ねえ、大丈夫?無職のくせに過労死とか勘弁してよね。
あれ?ここは。どこだ?
何を寝ぼけたこと言ってんのよ、区役所の医務室よ。あんた自分の足で歩いてきて眩暈がするとかなんとかいって、無理を言って寝かせてもらったんじゃない。もう30分も寝てたのよ。
ああ、すいません、本当に。もう大丈夫そうなんで帰りますから。
彼女は区役所の女性職員さんにふかぶかと頭を下げて、僕を、きっ、とにらみつけて言った。
大丈夫でしょ、ほら早く靴履いてよ。
というわけで、僕らは二人で世田谷線に乗り込んだ。
日曜日の夕方の世田谷線は、家族の匂いがする。
それはいつものことだけど、彼女は怒っていた。
本当は嫌なんでしょ。コウカイしてるんでしょ。
いや、ぜんぜんそんなことないよ。ほんとに。
じゃあ、どうして自分の名前を書くときに気分悪くなったりするわけ?ほんっとに意味わかんない。だいたいそういうの失礼なの。アタシのキモチにもなってみてよ、区役所の係りの人だってびっくりしてたのよ。婚姻届書いてる最中に気分悪くなって寝かせて下さいなんて人ハジメテだって言われたのよ。ねえ、聞いてるの?
聞いてるよ、ちゃんと。
ほんとうは嫌なんでしょ。コウカイしてるんでしょ。名前なんて書きたくなかったのね。
そんなことないって。僕はホンキで名前書いたんだよ。「太陽」僕の名前は太陽だって。「めぐみ」に出会えて良かったなあ!ってホンキで思ったんだ!って。
ちょっと大声ださないでよ。名前に本気もなにもないでしょ。でもまあいいのよ。
その後、彼女はしばらく黙って大人しくなった。機嫌も悪くなかった。
夕暮れの路面電車は 静かに僕らを運んでいく。
二人はただおし黙って 窓の外の夕日を眺めている。
穏やかで ありふれた5月の日曜日。
たぶん、恥ずかしくなったんだろうな、僕はそう思ったけど口にはしなかった。
あれ?ここは。どこだ?
何を寝ぼけたこと言ってんのよ、区役所の医務室よ。あんた自分の足で歩いてきて眩暈がするとかなんとかいって、無理を言って寝かせてもらったんじゃない。もう30分も寝てたのよ。
ああ、すいません、本当に。もう大丈夫そうなんで帰りますから。
彼女は区役所の女性職員さんにふかぶかと頭を下げて、僕を、きっ、とにらみつけて言った。
大丈夫でしょ、ほら早く靴履いてよ。
というわけで、僕らは二人で世田谷線に乗り込んだ。
日曜日の夕方の世田谷線は、家族の匂いがする。
それはいつものことだけど、彼女は怒っていた。
本当は嫌なんでしょ。コウカイしてるんでしょ。
いや、ぜんぜんそんなことないよ。ほんとに。
じゃあ、どうして自分の名前を書くときに気分悪くなったりするわけ?ほんっとに意味わかんない。だいたいそういうの失礼なの。アタシのキモチにもなってみてよ、区役所の係りの人だってびっくりしてたのよ。婚姻届書いてる最中に気分悪くなって寝かせて下さいなんて人ハジメテだって言われたのよ。ねえ、聞いてるの?
聞いてるよ、ちゃんと。
ほんとうは嫌なんでしょ。コウカイしてるんでしょ。名前なんて書きたくなかったのね。
そんなことないって。僕はホンキで名前書いたんだよ。「太陽」僕の名前は太陽だって。「めぐみ」に出会えて良かったなあ!ってホンキで思ったんだ!って。
ちょっと大声ださないでよ。名前に本気もなにもないでしょ。でもまあいいのよ。
その後、彼女はしばらく黙って大人しくなった。機嫌も悪くなかった。
夕暮れの路面電車は 静かに僕らを運んでいく。
二人はただおし黙って 窓の外の夕日を眺めている。
穏やかで ありふれた5月の日曜日。
たぶん、恥ずかしくなったんだろうな、僕はそう思ったけど口にはしなかった。