お前が始めた物語だろ
そんな有名な漫画の台詞がある。私は進撃の巨人を読んでない*のだが私ですら知っているレベルで人口に膾炙している。
*私は美少女や美女が存在しない漫画が嫌いである。よほど面白いと思わない限り手に取ることはない。
第二次世界大戦でドイツと日本が敗北した後、アメリカを中心とした連合国はドイツと日本に重い枷を付けた。こいつらは危なすぎてかなわんから二度と軍国主義化しないようにしようと。どちらも憲法、財政法に軍国主義化を防ぐ条項が付けられた。これを悪用して権勢を振るっているのが日本の財務省であることは言うまでもない。
お前らは他国を侵略できるような軍隊を持つな、その代わりに防衛についてはアメリカと連合国が面倒を見よう。そう言われてドイツと日本は従うしかなかったのである。その結果がNATOであり日米安全保障条約である。ドイツと日本が極めて異形な平和国家になったのはアメリカを中心とした連合国に敗北して従うしかなかったからだ。
それを今更お前たちは軍事的にアメリカに甘えている、だと?巫山戯るなといいいたい。ドイツも日本も好きで軍事的に無力化されてアメリカの属国に甘んじていたのではないのだ。常に無理難題を突きつけられ戦争できないがゆえに国際的に低く見られる屈辱に耐えながらアメリカの靴を舐め続けてきたのだ。
他国と戦争できるような軍隊がない、それ故に国際政治でも軽く見られるのだから経済に集中するのは当たり前ではないか。その成果があってドイツも日本も経済的にはアメリカを凌ぐ部分も出てきた。金融とITについてはアメリカは覇権を渡すことはなかったが。
ドイツ、日本以外の国にだって言いたいことがあるだろう。ドルを基軸通貨にして世界の富がアメリカに流れ込むようにしたのはアメリカ自身である。国際収支が赤字化するのは当たり前ではないか。それ故にアメリカは世界の覇者でいられたのだ。製造業や鉱業が落魄したのだってこんな仕事やってられるか(ブルシット・ジョブ)とアメリカの白人自身が低賃金の製造業と労働環境の厳しい鉱業を見限ったからである。足りない人員を低賃金の移民が埋めながら製造業と鉱業が衰退していくという構造が定着した。有能な人物であれば他の仕事で数倍の賃金を稼げるから製造業や鉱業の現場仕事には従事しない。そんな国で出来た製品は品質に見合わない価格にならざるを得ない。高賃金の国家では製造業や鉱業が衰えていくのは当たり前なのである*。国際分業、グローバリズム経済のもとで低賃金の国家にその役割を譲っていくは当然のことだ。そんな社会を作り上げたのは他ならぬアメリカの政治指導者、グローバリスト、経済学者たちである。他の国はアメリカの儲けのために社会を変えられてきたのである。それをトランプの思惑で勝手にガラガラポンされたのではたまったものではない。
*グローバリズム経済やネオ・リベラリズムが真面目に現場で働いている普通の労働者を蔑ろにし続けた。現場に出ず人を顎で使う、金を右から左に回しているだけの人物が大金を得ているのはおかしい。社会を底辺で支えている真面目に働く現場の労働者を見直すべきというトランプ政権のスローガンについてだけはトランプとその周囲に共感する。しかし、そこから出てくる政策がスローガンと違ってさらなる労働者の抑圧、ビリオネアだけが有利になる政策であるのだからお話にならない。この大変革を簡単に乗り越えられるのは資産の退避や分散が可能なかなりの資産家だけであろう。
金利、ドルを引き下げるというのは結果的にアベノミクス同様に人為的に国民の実質賃金を引き下げるということに他ならない。中間層を含む労働者は実質賃金の低下で没落する。これとそれに伴うインフレに対応できるのは資産家だけなのだ。通貨安、賃金低下によるコストダウンと引き換えに製造業が復活するのだ。小泉政権、安倍政権のやったことで日本国民は幸福になっただろうか?アメリカ人はここ30年の日本と同じ轍を踏むであろうか?憲法が抵抗権を認めているがゆえに銃を規制できないアメリカ人が暴動を起こさずにいられるか?それに安倍晋三には黒田日銀総裁という協力者が中央銀行にいたがトランプの相方であるFRBのパウエル議長は常識人である。そんな乱暴なやり方に協力するとはちょっと思えない。
他の同盟国から見たらすべてアメリカの言う通りにやってきたのにもかかわらずいきなり梯子をはずされたのである。今後は外国の防衛に対して軍事的にコミットしない、国内の低賃金労働者を救済し、中国との戦争に備えるために関税を掛けて輸入を制限し国際分業に極力参加せず自国の鉱業、製造業を復活させる。トランプのアメリカは物資を他国に頼ることなく単独で戦争できる国家でありたいのだ。ただし、これまで通り米国からの輸出品は相手国に受け入れてもらうしITと金融業を通じて世界の富はアメリカに集めさせてもらう。そんな一方的で都合のよい話が通るわけがないのである。アメリカ自ら買って出ていた世界の警察官としての役割の代償として同盟国はアメリカを自由主義陣営の覇者と認め、ドルを基軸通貨として世界の富がアメリカに集中するのを認めていたわけである。それを反故にするというのであれば他国はアメリカをリーダーとして認めることはなくなっていくであろう。
アメリカがこれ以上無理難題を突きつけるならアメリカを疎外した経済圏が誕生してもおかしくない。そうなった場合はその覇者は中国ということになろう。それで良いのだろうか?いくらアメリカといえども全世界を敵に回して争うことは出来ないだろう。しかし、今のトランプの姿勢ではそうなってもおかしくはない。トランプ自身はお山の大将でいることが目的であろうが彼の側近や部下には本気でアメリカ以外の世界の切り捨てを目指していたり、地球環境を徹底的に使い捨てて支配層、富裕層だけ火星に移住するような夢物語を真剣に考えているような連中がゴロゴロしている。その割に情報秘匿はいい加減だったり、経済、軍事の常識も知らなかったり、どこからどうみても能力ではなくトランプへの忠誠心で役割が割り振られている。世界の覇権国がなんという体たらくだろう。
最近はトランプは戦争嫌いだというのも怪しくなってきている。トランプ2.0からは軍事的脅しを躊躇わなくなっているからだ。イスラエルの停戦も早速破綻したし、フーシー派には実力行使、イランへも戦争覚悟で圧力を掛けている。ウクライナや台湾、日本のためにアメリカの若者が死ぬのは真っ平と言いながらイスラエルのためなら構わないらしい。ロシアと親密なのは中国を孤立化させるためだろう。そんなことをしたとしても今のような姿勢ではロシアを中国から切り離せたとしてもグローバルサウス国家が中国に靡くのは確定的だ。
今回の相互関税でとりあえずトランプ政権はバフェットや米国富裕層の予想通り世界を巻き込みながら収支の改善と景気後退を目指していることがはっきりした。とにかく何が何でも金利とドルを下げたいのだ。巻き込まれて路頭に迷う人のことは知ったことではない。
トランプは事前に関税について対象を絞り全方位には課税しないとか措置は寛大なものになるだろうとはいっていたが私は全く信用してなかったしほぼ予想通りの展開であった。去年の唐突な植田ショック(思い出すも本当に忌々しい。誰も期待してない河野太郎はともかく岸田文雄、茂木敏充は経済政策通を自認しているがあんなにも経済的に危険な時期に日銀に利上げを強要しておりハリボテであることがはっきりした。あれ以降外資は日本の経済政策能力は低く日本市場は長期投資に適格ではないと判断しており株価が上がらなくなった。)と違って起こることは予想できていたし、対策も出来ていたので株価の下落は投資的には良い買い場と思うことにしている。問題はこれでも金利が想定する水準まで下がらなければ第二弾、第三弾の景気後退策が飛んでくるのが確実なことだ。就任直後の今なら何でも悪いことはバイデンのせいにできる!ということで現政権は無茶苦茶やっている。コロナ対策で財政赤字が悪化したのは事実。しかし、皆の努力で経済がソフトランディング出来たはずのところで余計なことをして水の泡にしているのはトランプだからねぇ(苦笑)。
あ、株価がこんな惨状でも日銀はどこかの時点で利上げすると思いますよ。米国のいう非関税障壁に日本の通貨政策=低金利が入っていることは確実ですから。消費税という名の輸出補助金を止めたら話は別かもしれませんが。将来的に消費税を社会保障、福祉の財源にするというのも強ち嘘ではない(現状は明らかに違うが)だろうから消費税の減税、撤廃をするぐらいなら日銀の利上げ、円高、株安、不景気を選ぶのが日本という国でしょう。