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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

女性の生きづらさを真っ向から描いた『82年生まれ、キム・ジヨン』

2020年10月09日 23時55分09秒 | 映画


【基本情報】
 原題:82년생 김지영
 英題:Kim Ji-young: Born 1982
製作年:2019年
製作国:韓国
 配給:クロックワークス

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:38/147
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
結婚・出産を機に仕事を辞め、
育児と家事に追われるキム・ジヨン(チョン・ユミ)。
常に誰かの母であり妻である彼女は、
時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。

そんな彼女を夫のデヒョン(コン・ユ)は心配するが、
本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。

しかし、夫の悩みは深刻だった。
妻は、たまに他人が乗り移ったような言動をとるからだ。
あるときはジヨンの母親に、またあるときは祖母になって、
文句を言ったり、アドバイスをしたりする。

しかも、ジヨン本人にはその記憶が一切ないのだ。
夫は彼女を傷つけるのが怖くて真実を告げられず、
ひとり精神科医に相談に行く。

【感想】
これは韓国でベストセラーとなった同名小説の映画化なんだけど、
女性はいろいろ、、、本当にいろいろ思うところが多いだろう。
韓国における性差別を扱いながら、
女性が感じる重圧や生きづらさを前面に押し出した作品だ。

育児をしながら働いている女性や
そのパートナーの方は共感度が高いかもしれない。
かといって、別にそれ以外の人が楽しめないわけではない。
主人公の肉体的・精神的負担と、
彼女を取り巻く家族の関係性を描いた人間ドラマは見ごたえがある。

旦那側の実家に行っては気を遣い、
街ゆく人や会社の人の心ない発言に憤りを覚え、
自分も働きたくて夫が育休を取るとなると、
義母から「息子の未来を台無しにする気か!」と罵倒される。
「なぜ女性というだけであきらめなくてはならないことが多いんだろう」
と深く考えさせられる内容。

とはいえ、誰が悪いという話でもない。
いまだ残る性差別や社会の認識から生じている部分もあるので、
現実にすぐさま解決するのは簡単なことではないだろう。

社会は個の集合で成り立つから、
結局は個の認識を少しずつ改めていくしか、
ジヨンが感じているような負担を減らせないとは思う。
でも、身近な人に対しては、
本当に少しの気遣いで救ってあげられることもあるだろうなというのは感じた。

また、こういうときは夫の気遣いがないというケースもあるけれど、
僕が観ている限りは育児も手伝っているし、
妻の体を気遣っているから、彼に非はないんじゃないかなと。
いや、女性からしたら「甘い!」って言われるかもしれないけど(笑)

ただ、ジヨン自身がいろいろがんばってしまう性格だからか、
余計に彼女に負担が集中している気はする。

この映画を観て、同じ女性でも
「わかるー。自分もこういうことでいつも辛い思いをしている」と共感するか、
「いや、いくらでも工夫のしようはあるでしょ」とたしなめるかは、
その人の価値観や置かれている環境によって様々だろうけど、
日本でも当てはまりそうなことだったから、
国が違っても抱えている問題は同じなんだなってのは思った。

なんか、過剰に反応しちゃう人はいそうな内容だけど、
ここまでストレートに現代の女性の生きづらさを表現した映画はタイムリーだし、
今まであんまりなかったかも。

まあ、男でも同じようことはありそうだけどね。
「男だから泣くな」、「男だから戦え」、「男だから一番を目指せ」、
というような暗黙の了解というか、無言の圧力というか。
僕は、「きもっ!」、「めんどくさっ!」と思っちゃうけど、
そういうので辛い想いをしている男性もきっといるはず。

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日本版よりも感動した『チィファの手紙』

2020年10月09日 21時13分06秒 | 映画


【基本情報】
 原題:你好,之华
 英題:Last Letter
製作年:2018年
製作国:中国
 配給:クロックワークス

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:36/146
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
姉、チィナンが亡くなった。
妹のチィファ(ジョウ・シュン)は、
姉宛に届いた同窓会に出かけ、
そのことを伝えようとするも、
姉に間違えられた上にスピーチまでするハメに。

同窓会には、チィファが憧れていた
イン・チャン(チン・ハオ)も来ていた。
チャンは途中で帰ったチィファを追いかけ、呼び止める。

チャンがチィナンに恋していたことを知っていた
チィファは姉のフリを続けた。
連絡先を交換するが、チャンが送ったメッセージを
チィファの夫ウェンタオ(ドゥー・ジアン)が目撃。
「この男はなんだ!」と激昂し、
チィファのスマホは破壊されてしまう。

仕方なくチィファは、
チャンに住所を明かさないまま、
一方通行の手紙を送ることに。
かくして始まった「文通」は、
思いもかけない出来事を巻き起こす。

【感想】
本作は2020年1月17日に公開された
岩井俊二監督の『ラストレター』の中国版。
しかし、これが作られたのは『ラストレター』よりも前の2018年とのこと。

設定に多少の違いはあれど、内容はほぼ同じ。
なんだけど、中国版の方が格段に面白く、感動して泣いた。。。
文通を通じて、過去の思い出に浸りつつ、
いまだ残る想いを抱えながら、
最愛の人の死と向き合う流れが心にしみる。
特に、チャンがチィナンに線香をあげるシーンは、
彼の涙にもらい泣きしたね。。

正直、日本版はそこまで刺さらなかったから
どうだろうなあと思ってたんだけど、
これは観てよかったな。

その理由はいくつかある。
まず、日本版を観ていてストーリーわかってるから、
こっちの方がよりじっくり観れたってのはあるだろう。

次に、中国版の方がテンポがよかった。
必要なシーンが凝縮されているように感じて、
話に集中しやすかった気がする。

そして、こっちの方がキャラクターの感情がよく出てる。
日本人と中国人の違いかもしれないけど、
中国版の方がみんな感情を表に出すから感情移入しやすかった。
終盤で、チャンがチィナンに線香をあげるシーンで
彼がメッチャ涙流してるけど、
日本版だと福山雅治はそんなそぶりなかったから。

あと、これは監督もおっしゃっていたけど、ローカライズがうまい。
回想シーンの1988年は、日本版だと現代との差がわかりづらい上に、
キャストがかぶってるから時間軸の変化を感じづらかった。

それに対して、中国版はかなり時代背景を意識していた。
向こうにおける地方の1988年は日本とはかなり違ったということもあり、
風景がかなり昔を思わせる感じになっていたんだよね。
その時代の差が時間軸の変化を顕著にさせて、風情があったと思う。

他にも、登場人物の会話には細心の注意を払い、
中国人にとって違和感のない形に仕上げるほどの徹底ぶりだったようだ。

そういうこだわりの差が、日本版よりも面白く、
感動する要因へと繋がっていったのだろう。

ただ、結局わからなかったのは、
チャンは途中で手紙を2通もらうことになる
(チィファからのものと、チィナンの娘のムームーたちからのもの)けど、
そこで「何で2通あるんだ?」と深掘りしなかったこと。
これは日本版でもそうなんだけど、
真相を聞こうと思わなかったのかな。

映画「チィファの手紙」

初恋、めぐる― 岩井俊二監督作品 出演 ジョウ・シュン/原題:你好、之華

映画「チィファの手紙」