お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

学校の肖像権、子どもの肖像権

2011-03-21 | from Silicon Valley


パパラッチお断り……?
スタンフォード大学が、キャンパスの写真撮影について、新しいルールを打ち出して話題になっています。端的に言うと、プロのカメラマンによる商業写真の「無断撮影お断り」です。

日本では、「東大」と言えば「安田講堂」の写真が出てくるように、スタンフォード大学のキャンパスもさまざまなアイコンに満ちています。たとえばフーバータワーしかり、キャンパスの真ん中にあるメモリアルチャーチしかり。正門からこの教会に至る大きな椰子の木に縁取られたパームドライブや、大学の陸上競技場の練習風景なども人気スポットです。

大学はそもそも「教育と研究」のためのもの。商業利用のための写真撮影に応じるのはその目的にそぐわないというのが、長い間のスタンフォード大学の基本方針でした。だからといって、これまでは校内でカメラマンを厳しく取り締まったりしたことはありませんでした。ところが、今後は規制を強化しますよ、とばかりに「キャンパスにいらっしゃるのは歓迎しますが、三脚はご自宅に置いてきてくださいね」という方針を打ち出したのです。( "Stanford cracks down on paparazzi" San Jose Mercury News, 2/27/2011 )

これには「ちょっと困った‥‥」と感じるビジネスがシリコンバレーにも少なからずあるだろうと、話題になっています。大学進学のための「家庭教師します(private tutoring)」とか「進学相談にのります(college counseling)」などの私塾が明らかにスタンフォードの建物をホームページのイメージフォトに使ったり、スポーツ関連のウェブが大学の陸上競技場で走っている学生の写真を使っていたりする例は枚挙にいとまがないからです。これら既に無断で商業目的にした例をどうするかについては言及しないまま、スタンフォード大学は「観光の方はカメラをお持ちいただいてかまいません。でも、スナップをお撮りになったら、移動してくださいね」と言っています。

大学が大きな話題になるのは珍しいのですが、アメリカでは、生徒の肖像権と個人情報はかなり厳密に守られています。最近は学校もホームページを整備してウェブでマーケティングや情報提供に努めるのが当たり前になりました。紙のメディアでも、さまざまな行事のためにポスターを作ったり、広報紙・機関誌を発行したりもします。また時には、外部メディア、例えば新聞や雑誌の取材を受けることもあります。

そんな場合には、「お子さんの写真が一般に公開されるメディアに載ってもよいですか?」と学校から保護者に問い合わせが入ります。聞き方は厳密で、「紙のメディアなら載せてもよい」あるいは「ウェブにアップしてもよい」から「名前が出なければ(写真だけなら)よい」さらには「写真も名前も出してはいけない」まで、何段階にも分かれた細かな質問に答えて、許諾範囲を明確にするよう求められるのです。18歳までは、これは保護者の権限です。この許諾は厳密に守られていて、たとえば新聞が学校の記事を報道するときに、授業風景を移した写真を出す場合「3年生教室で算数を学ぶ女子生徒(保護者の要請により匿名)」などと表記されます。

子どもの場合は厳密にプライバシー保護のためなので、大学が商業目的で大学の肖像権が浸食されるのを防ごうとするのとは、やや意向が異なる気もしますが、いずれにしても、学校が肖像権に厳格に対処しようとしていることは確か。でも、無料で何でもウェブに公開できるこの時代。厳格であろうとするのは、なかなか難しいことでもあります。



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