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(ビリオメディア)地域つなぐ力に 避難者へ演説動画

2013-07-19 11:23:11 | 日記

 【三浦英之】投票率が注目される参院選。ネット選挙の解禁は、地方を変える力になり得るか。電子の「声」が距離や世代を飛び越える。
ビリオメディア参院選
 走る候補者にカメラを手にした数人の男たちが追いすがる。「早く!」。汗だくの彼らは陣営のネット担当者たちだ。一眼レフ2台とビデオカメラ、iPadで候補者を狙う。撮影後は選挙カーの助手席ですぐに編集。画像は間もなくホームページにアップされた。
 福島選挙区のある陣営。常時5人の担当者が1日十数回、演説や街頭での様子を発信する。「文章より画像、画像より動画」と責任者(38)。「動画なら言葉やしぐさも伝わる。文章よりずっとわかりやすい」
 視線の先には、福島県外で暮らす約5万4千人の避難者がいる。彼らは県内で演説を聴くことができない。その距離を、ネットなら埋められる。
 「避難者にこそ福島の現状を知ってほしい」と担当者たちは必死だ。「そして政治に声を上げてほしい。それこそが日本や福島を変えていく力になると思う」
 そんなネット上の訴えを、千葉県柏市の社宅で暮らす松本実さん(64)は毎日約1時間かけて見ている。自宅は福島第一原発から約2キロの福島県大熊町。「(ネットは)確かに便利。でも少し物足りない。どの陣営も映像や画像を多用しているが、福島の未来をどう描くのか、具体的な言葉がほしい」
 目がいくのは、やはり「原発」だ。原発事故で家族は散り散りになった。93歳の母は福島県会津若松市の仮設住宅で、62歳の妻は子どもと千葉県松戸市で避難生活を送る。除染をどう進めるか、故郷に帰れる日は来るのか。どの陣営も踏み込めていないと感じる。
 仕事は原発関連。だからこそ震災後の福島に責任を感じ、政治に期待する。「ネット選挙は続く。でも私の願いは福島で暮らし、ネットに頼らなくても普通に遊説を聞ける日常を取り戻すことです」
 21日は会津若松市で投票し、日帰りで柏市に戻る。
■陣営に直接問いかけ
 震災で約1130人が犠牲になった宮城県東松島市。不登校児の施設「創る村」は、学校に通えない子どもたちを集め、大自然のなかで集団生活を学ばせようというNPOだ。
 施設を訪ねると、パソコンの前にスタッフや子どもたちが群がっていた。創る村の村長飴屋(あめや)善敏さん(80)がマウスを握る若い世代に指示を出す。「候補者たちの復興支援策を見せて」
 飴屋さんの懸念は「経営」だ。震災直前に新しい建物が完成。高齢者向けデイサービスも始める予定だったが、津波で全壊した。全国からの寄付で何とか修復できたが、借金返済の見通しは立たない。「地域に住民が戻ってくるのか、ここで施設を運営できるのか、知りたい」。画面には「復興を進めます」など抽象的な言葉ばかり。「うーん」という声が漏れる。
 元不登校児・舟山鈴太郎さん(20)の関心は「堤防」だ。施設からは松島湾を一望できる。行政の計画では高さ約3~4メートルの堤防を築くという。施設から海が見えなくなる。「景観の問題?」と記者が尋ねると、「安全の問題なんです」と首を振る。
 舟山さんは震災直後、海の水が引いたのを見て、入所者を施設2階へ上がらせた。「高い堤防を築けば海の変化を察知できない。素早い避難が難しくなる」
 「堤防の高さ、どう考えていますか」。4候補にツイッターで問うと、ある陣営から返事が来た。「住民の声を無視した進め方は間違い。被災者に寄り添うべきだ」。舟山さんは「政治を何だか身近に感じる」。
 《自分たちのことは自分たちの手で》が村のしきたり。施設再建に取り組む飴屋善太さん(25)は「僕らは都会の人たちより40倍ぐらい困ってる。でも1人40票は入れられないから、しっかり候補者を見極めたい」。
■しがらみ越え若者に訴え 長野・宮田村、30年ぶり選挙戦
 東京から電車で4時間。中央アルプスに抱かれた村が揺れている。人口約9300人の長野県宮田村。現村長が次期村長選の不出馬を表明。2人が村長選に立候補し、30年ぶりに選挙戦が実施されることになった。投開票日は参院選と同日。当然、ネット選挙解禁も加わる。
 「俺のアドレス、どこだっけ?」。告示前、前副村長の小田切康彦氏(68)にネット選挙への取り組みを聞くと、困った声で妻にウェブサイトのアドレスを聞いた。結局わからず、「後日、お伝えします」。
 元県議の小原勇氏(64)もネットには苦戦中。ツイッターを始めたが、フォロワー(登録読者)は告示後もゼロ。「闇の中を手探りで歩いている状態です」
 それでも両陣営がネットに注目するのは、村の若年人口率(0~14歳)が16%と県内3番目に高く、親世代も含めネット利用者が鍵を握るとみられるからだ。ウェブ上でも、子育て支援などを競って訴える。
 村特有の事情もある。30年前の村長選は村を二分した。以後、村長は話し合いなどで決めてきたという。しこりが残らぬよう、どちらを支持するか公言しない村民が多いなか、両陣営はネットに期待する。陣営担当者は「世間体を気にして講演会に来られない村民にも、ネットなら政策を訴えていける」と話す。
 一方の陣営のネット担当者は東京・六本木で活躍し、30代で村に戻ったIT社長だ。「村長選でネットが力を発揮するかは未知数。でもネットは垣根を越えられる。村のしこりも、都会との距離も。村出身の都会の若者に村を意識してもらうチャンスでもある」
 清水靖夫・現村長(72)は「ネット選挙が若者の投票率を押し上げ、政治が彼らの声を意識したものに変わっていくと信じたい。今の政治には若い力が絶対に必要なのだから」と話した。


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