goo blog サービス終了のお知らせ 

ディック スギ の写真の世界(The World of Dick Sugi’s Photos)

📷このブログでは写真全般の話題を取り上げていきます📷

廃墟写真事件を考える

2019年11月14日 | 写真家の話題
昨日のブログで丸田祥三さんの写真集「棄景」を紹介しました。
これを書く際にネットを見ていたら、丸田さんが提訴した「廃墟写真事件」が目に止まりました。
ディックはこれで、そういえばあったなと思い出したのでした。

これは丸田さんの廃墟の写真と解説文を模倣されたとして、写真集を出版した職業写真家に対して、類似した写真と文章の発表差し止めを求める訴訟を起こしたものです。
写真及び文章の著作権の侵害が争われた事件です。
結果的には最高裁まで争い、いずれも丸田さん側の敗訴で2012年に決着しました。

丸田さんは、ネットで類似している自身と相手側の写真を対比して提示しています。
ディックも今回これを見てみましたが、それらの写真が極めて類似しているかどうかと言われれば、全く別物に見えました。
撮った対象は同じなのですが、そもそもアングルが違いますね。これを模倣と言われると、写真家ともしても辛いかなと思います。

廃墟など、既に存在するものを撮影する写真は、自分で演出する写真とは違い、あるものをどう切り取るかという点に尽きます。ここに撮影者の個性が出る訳ですが、こうした被写体は撮影のポイントも限定されることもあるので、意識しなくても似た作品になることは珍しい事ではありません。

前に出た他人の写真集を見ながら、それとそっくりな写真を撮って、全体的に似せた写真集を作れば、著作権侵害になるかもしれませんが、こういった元々存在する被写体は、著作権侵害を主張するのはなかなか難しい感じがしました。

丸田さんは廃墟写真の第一人者であり、その後の廃墟ブームにのって、他の写真家が同種の写真集を出してきたことに対して、第一人者の立場として、いろいろと不快な思いをされたことがあったのだろうと推察します。

「棄景」は丸田さんの個性が写真に現れた秀逸な写真集だと思います。この訴訟の結果でこれが揺らぐものでないことは言うまでもありません。

この判決は、写真の模倣(著作権侵害)を考える上で、判断を示した貴重なものといえます。

※ 木村剛大弁護士の「写真著作権-「似ている」と「侵害の距離」」(https://www.artlawworldjapan.net/blog/photograph)が、「廃墟写真事件」も取り上げて、写真著作権についてとても分かりやすく解説されていたのでここで紹介します(ここに上記の丸田さんが双方の写真を比較したものが転載されています)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 丸田祥三写真集「棄景」、「... | トップ | The SNAP »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

写真家の話題」カテゴリの最新記事