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La ragazza del mondo di Marco Danieli イタリア映画の紹介「あっちの世界の少女」

2017-01-27 00:34:00 | 何故か突然イタリア映画
La ragazza del mondo あっちの世界の少女
監督 マルコ・ダニエリ

エホバの証人の世界を暴露と言っては言い過ぎ??




個人的にはかなり面白かった。
宗教とか心理学に、もともと興味があるからだと思う。

タイトル直訳の「(ある)世界の少女」とはいったいどういう意味なのかと思ったのだが、なるほど、そうか。。。
「一般の世界の少女」
「あっちの世界の少女」
のこと。
エホバの証人の世界から見れば、私たちは「あっちの世界」に生きていることになる。

宗教の世界は恐ろしい。
うまく作用すれば、これほど素晴らしいことはないのに、ちょっと間違うと恐怖の世界。
宗教という名の下に、殺し合いが合法化されてしまう。

さて、エホバの証人は、輸血を拒否する、という話で有名だが、キリスト教の中でも、かなり極端な一派だと思う。

バリバリエホバの証人の家族に育った娘、ジュリア。年の離れた妹がいる。
ジュリアは高校生で、クラスの中でもダントツに頭がいい。
大学進学を決めないといけない時期だが、エホバの証人では大学進学を勧めないので、親も進学を反対、父親の経営している家具会社で(単純な)事務の仕事をすることになる。

そのジュリアが、ドラッグの密売で捕まり、監獄に入れられていたことのある少年、リーベロに惹かれてしまう。
リーベロはかなり短気だが、心は優しい。この世界からは足を洗いたいという気持ちがある。

エホバの証人では、「あっちの世界の人間」とは、表面上の付き合いしかできない。
手を握るとか、ましては抱き合う、キスすることも絶対にダメ。
結婚は絶対に信者、それも結婚前に性交渉を持ってはいけない。

ところが、ジュリアが「あっちの世界の少年」に惹かれてしまった。

二人が抱擁しているのを、妹が偶然見てしまい、親に告げ口する。
エホバの証人の尋問を受けるジュリア。

こっちの世界に戻るかと思いきや、とうとうリーベロと逃げ出してしまう。

二人で住む家を借りるのに、昔の仲間に声をかけ、終いにはまた密売の世界に入り込んでしまうリーベロ。
警察に捕まりそうになった時に、持っていたドラッグを全部捨てたために、大きな負債を負ってしまう。

その大金を返すのに、いかにも真面目なジュリアが、密売に手を染める決心をする。

やっと借金を返せた時、実は、ジュリアの心は冷めていた。
別れを告げるジュリア。
リーベロは、ありったけのドラッグを飲み込み、救急病院に運ばれる。

リーベロは、おそらくもう一度留置所に入ることになるだろう。
ジュリアは「あっちの世界」に残ったまま、学業に専念することを選択する。

若い二人、全然違う二人がこれだけ惹かれ、ハッピーエンドかと思ったのだが、そうではなかった。

二人の演技が上手い。めちゃくちゃ上手い。
まだ若いのに、これから期待できる。

監督の(長編として)デビュー作。

「あっちの世界」に戻った元信者たちの協力を得、もちろん創造した部分はあるが、かなり事実にも基づいているのだそうな。

上映後の質問。
エホバの証人から抗議文など届かなかったですか?
なかった、というのが監督の回答。
しかし、間違った内容というか、映画だけをみて、勘違いした内容を書いた新聞記者には抗議文が届いたそう。

この映画だけ見るとかなり閉鎖的、特殊な世界に見えるが、実際にはそこまでではないらしい。
それでも、信者以外と結婚してはいけないわけだから、生まれた子供は「こっちの世界」にどっぷり浸かって育つ。

一番怖かったのは、ジュリアが、エホバの証人の幹部3人に尋問されるところ。
質問内容には爆笑なのだが、どっぷり浸かって育った身には、ほとんど恐怖。こわ〜
そして、迫真の演技。