歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

コミックス10巻

2005年03月23日 | ◆新刊読んだ!
「鋼の錬金術師」◆
10巻。

えっと。先に、枝葉末節に言及していい?
まずは雑誌派の誰もが思ったこと。
サブタイはそれか!「41話 小さな人間の傲慢な掌」
うん。雑誌掲載時、タイトル落としてたんだよ。や、アニメの最終回じゃないんだからさ。これが51話なら、粋なことを!って笑ってあげられるのにー。
これは、タッカーとニーナの回の「たった一人の女の子さえ助けやれない、ちっぽけな人間だ」から引く「小さな人間」だと思いました。エドだから小さな、じゃあないんだよー(笑)。あっ!それともそれまで含んでるのかしら?!

誤植ネタ、もひとつ。
「救護車」これ、雑誌掲載時は「救急車」でした。
誤植じゃなくて訂正なのかな? うん。確かにねえ。救急車って言ったら赤色灯ぴかぴかピーポーピーポー。鋼の世界にはちょーっと浮くイメージだもんね。軍のイメージにもそぐわないし、きっと訂正なんでしょうね。

こっちは純粋に誤植でしょう。
「神殿」クセルクセスの遺跡を見上げての。
これ、雑誌掲載時は「寝殿」でした。ファンサイト春酔庭の第40話感想で「『王国、科学、賢者』とくるなら王宮や宮殿、寝殿といった言葉も似合うわけで、」と秀逸な解釈をしてくださったのに、えーん、誤植でしたよシア様~(>_<)

それからね。私が一番、お!と思ったのはこれ。
「美人看護師」
そう。まだ一般的には「看護婦」って言いますよね? これは、意図的に、直してる。そして「看護婦」は訂正の余地がある単語だ、と気付いたのは絶対、女性だ。読者か作者か編集かは知らないけど(でもきっと編集じゃないよ)。
こら!誰だ。美人看護士?って……ガーフィールさんみたいな?!とか想像した人は!
あるいは、美人看護士?って……あ、あのキャラの白衣コスプレみたいなっ……!!とか、いや、気持ちは分かるけど分かるけど、違いますってば。
士、じゃなくて、師、ですからね?(でもじゃあやっぱり、美人な男性看護師だっていいじゃん?うん、いいねえ……)
あり?話題が逸れた。

この訂正を入れたのは、やっぱ作者なのかなー、と、ぼんやり思う。


さて!
枝葉の話はこのくらいにして。
本題の感想。

大佐大佐たいさーっ!!!

強い。早い。重い。生々しい。
ホムンクルスの異常な強さ。息をもつかせぬ展開。ラストと大佐という、大人の戦いの、重さ。ホムンクルスという存在の生々しさ。

すげえ!と思うのは。
38話、賢者の石の本当の秘密が暴かれ、ハボックと大佐が刺されるあの戦いのシーンでさえ、ボインとか湿気たマッチとか「うおおおお」とケツまくって逃げるコマとか、ギャグを入れる余裕とギャグが浮かない上手さなんだけど。
もっと、すげえ!って思ったのは。
その戦いでさえ、それこそギャグを挟む余裕のある、前振りだったってことだ!
39話の圧倒的な熱量!

ラストを倒すのは、大佐でなくてはならなかった。大人でなくては、ならなかった。ホークアイでさえ、小娘だ。殺すか殺されるか。容赦も迷いもそこに入る余地は無い。
血と肉から成る女の身体に手を突っ込み「核」を引き千切る。予告無しに弾丸を焔を浴びせる。「死ぬまで殺すだけだ」と冷酷に断言する。
ロイ・マスタングは、大人で男で軍人だ。

10巻はロイが何者であるかを焼き付けられた巻だった。
熾烈な戦いの直後、自身も重症でいつ殺されても不思議で無い病院という場所で、予想外の大物に怯むどころか「やり甲斐があっていいだろう」と子供っぽく楽しそうに笑うのも。



軍部VSホムンクルス。
私は、このストーリーのために、軍部のメンツは生まれたと思っている。
「戦力」のハボック、「記憶力」のファルマン、「通信」のフュリー、「戦略」のブレダ。
ハボックの飄々とした食えない憎めない性格も、ファルマンの真面目でちょっと情けないところも、フュリーの眼鏡もブレダの中年腹も、愛すべきそれらはきっと後付けで。それらによって、彼らは生きたキャラとして物語りを歩んでいるけれど。
きっと、芯は、「役割」だ。
だから、ハボックは、ここで倒された。
生き残ったのは、彼がイイヤツだからじゃない。
その方が、面白いからだ!
死者の楔(くさび)はヒューズ1人で十分だから。生者の錘(おもり)として、ハボックは表舞台から、一時、消える。
それらを背負って、それらを決意の力にして、ロイは「上」を目指す。
(ああでも、ハボックを生かしてくれて、ありがとう!)



バリーの最期。
彼は初めから、殺人者で犯罪者でだから死ぬ運命しかなかった。本筋にはからまない、コミカルな道化。
大佐の戦いもエドの決意も、すごく良かったけど、それは期待(=予想)の延長線上だ。
でもバリーの最期は、予想もしない描かれ方で、それこそ本筋とは別のところに、ぽこっとあってそれで終わり。
でも、だからかな。この巻で、一番印象に残ったのは、実はあのコマなんです。
あの肉体は、笑っていた? 私はそう思った。あの肉体に閉じ込められた魂はようやく開放されたのだ、と。
それについて、作者は説明しない。読者に放り投げただけ。きっと少年少女の読者には、通り過ぎるだけのコマだと思う。
でも、私は、ラストに殺されなかった、つまり最後までホムの掌に乗らなかったところ、けれどもっと大きな掌からは逃れられず、「殺したはずの自分の肉体に殺される」という恐ろしく皮肉な結末に、唸った。



息も出来ない緊迫感は、コミックスでも十分楽しめるけど。
私が雑誌派でよかった、と思うのは、「余韻」を楽しむことができるから。
空虚な穴を垣間見るようなバリーの最期から、大総統の台詞による生還の示唆、そして、ウィンリィ。
この、ウィンリィの「ばか!おかえり!」、すっごく、いい。
素直で、優しくて、甘えてなくて。ああもー、ウィンリィってかわいいなー!

ああよかった、ああよかった、ああ、面白かった。

余韻をしみじみ噛み締められるのは、連載ならではだもの。コミックスだとすぐに、ようやく出てきた主人公に視線がうつっちゃうもんね。



で、主人公。
そう。ニーナの回からの出来事を、ヒューズの死もロスの優しさもまだまだ子供であることも、全部受け止めて「前へ進む」と。
アルの「いやなんだよ!~我慢できない!」の叫びと呼応して。
少年はまた一歩、成長するんだ!

このシーンがね、かっこいいし、10巻だし、中締めだと思ってたんだ。私。
でも、違った。先月号のあのシーンこそが、中締めだ!新展開への助走がついたところであれを入れる。上手い!
え?コミックス派の人を雑誌派に転向させようって意図がミエミエ?えへへ~いいじゃん、連載、面白いんだもーん。

TB
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2 コメント

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誤植だったんですね~ (シア)
2005-03-24 01:04:27
私は「寝殿」でも良かったのですけど(;⌒▽⌒)

もっとも初めて雑誌を読んだ瞬間は、神殿ではないかと疑ったクチなので、大勢を考えると神殿なんでしょうが・・・。

10巻の大佐、ラストを倒したのが大佐だったという配役に、私も凄くシビレました// 特にあの「跪け」が!!!
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そーなんですよ (管理人)
2005-03-25 07:04:22
私もシア様の感想を読んでいなければきっと誤植にも気付かなかったと思います。

でも、確かに「神殿」ぽいですよね。あの壁画、すごく印象的。絵のチカラをこういうところでも感じます。



シア様の感想って、鋭くて軽妙で大好き!今月は「足りるかな」が、ツボでした。

まず自分(と身内)ありきのエドとか、自分の足で立ってるウィンリィとか、すっごく同意見です!そうして同じ視点でもシア様が書くとこうなるんだ!といつも楽しく拝読していますv
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