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うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

百舌鳥魔先生のアトリエ  小林泰三  うな

2015年11月06日 | 読書感想
いろんな場所に発表していた短編に書きおろし二編を加えてまとめた短編集。


『ショグゴス』
南極にあらわれた謎の不定形生物群。それは正確には寄生生物と宿主の二種に分けられるとわかった大統領は、寄生生物だけをロボットによって駆逐しようとするのだが……

いつものクトゥルーネタ。
ショゴスと古のものの関係を小林泰三流に描いたもの。
それを人間とロボットにあてはめて読者の価値観を揺るがす会話劇から定番のオチにつなげる、なんというか安心の小林泰三味という感じの小品。

『首なし』
火災から助けてくれた恋人は、その際に頭部のほとんどを失い、しかし奇跡的に生命活動を続けていた。
彼女は恩人である彼と結ばれるが……


首なし状態で生きているというトンデモなシチュエーションをトンデモな理論で詳細に描き、いやあないやあな空気を続けていやあなオチがつくという、いやあな意味で綺麗な短編。この短編集の白眉。

『兆』
自称フリーライターがいじめられて自殺した中学生の取材をはじめのだが、取材はまったくうまくいかず、やがで恐ろしい事実にまきこまれていく


ずいぶん前に読んだ。
中編で、初読時の感想は忘れたが、帯に短したすきに長しを地で行くような作品で、自称フリーライターの惨めさとじわじわと追いつめられていく展開は良いのだが、特に発展性もなく予想通りに終わるので、短編でスパッとやるか長編でもっと締め付けるかして欲しかったなあ、という感じ。

『朱雀の池』
京都を眺めていた男は、気が付くと第二次大戦の米軍にいた。
自分の言動が空襲の行方を変えると気づいた男は、なんとか京都を空襲から守ろうとするのだが……


そうなるんだろうなー、と思ったとおりにうまくいかない話だが、著者特有の相手に意味をずらされていく会話劇を楽しむものとしていたって普通の作品。

『密やかな趣味』
セクサロイドがありきたりな存在となった近未来。
彼女は己の欲求を叶えるためにアンドロイドを派遣してもらうのだが……

なんのひねりもなく普通にグロくてエグいだけ。
エグいのもグロいのもいかんとはいわないが、それだけというのはさすがにちょっと……
オチで一応ひねっているのかもしれないけど、それどっちでもいいというかとってつけたようなというか……

『試作品三号』
敵を探す鎧の男は少女と出会う。
少女はいう。「妖怪にみんなやられちゃった」と……


序盤からの展開の唐突さが小説にしかできない悪ノリ感に満ちていてよいが、その後の展開自体は想定の範囲内というか、いつものアレだった。


『百舌鳥魔先生のアトリエ』
絵画でもない。彫刻でもない。そんな芸術を、妻は百舌鳥魔先生なる人物から学んでいるらしい。
妻の芸術探求はエスカレートし続け……


デビュー作『玩具修理者』から連なるタイプの正統派小林泰三作品という感じ。
会話劇で、グロで、読者の価値観を揺らがせ、語り手にオチがつき……と、本当にオーソドックスな小林泰三って感じ。
ただ『玩具~』とかに比べるとちょっと薄味か。
悪くはないはずなんだが、もはや自分がこの作者に慣れきっているせいか。
「アッハイ」という感じだった。
モズマってのはよく知らなかったけど、検索してみた感じだとクトゥルー系じゃなくて、昔の有名な創作妖怪なのかな?


全体的にグロ成分が高めだが、いつもの小林泰三が盛られている感じだった。
が、どうも最近、この作者の文体に自分が合わなくなってきたのか、単にやり口に慣れてしまったのか、あんまりのめり込めない。
基本的にはグロよりもSF成分強めの方が面白いかなーと思うんだが、最近、グロに頼りすぎてない?
わいにとって小林泰三のグロはピンポイントだとなかなかいけるけど、全編それでこられるとゲップがでるだけなんですよね……


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