歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

鋼の錬金術師23巻感想つか分析つか、いやもう上手い!

2009年08月17日 | ◆新刊読んだ!
23巻!

読みましたか?読みましたね!
いやも、バトルバトルバトル!!
個々の話は別にして、私は今回も荒川弘の計算に感嘆ですよ。

23巻で、「話を切っている」所って、どこだと思います?
そう。真んまん中。
「もうしゃべらなくていいぞ エンヴィー」
1ページまるまる、コマを割らず、マスタングの手袋の錬成陣を見せ付けているところ。

見開きカラーを挟んで、次はセントラル市街の日常風景。
キャラのアップで締め、仕切りなおして物語り全体のロングカメラから始まる。
これは「話を切る」構成。

だから、「もうしゃべらなくていいぞ エンヴィー」
このマスタングがいっそう、恐ろしい。
その後の圧倒的火力の恐ろしさは、ここの印象の強烈さによって、さらに強まっているんだ。


4回の連載を、1巻の単行本でどう読ませるか。
その計算がもう、毎巻ほんっと快感だよ!
だって、単行本で読んでる人は絶対わからないでしょう?23巻一話目と二話目の境目。
ハインケルがゴキン、とキンブリーの首に噛み付いたコマまでが92話、同じ見開きの左ページが93話なんですよ。
連載ではゴキンで読者を驚愕させて締める。
単行本ではそのまま戦いを決着させ、サブタイトルページ「君は私の中で生き続けられるのだから」でゾクリと怖がらせてアル戦を終える。

ここもセリム影アップ→タイトル→市街でトラック走らせるロイ だから、「話の切れ目」。
普通ならタイトルに1ページ使ってページめくりをはさむでしょ?でも、それをしない。話の切れ目なのに敢えて見開きでつないでる。

何のために?
息をつかせぬために。
今までは読後のスッキリ感を重視して巻をまたがせなかったバトルを、今は巻をまたいでバトる。

そう。荒川弘はすでに、最終回の後、全巻一気読み読者の視点まで計算に入れて、月々の扉絵を配置している。
21巻から後は、明らかに構成が違っている。息をつかせぬバトルが続く。だーっと1本の話でつなぐことで読みのスピード感が上がる。
長い物語を、普通に読み始め、どんどん引き込まれ、だーっと読み終え、呆然と単行本の山を見返す・・・・・・未来に鋼に触れる読者のために、今、荒川弘は、1ヶ月1ヶ月、連載を積み重ねている。



それからね。
23巻を「ここで丸まる1冊、マスタングに費やすとは」という感想を述べてる方がいて。
ほくそえんでしまいました。
そう、ページ数からいえば、怒涛のマスタングは2分の1くらい。4分の1はアルで、4分の1はアームストロング姉弟。
でも、23巻はマスタングの巻。
うん、だって表紙からしてそうだもんね。
ううん。違うの。
表紙もそうだけど、違う。「マスタングの巻だ」と思うのは、その速度にある。
アルのバトルは早い。アームストロング姉弟のバトルも早い。
でも、マスタングの怨嗟の焔は、ねちっこく描く。
バトルの量ではなく、バトルに裂くページが多い。つまり、描写が重い。
重さ、は、印象だ。
ページ数が印象ではない。それは多くの人が知っている。でも、それを、毎月毎月の連載の中で操ってゆくのは至難だと思う。

エンヴィーの最期について語る感想も多い。これも背表紙カラーがエンヴィーだから、ではなくて。
エンヴィーが語る台詞もやたら長い。
鋼はページあたりの情報量がとても多い。荒川弘はすごく要領良く何がどうなっているかの説明をこなしてしまう。
そこに、エンヴィーの過去回想兼用な長台詞で見開き2ページ以上を費やすのは、冗長といっていいだろう。
何のために?
流れる時間を止めるためにだ。
読み終えたとき、印象に残るのは、エンヴィーの空疎な煽り台詞ではない。
エンヴィーが描かれた、という、その事実だ。

べらべらとしゃべるフキダシの活字には意味が無い。
ここは、見開き2ページで流れを止める。そこに意味がある。


だから、23巻はマスタングの巻、そしてエンヴィーの巻なんだよ!

そうして一旦立ち止まった後、前巻から続く(=息を付かせぬ)アームストロングらのバトルに切り替え、スピードを上げてばばん!と次回につなげる。

ぐあああーっ!
なんて上手いんだ!なんて上手いんだよ荒川弘っ!!!

ああもう、快感だぜ!



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2 コメント

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切れ目。 (アメショー)
2009-08-17 11:07:38
ここは雑誌で読んで、一話分の切れ目を知っていたはずなのに、気が付かずに読んでしまった・・・・恐るべし。
雑誌と同じ筈なのに、違った感覚で読める!
これってスゴイですよね(はぁ~!感嘆のため息。)

雑誌とコミック、両方読んでみないとわからないこともあったんだなぁ~と今更ながら感心!
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コメントありがとうございます。 (歌猫)
2009-08-19 07:23:45
アメショー様こんにちは!
そうそう。雑誌と違う感覚で読めるんですよね!雑誌を読みながらコミックス読みを夢想する、コミックスを読みながら全巻一気読みを夢想する。ほんと、鋼って楽しい・・・!
雑誌は雑誌ならではの面白さがあるんですよね。今月号の柱のアオリの懲りようとか、もう嬉しくて!!
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