こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』(夢枕獏)

2014-12-14 | ミステリー、ファンタジー
空海は、すでに、この世界を、宇宙という概念で捉えている。


(久しぶりの写真、失敗。すみません)
 1冊ずつ図書館で借りてのろのろ読んでいたので、手元にあるのはこれだけが、全4巻。といっても、
改行が多いのでざっくり読める。あとがきで、17年もかけて連載された物語であったことを知ってびっ
くり。しかも手探りと勘にまかせて書き進め、主要人物もその都度足していったという手法に2度びっく
り。もっとも、超人・空海を唐に配せば、それだけで荒唐無稽なストーリーができる気がするが、長恨歌
をからめることで話に哀感が生まれ、ふくらみが出たんだと思う。長恨歌、懐かしすぎる。学生時代、暗
記するように言われて最初の何行かでリタイヤしたというバカだが、さすがに1行1行見覚えがあり、あ
らためてその美しさに感じ入った。がんばって頭の柔らかいあの頃に全部覚えればよかったのに…と悔や
んでも後の祭り。以上、ストーリーには無関係。
 呪術のあたりのおどろおどろしさはちょっと苦手だったが、もともと妖怪ものは好きなので楽しく読め
た。(ま、妖怪じゃないけどね)天才・空海に、秀才なんだろうけど空海の前では情けないただの人・橘
逸勢を説明役に配したのがほっとさせるアクセント。しかしちょっと腐女子向け…?とうがった見方がで
きるところもあり、わたし的にはそーゆーのいいから!と思ってしまう。はい、ここ萌えどころですよ~
と言われてる気がして、けっという気になるのだ。(うがちすぎ)
 あと、早く恵果に弟子入りせんかとジリジリしてしまったりするのは、マッサンがウイスキーをなかな
かつくらないのにじれるのと同じ構図か© NHK。引っ張りに引っ張って、最後ちょっとご都合主義に終
わってない?と少々物足りない気も。全体に大味だなと思うのも、どうも宮部さんの繊細な描写にどっぷ
り漬かってしまっている所以かも。たぶんもう、空海がフィクションを超えて凄すぎるんだろうな。