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相反する2人の女性の共通点を探し当てた『あのこは貴族』

2021年02月27日 22時42分24秒 | 映画


『あのこは貴族』

【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:18/33
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が好きなら楽しめるかも】
ヒューマンドラマ
慶應義塾大学
"育ち"の違い
パイパン

【あらすじ】
東京に生まれ、
箱入り娘として何不自由なく成長し、
「結婚=幸せ」と信じて疑わない華子(門脇麦)。
20代後半になり、
結婚を考えていた恋人と別れ、
初めて人生の岐路に立たされる。

あらゆる手立てを使い、
お相手探しに奔走した結果、
ハンサムで良家の生まれである
弁護士・幸一郎(高良健吾)と出会う。
幸一郎との結婚が決まり、
順風満帆に思えたのだが…。

一方、東京で働く美紀(水原希子)は富山生まれ。
猛勉強の末に名門大学に入学し上京したが、
学費が続かず、夜の世界で働くも中退。
仕事にやりがいを感じているわけでもなく、
都会にしがみつく意味を見い出せずにいた。

しかし、幸一郎と大学の同期生だったことで、
同じ東京で暮らしながら、
別世界に生きる華子と出会うことになる。

2人の人生が交錯したとき、
それぞれに思いもよらない世界が拓けていく―。

【感想】
良家のお嬢様と地方出身の女の子の対比を描いた話。
いや、あるよね、同じ世界に生きているはずなのに、
違う階層(セカイ)の人って。
原作は読んでないけれど、
取材に2年も費やしたというだけあって、
いろいろリアルだったなー。
慶應出身者だといろいろ面白いよ(笑)

で、彼女らの何を描いているのかって言うと、
最終的には"共通点"なんだよね。
一見、両者の格差を描いているように見えるじゃない。
でも、そうじゃない、2人には意外と共通点があるんだ。

それは後述するとして、
当然2人の間には大きな差があるよ?

まず、華子は超絶箱入り娘。
世間知らずな印象を受けるも、
気づけばいいカフェにいて、
必ずダージリンティーを注文するし、
トイレのことをお化粧室って言う。
こういう細かいところに"育ち"って表れるよね。

ただ、恋人の条件などは「普通でいいんだよな~」とはっきりしない態度。
でも、20代後半ともなれば、
相手にはっきりしたイメージはなくとも、
自分が育った環境から無意識のうちに
恋人たる人物像ってのは絶対あると思うのさ。

それに合致したのが幸一郎。
幼稚舎から慶應で~弁護士で~実家も良家で~
(しかもイケメンで~スタイルよくて~)って、
うん、もう上流階級になるとウマが合うかどうかよりも、
育ちが合うかどうかが大事なのかなって思ったよね。
ちなみに華子は慶應じゃないけど、
「初等科」ってセリフがあったから、
まあどっかの私立だとは思う。

一方、美紀は一生懸命勉強して、
慶應義塾大学に合格するも、
家庭の事情で中退。
お水のバイトで知り合ったお客さんに
紹介してもらった会社で働きつつ、
日々なんとか生活してますっていう感じ。

彼女は富山出身なんだけど、
地元に帰れば男たちは親の家業を継いだりして、
昔はあんなバカやってたやつらが今では立派な大黒柱っていうパターン。

この2人、シンクロするところどこもないじゃんって思うんだけど、
ちゃんとあるのよ。
それは「外に出なきゃ親のトレース」っていうところ。
これは美紀が言っていたことなんだけど、
田舎を出て東京に来ないと、
親の家業を継いだりして、
結局親とほぼ同じ人生を歩むんだよ。

でもそれって、華子にも当てはまるんじゃないかと思った。
上流階級の方が、
本人の意志よりも家柄や世間体を気にするようになるから、
同じような家柄とくっつくと、
また親とほぼ同じ人生が続くんじゃないかって。

あと、印象的だったのが、
華子が美紀の部屋を訪れたときに、
「落ち着く」って言ったんだよね。
それは、ここにあるものが全部"美紀のもの"だから。

ここでハッとしたんだけど、
お金にしろモノにしろ、
華子の方が圧倒的に質も量も上回っているのは明らか。
そういう意味でも、
人生の選択肢は彼女の方が多いようにも思う。

でも、ここでの彼女のセリフを聞いて、
華子自身が決められることって実は少ないのかなって感じた。
選択肢は多いけれど、選択できる権利が少ないっていう。
家柄や世間体が関わってくる上流階級ゆえのしがらみなのかな。

真逆の属性の女の子がいると、
どちらかがどちらかを妬むみたいな展開を想像しがちだけど、
これはむしろ2人の共通点を探し当てている点が新鮮な映画でした。

映画『あのこは貴族』公式サイト

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