お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

ベッドタイムのお気に入り

2011-03-11 | my Anthology

家族旅行の宿泊サービスとして、『お子さんにベッドタイムの読み聞かせをします』というFour Seasons Hotel (Chicago)のコマーシャル

『読み聞かせ』と言えばベッドタイム。お風呂に入って、パジャマになって、歯も磨いたし、さぁ今日は何を読もうかな? ひとりで歩けるようになるや、娘の日課には、ベッドに入る前に本棚に寄って、小さな両手にいっぱい「お気に入り」の絵本を抱えてベッドに入ることが加わりました。「もう一回(読んで)」と言いたくて、まだ回らない舌で一生懸命「もっかい!」「もっかい!」とせがんでいたのが昨日のことのようです。

1歳10ヶ月でアメリカに引っ越すことになったとき、娘の引っ越し荷物で一番重かったのは、絵本の入った段ボール箱でした。当時のベッドタイムのお気に入りの一冊は『どうぞのいす』。ウサギさんが椅子をつくりました。皆に座ってもらおうと「どうぞおかけください」と書いて森の小道に出しておきました。ところが・・・、次々に通りかかる動物たちは椅子の上におかれたプレゼントをうけとって、お返しをおいていき・・・。最後のウサギさんのひとこと「あれぇ、ドングリってくりのあかちゃんだったかしら?」が実にかわいいお話です。次はどうなるの?次は?と引き込まれる展開なのだけれど、胸がドキドキしたり、怖かったりはしないお話。でも、最後に、ちょっと意外で、クスクス笑える”落ち”がついている、まさにベッドタイムにぴったりの一冊でした。英語への翻訳版「Giving Chair」もあります。(ブログ記事:『併読のパワー:どうぞのいす』)

ベッドタイムの絵本には、とくに小さい子どもには、だんだん眠くなって時々とろっと目をつむりながら聴いていても気持ちのよい絵本を選びたいですね。それには、こみ入った物語よりも、むしろシンプルで短いテキストで、でも響きのよい繰り返しのフレーズがあったり、ライム(韻)が効いていたりする、「耳に心地よい」絵本が最適です。

そう思って見回すと、なんといっても永遠のベストセラーは『Goodnight Moon(おやすみなさいおつきさま)』でしょう。英語がわからない頃から、娘もなぜかこの絵本が好きでした。”Goodnight Fox, Goodnight Sox”というようなフレーズは、英語の韻がわからないと響きが楽しめないだろうと思っていたので、私はこの絵本の日本語訳は読んでやったことがありませんでした。でも英語で読んでみたら・・・英語がわかっても、この絵本の文章はそのまま読んでもほとんど「意味」をなさない、というか、読みようによっては、かなりシュールで幻想的なものだとわかりました。でも響きは実にきれいで、耳にはとても心地よく、そして、これも幻想的なイラストと相まって、ミステリアスなテキストには眠りを誘う効果があります。実際には、この絵本。イラストにも、テキストにもさまざまな仕掛けがあって、読み解き、絵解きにはかなりの教養が必要な絵本。昼間の明るい光の下で読むときには、ページごとに変化していく謎解きがたのしいイラストを丹念に見比べたり、テキストの引用の原典を考えたり・・・と、別の楽しさがあります(ブログ記事:『原語で読みたい絵本の古典」)。

夜の暗さと静けさが気持ちに染み入る絵本は『Owl Babies(フクロウのあかちゃん)』です。フクロウのきょうだい3羽が主人公。ふと目覚めると巣の外は真っ暗な夜。それなのに、巣の中にお母さんがいません。さて・・・3羽のきょうだいがお留守番の不安をまぎらそうと交わす会話が実に可愛いのですが、とりわけ末っ子のビリーが何を言われてもただただ「おかあさーん "I want mommy"」と呼んでいるいじらしさが子どもたちの共感をさそいます。だんだんつのってくるフクロウ兄弟の不安に、聴き手の子どもも共鳴して心配になてきたところへ、「あ、お母さんがかえってきた!」一言で、読み手も聴き手もほっと一安心。「おかあさーん」と呼びつつけたビリーが「おかあさんだいすき!"I love mommy"」とうれしそうに言って終わる結末に、幼い読者は自分自身の「おかあさん、だいすき!」を重ねて、心底ほっとして、安心して眠りにつきます。(ブログ記事:『おかあさーん』)

娘のベッドタイムのお気に入りは、どれも「耳に心地よい」絵本でした。くりかえし「読んで、読んで」とせがまれた絵本のひとつが『Caps for Sale』。頭の上にシルクハットを高々と積み上げて「帽子はいらんかねぇ(Caps for sale)」と村々を売り歩く帽子屋さんのお話です。以前このブログにも書きましたが(ブログ記事:『バイリンガル子育ての笑い話』)、娘はカセットテープのついた絵本を持っていて、やわらかい実ににやさしい声の男性の朗読を繰り返し聞きました。最後に「帽子はいらんかねぇ~ ”Caps for sale‥‥”」と呼ぶ男の人の声が、だんだんに遠ざかっていくのを聴いていると、娘ばかりでなく私まで眠気を誘われました。

もう一冊は『Tiki Tiki Tembo』。これもテープとセットになった絵本でしたが、テープがすり切れるくらい聴いた絵本です。中国の故事を翻案したと思われるお話は、ちょうど日本の『じゅげむ』のようなストーリ(ブログ記事:『中国人の名前が短くなったわけ」)。文字を追わずに耳から聴いていると、長い長い男の子の名前の繰り返しだけでも、かなり心地よいリズムになるお話で、適度に疲れているときは、思わず誘われて眠ってしまいそうです。

今週ご紹介した2冊は、どちらも「おやすみなさい」とささやきかける、まさにベッドタイムの絵本ですが、「おやすみなさい」の代わりに「I love you!(大好きよ)」と繰り返し言ってあげるのも、ベッドタイムならではの語りかけです。たくさんありますが、例えばトッド・パールのタイトルもずばり「I Love You Book」(ブログ記事:「大好き、大好き、大好き!」)、あるいは「I like it when...」も忘れがたい一冊です(ブログ記事『みんなだいすき!』)。





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