●高校の時、私は一冊の本と出会いました。小田実さんの「何でも見てやろう」。
おおげさでなく、私は、この本で変わりました。それほど、インパクトの強い本でした。
今でこそ、世界中のありとあらゆる情報が、連日ニュースとなって飛び込んできたり、自らも、“チョチョイ”とキーボードを叩いて、現地の情報をゲットできる時代ですが、当時は、そうではありません。小田氏の、地べたを這うような、体当たりの旅行記を、興奮しながら読みふけったものです。
●その中のインドに関するくんだり。......やはり衝撃的でした。
だけど、ただ“文字面”を追うのと、映像で見せられるのとでは、迫って来るものが違います。
昨日見た映画、「スラムドッグ・ミリオネア」は、一言でいうなら、...『強烈』....でした。
●カメラをどんどん引いて、引いて、...俯瞰でみせて行くスラム街のバラック屋根、...屋根、.....屋根...。
あの巨大なパッチワークを見せられただけで、圧倒されてしまいます。
全編、画面からある種のパワー光線が発せられているような気がして......。（笑）スラムで生きる人たちの、特に子供たちの“目力”なんですかねえ。
●強烈で、いささかショッキングなシーンも多くて、気分は必ずしもよろしくない。人間のいやな部分を、これでもかこれでもかと見せつけられて、エンデングが近づくにつれて、気分はどんどんネガティブになってしまいます。
●だから、だから........、あのハッピーエンドに、めちゃめちゃ救われる！
さすが、ハリウッド映画。...じゃなくて、イギリス映画なんですねえ、これ。
●間違いなく良い映画です。
ただ、もう一度見るかと聞かれると、「NO THANK YOU.」だなあ、わ・た・し。 辛すぎるんだもの。
でも、エンドロール前の、お約束の
「歌と踊り」。あれは楽しいから、また見たい。（←単純）
●余談ですが、私がいつも出かけるシネコンでは、この作品は上映の予定がなくて、友人とふたり、つくばのショッピングモール内の劇場に足を運びました。
待ち時間に、そのあたりのお店をひやかして、15000円のサンダルが良い、だの11000円のスカーフが好きだの、2800円のスパンコールのついたドレスは買いだのと...と、盛り上がっていたのですが、見終わって出てきた時には、すっかり購買意欲が萎えておりました。
「世界中には、ひとかけらのパンにさえありつけない子供たちがゴマンいるんだもの。」
「そうよねえ、こんなむだ使い、バチがあたりそうだものねえ、」（←単純）
●おとなしく帰宅！
分かります。
私自身も「好きな映画BEST○○！」って中には 入れないなぁ...と思います。
最近 けっこう立て続けに観てるんだけど、この2ヶ月くらいに観た中では、
『ミルク』が好きでした。
思ったんですが......。
もしも、私が、先にこの『スラムドッグ....』を見て、それから「グラントリノ」を見たとしたら....。
先日のマユミさんの「グラントリノ」のレビューと同じような後味を覚えたかもしれいないなあ....って。
本筋より、背景にあるもののスゴサが際立って、そのショックから抜け出すのにそうとう時間がかかりそうなんだもの。
まさに、強烈。
「ミルク」ですか。どんな映画でしたっけ？ちょいと調べてみましょ。
そういうスラムで生活している人たちにとって、外国で働けるぞ、仕送りできるくらい儲かるぞ、と言われれば、どんな不正ブローカーでもくいついてしまうのでしょう。
当地、何万人もの出稼ぎインド人がいます。
もちろんピンきりですが、スラムに比べたらちゃんと寝るところと食べるものがあれば十分なのかもしれません。
でも、実態はかなりひどいです。
空港に着いて労働場所のキャンプまで搬送されるのですが、そのバスやワゴン車は荷物と人をすごい状態で詰め込んでいます。
そしてオーバーワークでへろへろになったドライバーがとんでもないスピードでハイウェイを走り・・・・・・・目的を果たせないままになった痛ましい事故が後を絶ちません。
頂いたコメントのお返事を書こうとして、実は、一晩インターバルを頂きました。
実際に現実を見ていらっしゃるshaizuatmさんの言葉は、ズシリと響きます。
このコメントにあること自体が、映画のモチーフになっちゃうもの......。映像が浮かびますもの。
どう思いをめぐらしても、とどのつまりは、袋小路。or 迷路の中で一口に出口の見えない状態。
せつなくなります。
ともあれ、そこに生まれ落ちなかった我が身の幸せを、感謝するしかないのでしょうかねえ。