畜も粗布をまとい、ひたすら神に祈願せよ。おのおの悪の道を離れ、その手から不法を捨てよ。そうすれば神が思い直されて激しい怒りを静め、我々は滅びを免れるかもしれない。」
神は彼らの業、彼らが悪の道を離れたことを御覧になり、思い直され、宣告した災いをくだすのをやめられた。
※3 エゼキエル 33:11
彼らに言いなさい。わたしは生きている、と主なる神は言われる。わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ。立ち帰れ、立ち帰れ、お前たちの悪しき道から。イスラエルの家よ、どうしてお前たちは死んでよいだろうか。
※4 エゼキエル 18:30
それゆえ、イスラエルの家よ。わたしはお前たちひとりひとりをその道に従って裁く、と主なる神は言われる。悔い改めて、お前たちのすべての背きから立ち帰れ。
※5 イザヤ1:16-20
洗って、清くせよ。悪い行いをわたしの目の前から取り除け。悪を行うことをやめ善を行うことを学び裁きをどこまでも実行して搾取する者を懲らし、孤児の権利を守り やもめの訴えを弁護せよ。
論じ合おうではないか、と主は言われる。たとえ、お前たちの罪が緋のようでも雪のように白くなることができる。たとえ、紅のようであっても/羊の毛のようになることができる。
お前たちが進んで従うなら大地の実りを食べることができる。かたくなに背くなら、剣の餌食になる。
主の口がこう宣言される。
※6 エレミヤ 9:22-23
主はこう言われる。知恵ある者は、その知恵を誇るな。力ある者は、その力を誇るな。富ある者は、その富を誇るな。
むしろ、誇る者は、この事を誇るがよい 目覚めてわたしを知ることを。わたしこそ主。この地に慈しみと正義と恵みの業を行う事 その事をわたしは喜ぶ、と主は言われる。
聖クレメンス一世(紀元30~101年 在位 91~101年)
初代教会時代のローマ司教。使徒パウロ、使徒ペトロから教えを受けた、使徒教父の一人。彼がペトロの三代後のローマ司教として一世紀末のローマ教会を治めた。コリントの教会にあてて、その平和と一致を回復させるための優れた手紙を送った。カトリック教会、正教会、聖公会、ルーテル教会などで聖人。
女子パウロ会 聖人カレンダーへ
http://www.pauline.or.jp/calendariosanti/gen_saint50.php?id=112301
ベネディクト十六世の「使徒の経験から見た、キリストと教会の関係の神秘」の連続講話で、ローマのクレメンスが紹介されています。エウセビオス(263年ごろ~339年)の時代までは、信者の集会でクレメンスの手紙が読まれていたようです。(アレクサンドリア写本に入っています)
https://www.cbcj.catholic.jp/2007/03/07/3537/
『コリントの信徒への手紙』

あらゆる時代に思いを馳せて、主が各時代にそのつど、主のもとに戻ろうとしている人々に「悔い改めの機会をお与えになった」※1ことを学びましょう。ノアは悔い改めを説き、それに聞き従った人達は救われました。ヨナはニネベの人々に破滅を説きました。そこで彼らは自分たちの罪を悔い改め、祈りによって神の怒りを和らげて、神から離れていた異邦人であったにもかかわらず救いを得ました。※2
神の恵みに仕える人たちは、聖霊に動かされて悔い改めについて語りました。万物の主ご自身も、悔い改めについて誓いをもってこう語られました。「私は生きている、と主は言われる。私は罪人が死ぬのを望まない。むしろ罪人が悔い改めることを望む※3。」そして優しい宣言を付け加えておられます。「イスラエルの家よ、あなたたちの不法を悔い改めよ※4。我が民の子らにこう言いなさい。たとえあなたたちの罪が地から天に達するほどであっても、緋色より赤く、粗布より黒くても、もし真心から私に立ち帰り、『父よ』と言うならば、私はあなたたちの声を聖なる民の声として聞こう※5。」
神は、その愛する者たちが悔い改めにあずかることを望み、全能の意志をもってこのように定めてくださったのです。
それゆえ、神の偉大な栄光である意志に従い、そのあわれみといつくしみに祈ってひれ伏し、その慈愛に立ち帰って、むなしい業、闘争心、また死に導く妬みを捨てるようにしましょう。
兄弟の皆さん、心の謙遜な者となって一切の尊大な心、高慢、愚行、怒りを捨て、聖書に記されていることを実践しましょう。聖書はこう仰せになります。「知恵ある者は、その知恵を誇るな。力ある者は、その力を誇るな。富ある者は、その富を誇るな。むしろ、誇る者は、主を求め、正しい裁きと義とを行って主を誇れ※6。」特に、主イエスが優しさと忍耐を教えて語られたことばを思い起こしましょう。
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灰の水曜日 読書
第一朗読 イザヤ58:1-12
喉をからして叫べ、黙すな/声をあげよ、角笛のように。わたしの民に、その背きを/ヤコブの家に、その罪を告げよ。
彼らが日々わたしを尋ね求め/わたしの道を知ろうと望むように。恵みの業を行い、神の裁きを捨てない民として/彼らがわたしの正しい裁きを尋ね/神に近くあることを望むように。
何故あなたはわたしたちの断食を顧みず/苦行しても認めてくださらなかったのか。見よ、断食の日にお前たちはしたい事をし/お前たちのために労する人々を追い使う。
見よ/お前たちは断食しながら争いといさかいを起こし/神に逆らって、こぶしを振るう。お前たちが今しているような断食によっては/お前たちの声が天で聞かれることはない。
そのようなものがわたしの選ぶ断食/苦行の日であろうか。葦のように頭を垂れ、粗布を敷き、灰をまくこと/それを、お前は断食と呼び/主に喜ばれる日と呼ぶのか。
わたしの選ぶ断食とはこれではないか。悪による束縛を断ち、軛の結び目をほどいて/虐げられた人を解放し、軛をことごとく折ること。
更に、飢えた人にあなたのパンを裂き与え/さまよう貧しい人を家に招き入れ/裸の人に会えば衣を着せかけ/同胞に助けを惜しまないこと。
そうすれば、あなたの光は曙のように射し出で/あなたの傷は速やかにいやされる。あなたの正義があなたを先導し/主の栄光があなたのしんがりを守る。
あなたが呼べば主は答え/あなたが叫べば/「わたしはここにいる」と言われる。軛を負わすこと、指をさすこと/呪いの言葉をはくことを/あなたの中から取り去るなら
飢えている人に心を配り/苦しめられている人の願いを満たすなら/あなたの光は、闇の中に輝き出で/あなたを包む闇は、真昼のようになる。
主は常にあなたを導き/焼けつく地であなたの渇きをいやし/骨に力を与えてくださる。あなたは潤された園、水の涸れない泉となる。
人々はあなたの古い廃虚を築き直し/あなたは代々の礎を据え直す。人はあなたを「城壁の破れを直す者」と呼び/「道を直して、人を再び住まわせる者」と呼ぶ。
第二朗読 聖クレメンス1世 『コリントの信徒への手紙』
※1 知恵の書 12:9~10
神を信じない者たちを戦いのさなかに、神に従う人々の手に渡し、獰猛(どうもう)な獣や厳しい言葉で即座に滅ぼすことも、あなたにとって不可能ではなかった。
しかし、あなたは徐々に罰を加えながら、悔い改めの機会を与えておられた
※2 ヨナ 3:4-10
ヨナはまず都に入り、一日分の距離を歩きながら叫び、そして言った。「あと四十日すれば、ニネベの都は滅びる。」
すると、ニネベの人々は神を信じ、断食を呼びかけ、身分の高い者も低い者も身に粗布をまとった。
このことがニネベの王に伝えられると、王は王座から立ち上がって王衣を脱ぎ捨て、粗布をまとって灰の上に座し、王と大臣たちの名によって布告を出し、ニネベに断食を命じた。
「人も家畜も、牛、羊に至るまで、何一つ食物を口にしてはならない。食べることも、水を飲むことも禁ずる。人も家畜も粗布をまとい、ひたすら神に祈願せよ。おのおの悪の道を離れ、その手から不法を捨てよ。そうすれば神が思い直されて激しい怒りを静め、我々は滅びを免れるかもしれない。」
神は彼らの業、彼らが悪の道を離れたことを御覧になり、思い直され、宣告した災いをくだすのをやめられた。
※3 エゼキエル 33:11
彼らに言いなさい。わたしは生きている、と主なる神は言われる。わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ。立ち帰れ、立ち帰れ、お前たちの悪しき道から。イスラエルの家よ、どうしてお前たちは死んでよいだろうか。
※4 エゼキエル 18:30
それゆえ、イスラエルの家よ。わたしはお前たちひとりひとりをその道に従って裁く、と主なる神は言われる。悔い改めて、お前たちのすべての背きから立ち帰れ。
※5 イザヤ1:16-20
洗って、清くせよ。悪い行いをわたしの目の前から取り除け。悪を行うことをやめ善を行うことを学び裁きをどこまでも実行して搾取する者を懲らし、孤児の権利を守り やもめの訴えを弁護せよ。
論じ合おうではないか、と主は言われる。たとえ、お前たちの罪が緋のようでも雪のように白くなることができる。たとえ、紅のようであっても/羊の毛のようになることができる。
お前たちが進んで従うなら大地の実りを食べることができる。かたくなに背くなら、剣の餌食になる。
主の口がこう宣言される。
※6 エレミヤ 9:22-23
主はこう言われる。知恵ある者は、その知恵を誇るな。力ある者は、その力を誇るな。富ある者は、その富を誇るな。
むしろ、誇る者は、この事を誇るがよい 目覚めてわたしを知ることを。わたしこそ主。この地に慈しみと正義と恵みの業を行う事 その事をわたしは喜ぶ、と主は言われる。
聖クレメンス一世(紀元30~101年 在位 91~101年)
初代教会時代のローマ司教。使徒パウロ、使徒ペトロから教えを受けた、使徒教父の一人。彼がペトロの三代後のローマ司教として一世紀末のローマ教会を治めた。コリントの教会にあてて、その平和と一致を回復させるための優れた手紙を送った。カトリック教会、正教会、聖公会、ルーテル教会などで聖人。
女子パウロ会 聖人カレンダーへ
http://www.pauline.or.jp/calendariosanti/gen_saint50.php?id=112301
ベネディクト十六世の「使徒の経験から見た、キリストと教会の関係の神秘」の連続講話で、ローマのクレメンスが紹介されています。エウセビオス(263年ごろ~339年)の時代までは、信者の集会でクレメンスの手紙が読まれていたようです。(アレクサンドリア写本に入っています)
https://www.cbcj.catholic.jp/2007/03/07/3537/