降って湧いたように、「引っ越し」の話だ。
新聞の折り込み広告の、とある物件が、あまりにも安いので、半信半疑ながら見に行ってみた。
なにせ、土地八十三坪、4LDKの建物を建てて、1600万という値段はにわかには信じられない。
地図を頼りに、やったどり着いたそこは、見渡すかぎり稲穂が風に揺れる、茫々とした田園地帯で、値段は魅力的ながら住むにはあまりにも不便すぎた。ただ、それがきっかけで、理想にはほど遠 . . . 本文を読む
この十年、我が家はねこに占拠されている。
今日も今日とて、母の声が……。
「チャーミーがいない!もう2時間も帰ってこない。」
おろおろと、今にも泣き崩れんばかりである。
ため息を2度3度。これみよがしなのは、私に何とかしろと訴えているのだ。
「心配しなくても、そのうち帰ってくるよ。」
「でも、あの子がこんなに長く帰ってこないなんて、今まで無かったもの。どこかで死んでいるかもしれない、嗚呼。」
又 . . . 本文を読む