バイデンが醜態を晒してしまい、次期大統領職が務まらないであろうことがはっきりしてしまった。あの表情と喋りは認知症患者のものである。認知症の大統領なんてあってはならないであろう。
それでなくてもバイデンは外交で失策に失策を重ねている。トランプ時代より平和は遠のき戦争が継続している。バイデンの政府支出拡大の成果が本格的に出てくるのは皮肉にも次期大統領時代になってからだろう。そうなるとバイデンの統治には今のところ評価するところは殆どなく、選挙戦では有権者の反トランプ感情だけが頼みとなる。
ここからが主題だ。では、トランプで良いのか。トランプの政策を見ていると橋下徹氏を思い出さずにはいられない。その場、その場で民衆にウケることを言っているだけで論理的整合性がなく、話の辻褄が全く合わないのだ。
確かに低金利、ドル安、株高、好景気を実現できるのであればアメリカ人にとって結構なことだ。しかし、彼の政策をよくよく検討するとインフレ方向に向かう政策、さもなくば相矛盾する政策ばかりである。例えば関税を原資にする減税。関税を高くすれば輸入コスト・プッシュ・インフレが不可避である。減税も流通する貨幣を増やしインフレを呼び込む政策である。彼の言う通りに所得税減税の原資を全て対中国の関税に求めるなら貿易は麻痺し、途轍もない輸入インフレからの不況は不可避である。移民の抑制もインフレにつながる。アメリカは現在慢性的な人手不足である。この状況で移民を減らせば賃金の急上昇は避けられない。賃金の上昇は即インフレにつながる。常にインフレなので稼いだ分はすべて使うか投資する、何なら借りてでも買い物する、投資するのがアメリカ人のライフスタイルだからだ。待てば待つほど欲しいものは高くなっていくし、仮に高金利で借金してもすぐに貨幣価値の下落で実質圧縮されていくのだ。アメリカ人の消費行動には合理性があるわけである。デフレに慣れすぎてすぐに貯金してしまう日本人とは違うのだ。デフレ下では貯金の価値は上がっていくのだから日本人の行動も合理的だったのである。関税だけでは彼の約束する巨額の所得税減税はできない。そこで政府支出の圧縮を公約しているにも関わらず所得減税の原資として国債発行額が増大するのは不可避と見られている。討論会後に米国金利が急上昇し、債券が暴落したのはこの認識が広まったからに他ならない。国債発行額が拡大すれば当然インフレになる。悪性、慢性インフレ下で低金利なんて実現できるわけがない。
こうしてみるとトランプの経済政策は全く辻褄が合わない、論理的整合性がないものなのだ。関税を増やし、所得税を大幅に減税し、移民を抑制しながら低金利、ドル安、好景気の全てを実現なんて出来ないのである。
これらの政策をトランプが打ち出したのは数年前である。その胸中を覗いてみるならFRBの高金利政策によって自分が大統領に就任する頃にはインフレは収まっているだろう。そこから多少インフレ誘導の政策を行っても民衆にバレはしない。インフレは本来好景気の証拠なのであるから多少物価が上がろうとそれ以上に好景気、高賃金、株高になれば誰も文句は言うまい。インフレ退治でFRBの手柄を横取りし、更にそろそろ出てくるであろうバイデンの公共投資の成果を横取りして好景気を実現することができれば支持者が望む政策(本来不景気、インフレになる)を実現出来た上に手柄は自分が独占できる。こんなところではないか。しかし、FRBは未だにインフレを退治できておらず、次期大統領就任までにインフレ退治が完了する可能性はない*。現在のトランプが掲げている政策をそのまま実行したならば悪性インフレの進行は不可避である。トランプの青写真は既に絵に描いた餅になってしまっているのだ。
*改めて言うまでもないだろうが、インフレが沈静化しない一因はバイデンの公共投資拡大政策に伴う国債発行額の増大である。皮肉にもトランプはバイデンと同じ轍を踏もうとしている。好景気とインフレは本来一体なものであるからコロナ後にアメリカの経済崩壊が起こらなかったのはインフレ進行を覚悟の上で財政支出を拡大したからである。トランプの場合は関税によってコスト・プッシュ・インフレになるのであるからバイデンの施策(デマンドプルインフレ誘導)よりもインフレ退治は困難になるであろう。日本も他人事ではない。今後積極財政を取るのであればアメリカのようなインフレが恒常化した社会になるのだ。積極財政論者にその覚悟があるのか大いに疑問である。裏を返せば今の日本の物価が他国と比較して安定しているのは民の不満を承知で緊縮財政を敷いているからである。アベノミクス以降の日本のように金融緩和しながら緊縮財政を敷くのはアクセルとブレーキを同時に踏む行為であるといえばその通りである。アベノミクスが不成功に終わったのは積極財政に踏み出せなかった上に消費増税したからであるが他国のように財政支出拡大に舵を切っていたら物価高騰はこんなものでは済まなかったであろう。
トランプはポピュリストであるから都合が悪いことがあってもとぼけるだろうし公約の変更に罪悪感なんてないから政策を変更する柔軟性を持っているとも言える。そもそもトランプは頭が悪いわけでもなんでもなく実現不可能であったり論理的整合性がなくても気にせずにその場その場で支持者が喜ぶことを言っているだけなので今掲げている政策をそのまま実行するとは思えない。ただし、高関税、移民抑制はやらなければ岩盤支持層を失うので強行するのではないか。そう考えるとトランプ大統領時代はインフレ、低成長は避けられないように思える。
バイデンが大統領選から引いてくれたら多少はトランプの大統領就任を阻止する可能性はあがるのだが・・・。政治家としての資質が疑問視されている岸田翔太郎氏を岸田文雄の後継者にすることを譲らない岸田夫人同様にバイデン夫人も引くような人ではないらしい。内心バイデン本人も辞めたがっているように思うのだが嫁には頭が上がらないようだ。有権者ももう見ていられないぐらい衰えを隠せないバイデンよりは問題があっても頭が働いているトランプを選んでしまうだろう。民主党の大統領候補がバイデンのままでは反トランプ票を結集できずトランプ大統領就任を阻止することは不可能であろう。