ふりかけ/B定食

基本は日記。思いつくまま、気のむくまま。ふたを取るまで中身が見えないから、定食というより、“どんぶり”ですかね。

おくりびと。

2008-09-15 21:17:39 | Weblog

●前評判どおりの良い映画でした。
決して、お涙ちょうだいの、クドい演出ではありません。
だけど、しみじみと、そして、せつなくも胸にせまって来ます。

コミカルな筋立てのお陰で、重たいテーマにもかかわらず、かる~いノリで入ってゆけました。

やはり、「納棺」という儀式の、その“形式美”に圧倒されますね。
衣を張る時のシャッ!という音や、めりはりのあるプロの手さばきに、不謹慎ながら、『もっと見た~い。』と思ってしまうんだもの。....いやあ、モッくん見事です。

その、モッくんこと、本木雅弘氏の好演は言うに及ばずですが、それそれの役者さんが、それぞれに良い仕事をしています。私的には、笹野高史さんの存在感に脱帽....。

●そうそう、この映画のエンドロールで、文字を追っかけている人は、.....少ないかもデス。
だって、画面には、ピンスポットの中での納棺の所作。視線はどうしても、こちらを追ってしまいます。(笑)

●例によって、お話の筋にはふれません。
ただ、主人公小林夫妻(本木雅弘、広末涼子)が移り住んだ、故郷山形の家というのが、“昔、両親が喫茶店をやっていた...”という設定なもので、ちょっと面白い造りなんですね。一階の、かつては店鋪だったと思われる部屋のたたずまいと、中央に置かれた三角形のテーブルが、新鮮でステキです。なにやらご飯がそれだけで、美味しそうに見えて....。アレ、良い!

●一言でいうならば、『見て損のない映画』

●蛇足かもしれませんが、劇中のあるシーンを見た時に、ハッと思い出したことがありましたので書かせてください。

実は、shizuatmさんとこのブックマークから、特殊清掃『戦う男たち』というブログを知り、以来、更新される度に、むさぼり読んでおります。
並外れた文章力で、読み始めたが最後、ぐいぐいと引きずりこまれて行きます。
特筆すべきなのは、その仕事の特殊性。(特殊清掃→いわゆる特別な死に方をなさった方の、ご遺体搬出後の部屋の清掃.etc.)

“文字”だから、読めるのでしょう。もしもこれが映像だったら、とても直視していられない。
そして現実には臭いや温度や空気感も加わる訳で....。
最初は、ヤジ馬根性です。ところが、段々と筆者の目線に感化され、影響され、筆者の言葉にうなずいている自分がいるのです。
なんとなれば、
筆者が、確かこんな事を書いてらっしゃいました。(原文を忠実にコピーした訳ではありませんが、大要としては...)
現場で最初で感じるのは嫌悪感。ただし、黙々と作業を進めるほどに、使命感のようなものが出て来て、そのうちに、死者に対するそこはかとない“いつくしみの念”を覚えるのだ..と。

●今日のこの映画の底辺に流れているものにも、同じ匂いを感じます。
なんと言えば良いのか、ある状態を突き抜けた時、やっと舞い降りてくるやさしい感情、..とでも言うのかしら。

●いつでも、誰でも、いつかは「おくりびと」「おくられびと」。何をか言わんや...、ただただ合掌。






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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ナルホド (wasaby)
2008-09-16 21:32:04
もう観に行かれましたか?
小生も行こうと日程を検討していたところです。
なかなか、好い映画のようですね。
観たらまた、感想を書いてみます。
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ぜひ...。 (ふりかけ屋)
2008-09-16 21:49:14
wasabyさん。

ぜひぜひご覧になってください。
wasabyさんのご感想を心待ちにして、新しいコーナーに目を光らせてます。
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お読みになりましたか (shizuatm)
2008-09-16 22:24:41
ふりかけ屋さんもお読みになってるのですね。
あれは生半可な気持ちでは読めませんものね。
でも、このような現実もあるってこと知っていてもいいのではないかと・・・・・。

お寺の子として生まれ育って、医療現場も経験して・・・・・でも、まだまだ知らない「送り」「送られ」はたくさんあるんですよね・・・・。世界中にも!
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報告なしで、あいスミマセン。 (ふりかけ屋)
2008-09-17 08:33:35
shizuatmさん。

あのブログは、いろんな意味でスゴイですね。
ほんとに良いブログです。教えて頂いて感謝してます。

もっとも、私なんか、自分の老い先を想像して、暗い気分になることもありますけどねえ。

そうでした。
>お寺の子として生まれ育って、医療現場も経験して・・・・
おそらく人の“生き・死に”を、うんと身近に感じていらしたはずですものね。
いやあ、shizuatmさんの人生も、....けっこうスゴイかも....!!
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見なくては (こきりこ)
2008-09-17 23:35:51
先日義理の兄が亡くなったときにこの納棺の儀式を見ました
とても粛然とそして手品のように行われる動作はそこにいるものすべてが一挙手一投足に目をうばわれ言葉を失ってしまうような時を過ごしました
死に直面し、しかしいまや遺体となった方を最後まで大切に尊敬の念を持って送ろうとしているという行為がいかに遺族にとって心やすらかなものかと実感しました
この原作の作家、監督も冨山の方ですがこの映画を作る際にはこちらのセレモニー関係のほうにも取材されたそうです
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本物を....! (ふりかけ屋)
2008-09-18 09:57:05
こきりこさん。

義兄さまのこと、お悔やみ申し上げます。ブログにおじゃましてそのことを知りました。

富山の方でも、納棺の儀式があるんですねえ。私はまったく知りませんでした。本物を目の前で....!!すごなあ。
映画じゃないんですものねえ。
いやあ、目を奪われ、言葉を失う...というのが分かります。

>.....いかに遺族にとって心やすらかなものかと

映画の中でも、そんなシーンがありました。ご遺族の方までが、とても穏やかで満ち足りた気持ちになってゆくんですね。素晴らしい伝統だと思いました。

そろそろ、「おばあちゃん」.....なんですね、こきりこさん。
楽しみですねえ。

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おくりびと (mayumi)
2008-09-18 15:56:38
私も バッチリ注目しております。
まだ、予定が立たないのですが...。
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Unknown (金さん)
2008-09-18 18:47:26
こんちはー。
実は私もずっと読んでる一人です。

最初けっこう衝撃でした。
いろんな仕事があるとは知っていましたが、すごい仕事を選択して、淡々と生活してる人がいるんだなぁと。
せめてチームで動けば救われる気もするんですが、一人が鉄則なのかしら…。

「死にかた」もあとのことを考えなきゃなぁ。
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Unknown (ふりかけ屋)
2008-09-18 20:15:33
mayumiさん。

これは見ておきたいと思ったので、私としては珍しく“午後6時45分~”の回に出かけました。(レイトショーはやってなかったス。)
ハーイ。mayumiさんが見逃す訳ありませんよね。チェックはしっかり入っていると思ってました。
けっこう“シャレた味付け”でしたよ。

金さん。

読んでましたか?
すでに、そうとうな数のコアな読者がいるようですけど。

>一人が鉄則なのかしら…。

そんな印象ですよねえ。でも、一人では処理できない事態もあるんじゃないかと思うんですが....、どうだったかなあ?? (案外、会社組織になってたりして。)

このブログ、そのうち単行本になるんじゃないスか?
売れそうだもの。
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勝手ながら (wasaby)
2008-09-23 17:47:08
ご迷惑かもしれませんが、拙映画ブログをTBさせていただきました。
「おくりびと」を観て来たので早速印象を書いてみました。ご笑覧あれ!!
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