○方法俳句003・動逆転01・桂信子
○「ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ」(『月光抄』1949)(桂信子01)
○季語(ゑんどう・初夏)
【鑑賞】:作句方法の一つに「動逆転」というものがあります。本来動作できないものが動作する、というものです。次の句を挙げてみました。エンドウ豆を煮るのではなくてエンドウ豆が人妻へ煮えるのです。しかも人妻のために自らを柔らかくして煮えています。技法の中の擬人の要素も大きいのですが、ここでは小気味よく「動逆転」の機微を押したいと思います。
○桂信子(かつらのぶこ)(1914~2004)
○好きな一句:「ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜」(『月光抄』1949)02
○季語(螢・仲夏)
【Profile】:夫と二年で死別。新興俳句の→日野草城が主宰する「旗艦」の同人となる。戦後は会社に勤めながら、「青玄」などに参加。1970年に主宰誌「草苑」創刊。1977年『新緑』で第1回現代俳句女流賞。82年に句集『樹影』で蛇笏賞。99年に現代俳句協会大賞。03年第10句集『草影』で第45回毎日芸術院賞受賞。
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桂信子掲載句
03冬の暮板の間を踏むいくたびも(『新緑』1974)(冬の暮)〈次元28・反復(時間)〉2011/1/30
04外套のなかの生ま身が水をのむ(『女身』1955)(外套・冬)〈方法28・根源行動〉2011/2/3
05花冷えの壷が吸ひこむ母の息(『新緑』1974)(花冷え・春)〈方法37・動逆転3〉2011/4/21
06眼帯の朝一眼の濃山吹(『晩春』1967)(山吹・春)〈色彩38・濃2〉2011/4/27
07足音のひと現れず夏座敷(『緑夜』1981)(夏座敷)〈方法40・不明3〉2011/5/12
08しぼり出す新茶つめたき緑かな(新茶・夏)〈五感42・冷感3〉2011/5/23
09春の夢あまたの橋をわたるかな(春の夢)〈特集72・言葉=橋〉2012/4/13
10遠く去るものへ風吹き蕗の薹(『初夏』1977)(蕗の薹・初春)〈方法465・不明28〉2020/2/10
11緑蔭の奥の緑蔭男女ゐて(『月光抄』1949)(緑蔭・三夏)〈特集480・女や男の俳句1-9(男女)〉2020/5/29
12遠雷や山のかたちを山覆ふ(『初夏』1977)(遠雷・三夏)〈方法654・同質回帰35〉2024/6/26