秋=つまりAutumnという文字をI podの検索にかけて出てきた音楽を聴いてみる。
最近、自分で音楽を選ぶのが面倒になったときには、そんな風にタイトルから音楽を絞り込んでみる。
blue、moon、love、sunset、beautiful、summer、nightとか、タイトルにつきそうな、それでいて音楽の方向性が絞られるような検索をしてみると、思わぬ曲に出くわしたり、そうでもない曲が好きになったりすることがあるから面白い。
ちなみにautumnだと、僕は8曲しかヒットしなかった。「枯葉」が違うテイクで3曲ほど入っていたのでBill Evansの「What's New With Jeremy Steig」というアルバムからのものを聴いてみる。
さる人から頂いたこの曲は、ビルエヴァンスが少し苦手だった僕の意識を大きく変えることになりました。フルート奏者だろうか、エヴァンスともう一人のセッション。
『Autumn In New York』が聞きたくて検索したのだけれど、僕のIpodにはModern Jazz Quartetのややゆるめの歌なしのものしかなかったので諦め。
Yo La Tengoの「I Can Hear the Heart Beating As One」から『Autumn Sweater』を選択。
やっぱりいいなあ、ヨラ。夏の終わりから秋にかけて、この人達のゆらゆらしたベース音には、ほら、夏はもうすぐ終わってしまうんだよ、と声をかけられているようで、物悲しくも力瘤。
そんなことを考えながら、A地点に到着した僕は、雨がさらさらと降り続ける路上に放り出された。
家に電話をして迎えに来てもらいたいのだけれど、出発前にかけた時も、途中のパーキングからも電話は不在をお知らせしていて、どうにも混乱するのだ。
家に誰もいないなんてな、日曜日だというのに。
やや、諦めながらとぼとぼ暗い夜道を歩いていると、交差点の脇に見慣れないバーの灯りが見える。
ほう、これは渡りに舟とばかり、飛び込んでみる。
店内は、南海キャンディースのような男がカウンター内に一人。と、妙に目がぎょろぎょろとした不思議な感じの中年女性がカウンターの端でスパゲッティを食べている。
僕はやや迷って、カウンターに腰掛け、ジントニックを頼んだ。まあ、普通の味のジントニックだった。少なくともライムが入っている。
しばらくして僕は店の入り口に置かれたピアノについて山ちゃんに尋ねてみる。
すると山ちゃん、実はブルースが大好きで自分はギター奏者だが、最近はピアノを独学で練習しているのだと語る。ほう、なんと似つかわしくないことをするもんだ、山ちゃんのくせに。と思いながら興味深げにしばらく話していたところ、是非聞いてみてくれ、と山ちゃん自らピアノを弾き始めた。
突然のライブパフォーマンスに驚きつつも、なかなか悪くないそのスモーキーなピアノの音を聞いているうちに少し気分が良くなって、僕の体も少しゆらゆらとリズムを刻み始めてしまった。
そういう空気を感じとったのか、奥のカウンターでしばらくスパゲッティを食んでいた女も、私も特別に弾いてあげるわ、あなたは初めてだから特別にリクエストを受け付けてあげる、何がいいか。と頼んでもないのにリクエストをすることになる僕。
「それなら『Autumn In New York』なんてどうでしょうか、季節柄」と、僕が答えると、女はまだそんな季節じゃないわね、とか、もぞもぞいいながらも『Autumn In New York』を弾いてくれた。しかも、予想に反して歌までついていた。
歌はあまり上手ではなかった。でも、ピアノはまずまずでなかなか味がある感じだったので僕はジントニックを思わず一息に飲み干してしまった。
それが、どうもいけなかったのか、女が僕に酒を奢ると言い出した。いえいえ、そういう訳にはといいながらも、酒のすすめを断るのも礼儀に反するのでありがたく頂戴します、なんなら僕は最近バーボンばかりなので、バーボンであれば嬉しいな、というと、山ちゃん嬉々としてロックグラスいっぱいにフォアローゼスをついでしまい、わあ、嬉しいなと思う反面、俺帰れんのかな、と心配になってきまして、まあ、いいや、なすがまま、と思って居直りぐいっとやりました。
すると、女が、なにやらお前面白いからこれも飲んでみろ、と差し出されたのが「テキーラ」でありまして、ストレートテキーラにライムと、塩までご丁寧につけて飲めというので、ええ、飲みましたさ、いっきにね。口にライムをギュと搾って、えいや、とばかりに飲み干してやりました。
よくないですね、テキーラ。基本的に味わいのないお酒は飲まないようにしてるんです。酔いたいから飲むわけじゃないんです。お酒の味が好きなのです。
そんな僕の叫びもむなしく、酔いは急激に回ってくるんです。
電話貸して下さい、と言って借りた黒電話、黒電話?いまどき。
も、不在通知。
どうなってる家は??
やれやれ、と思っているうちになんだか客が一人増え、二人増え、僕は近所の水商売系のお姉さんと、ジャズボーカリストだと言う小太りなマダムと、フルモンティのガズ役をしたロバート・カーライルそっくりなカントリーミュージシャン三人の席に同席させられ、まあ、話は面白いけれど、僕は今日はゆっくりしたいんだと思うもむなしく、帰宅したのが深夜一時。
家には車も両親もいる。
一体、何だって電話にでないんだ、と僕が愚痴をこぼしたところ、いやいや、そんなはずはない、私達もお前からの電話をずっと待っていたのに連絡一つよこさないでどうなっているんだ、と返答され。
おかしい、おかしい、と思いながら電話をみると、
受話器が少しだけ外れてました。
という、僕の間抜けな数日間のお話でした。
長いことお付き合いありがとうございました。
では、また、いつか。
最近、自分で音楽を選ぶのが面倒になったときには、そんな風にタイトルから音楽を絞り込んでみる。
blue、moon、love、sunset、beautiful、summer、nightとか、タイトルにつきそうな、それでいて音楽の方向性が絞られるような検索をしてみると、思わぬ曲に出くわしたり、そうでもない曲が好きになったりすることがあるから面白い。
ちなみにautumnだと、僕は8曲しかヒットしなかった。「枯葉」が違うテイクで3曲ほど入っていたのでBill Evansの「What's New With Jeremy Steig」というアルバムからのものを聴いてみる。
さる人から頂いたこの曲は、ビルエヴァンスが少し苦手だった僕の意識を大きく変えることになりました。フルート奏者だろうか、エヴァンスともう一人のセッション。
『Autumn In New York』が聞きたくて検索したのだけれど、僕のIpodにはModern Jazz Quartetのややゆるめの歌なしのものしかなかったので諦め。
Yo La Tengoの「I Can Hear the Heart Beating As One」から『Autumn Sweater』を選択。
やっぱりいいなあ、ヨラ。夏の終わりから秋にかけて、この人達のゆらゆらしたベース音には、ほら、夏はもうすぐ終わってしまうんだよ、と声をかけられているようで、物悲しくも力瘤。
そんなことを考えながら、A地点に到着した僕は、雨がさらさらと降り続ける路上に放り出された。
家に電話をして迎えに来てもらいたいのだけれど、出発前にかけた時も、途中のパーキングからも電話は不在をお知らせしていて、どうにも混乱するのだ。
家に誰もいないなんてな、日曜日だというのに。
やや、諦めながらとぼとぼ暗い夜道を歩いていると、交差点の脇に見慣れないバーの灯りが見える。
ほう、これは渡りに舟とばかり、飛び込んでみる。
店内は、南海キャンディースのような男がカウンター内に一人。と、妙に目がぎょろぎょろとした不思議な感じの中年女性がカウンターの端でスパゲッティを食べている。
僕はやや迷って、カウンターに腰掛け、ジントニックを頼んだ。まあ、普通の味のジントニックだった。少なくともライムが入っている。
しばらくして僕は店の入り口に置かれたピアノについて山ちゃんに尋ねてみる。
すると山ちゃん、実はブルースが大好きで自分はギター奏者だが、最近はピアノを独学で練習しているのだと語る。ほう、なんと似つかわしくないことをするもんだ、山ちゃんのくせに。と思いながら興味深げにしばらく話していたところ、是非聞いてみてくれ、と山ちゃん自らピアノを弾き始めた。
突然のライブパフォーマンスに驚きつつも、なかなか悪くないそのスモーキーなピアノの音を聞いているうちに少し気分が良くなって、僕の体も少しゆらゆらとリズムを刻み始めてしまった。
そういう空気を感じとったのか、奥のカウンターでしばらくスパゲッティを食んでいた女も、私も特別に弾いてあげるわ、あなたは初めてだから特別にリクエストを受け付けてあげる、何がいいか。と頼んでもないのにリクエストをすることになる僕。
「それなら『Autumn In New York』なんてどうでしょうか、季節柄」と、僕が答えると、女はまだそんな季節じゃないわね、とか、もぞもぞいいながらも『Autumn In New York』を弾いてくれた。しかも、予想に反して歌までついていた。
歌はあまり上手ではなかった。でも、ピアノはまずまずでなかなか味がある感じだったので僕はジントニックを思わず一息に飲み干してしまった。
それが、どうもいけなかったのか、女が僕に酒を奢ると言い出した。いえいえ、そういう訳にはといいながらも、酒のすすめを断るのも礼儀に反するのでありがたく頂戴します、なんなら僕は最近バーボンばかりなので、バーボンであれば嬉しいな、というと、山ちゃん嬉々としてロックグラスいっぱいにフォアローゼスをついでしまい、わあ、嬉しいなと思う反面、俺帰れんのかな、と心配になってきまして、まあ、いいや、なすがまま、と思って居直りぐいっとやりました。
すると、女が、なにやらお前面白いからこれも飲んでみろ、と差し出されたのが「テキーラ」でありまして、ストレートテキーラにライムと、塩までご丁寧につけて飲めというので、ええ、飲みましたさ、いっきにね。口にライムをギュと搾って、えいや、とばかりに飲み干してやりました。
よくないですね、テキーラ。基本的に味わいのないお酒は飲まないようにしてるんです。酔いたいから飲むわけじゃないんです。お酒の味が好きなのです。
そんな僕の叫びもむなしく、酔いは急激に回ってくるんです。
電話貸して下さい、と言って借りた黒電話、黒電話?いまどき。
も、不在通知。
どうなってる家は??
やれやれ、と思っているうちになんだか客が一人増え、二人増え、僕は近所の水商売系のお姉さんと、ジャズボーカリストだと言う小太りなマダムと、フルモンティのガズ役をしたロバート・カーライルそっくりなカントリーミュージシャン三人の席に同席させられ、まあ、話は面白いけれど、僕は今日はゆっくりしたいんだと思うもむなしく、帰宅したのが深夜一時。
家には車も両親もいる。
一体、何だって電話にでないんだ、と僕が愚痴をこぼしたところ、いやいや、そんなはずはない、私達もお前からの電話をずっと待っていたのに連絡一つよこさないでどうなっているんだ、と返答され。
おかしい、おかしい、と思いながら電話をみると、
受話器が少しだけ外れてました。
という、僕の間抜けな数日間のお話でした。
長いことお付き合いありがとうございました。
では、また、いつか。