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ディック スギ の写真の世界(The World of Dick Sugi’s Photos)

📷このブログでは写真全般の話題を取り上げていきます📷

「先客万来の 中古カメラ店ガイド」(本の紹介 11)

2025年03月22日 | 本の紹介

今回取り上げる本は

「先客万来の 中古カメラ店ガイド」(田中長徳 著 アルファベータ 1996年(平成8年)3月刊)

「先客万来の 中古カメラ店ガイド 第二版」(田中長徳 著 アルファベータ 1997年(平成9年)9月刊)

です。

 

20世紀末に起こった中古カメラブームは、1993年(平成5年)ころにその存在が発見され、1999年(平成11年)にはピークを迎え、2003年(平成15年)ころまでには終息したとされます(これについては、本の紹介③で取り上げた「ブームはどう始まり どう終わるのか」(中川右介 著 岩波アクティブ新書96 2004年(平成16年)1月刊)が詳しいです。)。

最近、ディックは、自身も大きな影響を受け、中古カメラという領域に踏み込んだ、この中古カメラブームを振り返るとともに、その盛り立て役の一人であった田中長徳氏を改めて注目しており、カメラジャーナルや当時出版された田中長徳氏の著書を時折目を通しています。

 

この本は、まさに中古カメラブームの真っただ中で、購入先となる中古カメラ店が注目される中、中古カメラ店を巡る便に資するために、中古カメラ店の全国的なガイドブックがあったらという要望があり、それにこたえ、出版されたものです。

1ページ1店舗の紹介で、このデータは所在地、電話番号、営業時間、定休日、創業念、取り扱い商品、売り場面積、カードの利用の可否、買取と通信販売の有無、雑誌広告、修理、保証期間、特徴の記載があり、知りたい情報がほぼ網羅されています。また、希望する店舗は、メッセージも記載されています。

それ以外にも、チョートク本らしく、有名店の写真やインタビュー、「中古カメラ店の快楽」などのエッセイ、各種レポート、読者の推薦の店などの読み物も充実しています。

翌年には、改訂版(第二版)が発売され、初版の286ページから384ページに大幅に増えました。新たに収録されたお店も増え、これだけでも、当時の中古カメラブームの熱気が伝わってきます。

掲載の写真や読み物もリニューアルされています。

 

ディックは、第二版を購入しました。

こうしたガイドブックは、年月が経つとデータが古くなり、当時の資料的価値はあるものの、通常は使用は難しく、多くは処分される運命にあります。

第二版も発売から25年以上はゆうに過ぎて、ここに掲載されていた多くの中古カメラ店は姿を消しました。でも未だ健在の店もあり、ブーム後も生き残ってきた苦労を乗り越えたところに感動を覚えます。

この本の価値は、当時の中古カメラ店の資料的価値の外に、読み物の存在だと思います。これは当時の当時の熱気が伝わってきて、当時を知るディックをワクワクさせるものがあります。

かなり後年に、初版も手に入れて、読み物を再読しました。2冊を揃える価値はあると実感しました。

初版は「カメラジャーナル新書3」 第二版は「カメラジャーナル新書10」

 

初版の冒頭のギャラリー形式のコーナー 懐かしさが漂ってきます

 

初版の「カメラ店の店内はどうあるべきか」のコーナー

 

第二版の「はじめに」 この後も年1回の改定が予定されていたようですが、実現されず

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安原製作所 回顧録(本の紹介 10)

2024年08月16日 | 本の紹介

安原製作所 回顧録(安原伸 著 枻文庫)
2008年1月刊

安原さん1人のカメラメーカー「安原製作所」の立ち上げから、安原一式、2号機の秋月の販売を経て、その終わりまで(1997年~2004年。振り返ってみると、わずか7年程度です。)を回顧録として記した本。

安原一式は、1998年10月にネットで試作機発表されて以後、時の中古カメラブームの状況にも正にまさにはまり、立ち上げの特異性ととも、とても話題になったこと(取材が殺到し、多くのメディアで取り上げられましたが、安原さんはその取り上げ方に違和感があったようです(P132参照))は、当時写真に接していた方には記憶に刻まれているのではないでしょうか。

カメラを一人で企画から販売まで行うという、通常考えられないことを実現してしまったというストーリー自体、興味深いもので、それを本人が説明してくれるので、この時をリアルタイムで知っているカメラファンなら面白くない訳がありません。

ディックもこれまでに、何回か読んでいます。しばらくすると読みたくなるのです。

その時のカメラ業界や販売されたカメラの状況にも触れられており、そうした点もよく分かるので、フィルムの時代末期からデジタルに移行しつつあった当時を知らない方には、その時代の空気を知ることができる格好の読み物だと思います。

 

〇 枻出版社は写真関係の本も多く展開していたので、写真好きには注目の出版社でしたが、2021年2月に民事再生法が適用され、出版業務は終了してしまいました(多くの雑誌は他社に譲渡されました。)。文庫本は引き継がれなかったので、この本も絶版になっています。とても残念なことでした。

 

📸【無断転載禁止です(Unauthorized reproduction prohibited.)】📸

 

 

 

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カメラは病気【本の紹介⑨】

2024年08月13日 | 本の紹介

カメラは病気(和久俊三・田中長徳 著 光文社文庫)
1998年12月刊

副題「あなたに贈る悦楽のウイルス」

これは、作家の和久俊三さんが本格的に写真もやっておられ、使うための膨大なカメラ、レンズを所有していることから、田中長徳さん御一行が和久邸に伺い、それを見ながら、その機材に関する話題を出発点に、写真にかかる多岐にわたる話題の放談を1冊にまとめたもので、光文社文庫の書下ろしになっています。

田中長徳さんお得意の中古カメラの話題に尽きる展開にはならず、話がかみあっていなようで、また、あちこち脱線しながらも、お互いの写真観が色濃く出ていて、今読んでも面白いの一言に尽きます。当時田中長徳さんとタッグを組んでいたアルファベータの中川さんがうまくまとめたものと感心します。

和久俊三さんのお付き合いのあったカメラの代理店、カメラ屋、当時のメーカー、写真雑誌に対する歯に衣着せない発言は、かなり辛辣な表現もあり、ここまで書物で言ってもいいのかなと思う場面もありました(これは、写真業界がメインでない和久俊三さんならではの感があります。)。当時の状況がよく分かるシーンもあり、それには懐かしさも感じました。ただ、今になっても変わらず役立つ話題も多いです。

表紙は赤瀬川源平さんのダリ風のイラストがとても目を引きます。

前世紀末に発生した中古カメラブームからはや20年以上が過ぎ去り、和久俊三さん、赤瀬川源平さんは鬼籍に入られました。

この本は色あせることなく存在します。お勧めの1冊です。

参考になる箇所は付箋を貼っています

 

目を引く表紙です

 

ドイツにいる時(1999-2000)に、デュッセルドルフに出向いた折に、日本の本を扱っている本屋で購入。シールはマルク表示。これもよい思い出になっています。

 

📸【無断転載禁止です(Unauthorized reproduction prohibited.)】📸

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じゃない写真 現代アート化する写真表現 【本の紹介⑧】

2022年11月21日 | 本の紹介
久しぶりに「本の紹介」シリーズをアップします。
まだまだ紹介したい本は多くあります。これからも少しずつ展開していきます。

今回紹介するのは
渡辺さとる著「じゃない写真 現代アート化する写真表現」(2020年1月刊 梓出版社)

最近の写真の一つの流れとして、現代写真というカテゴリーがあります。それは、これまでのよい写真という概念ではなかなかとらえられないものです。それは、現代美術と呼ばれるカテゴリーが難解なのと通じるものがあると思います。
その現代写真をどう理解したらよいかを筆者の渡辺さとるさんがコラムという形式で分かりやすく解説してくれます。

このコラムを読んでいくと、現代写真が何かイメージが湧いてきます。
この本からディックが理解した現代写真の特徴としては、以下のものがあげられます。
・ 写真から主体を排除し、画面に中心がない写真(これはニューカラーにも通じるものがあります(ホンマタカシ著 たのしい写真、同3での説明が分かりやすいです))。それは見る人にその写真の見方をゆだねることになる。写真の解像度を低くする流れも生じた(プロヴォーグの流れ)。
・ 展示は個々の写真を順番に従って見せるのではなく、場所の特性を活かし、空間全体を使って見せる手法
・ 見る人に展示した写真を分かってもらおうという意図は重要でなく、見る人もわかる必要はなく、とまどいを楽しむ

この特徴は、現代美術にも共通するものが多いのだろうと思いました。現代写真は、現代美術との境界がなくなったものともいえるのではないでしょうか。

また、写真教育の話題にも言及されており、日本の写真学科は、教える内容は40年前と変わりがない(大型カメラの撮影実習と暗室作業が写真の基礎として重視されている)が、欧米では、職業としてのアーティストを社会に送り出すことが目的で授業が行われている(マーケット参入、助成金獲得、そのためのレターの書き方などが中心)という根本的な違いがあること、ただ、欧米の授業が必ずしもベターとは言い切れない(これによって写真の表現が画一化してしまう傾向にある)ことも興味を引きました。

後半は、渡辺さんのカメラマンから写真家、作家に移行していった自伝。現代写真との関わりも絡めて、このパートは面白く読めました。ディックは、渡辺さんとほぼ同じ年代(ディックが3歳下)なので、その時代時代の写真を巡る背景も共感を持って読むことができました。

この本を読んで、ディックにとってとても参考になったことがありました。
幻と言われている伝説のプロヴォーグの雑誌が、2018年に二手舎から完全復刻されていたことを知ったこと(まだ流通していたので、ディックも入手できました!)、2016年に東京都写真美術館のリニューアルオープンで開催された杉本博司氏(写真家の範疇を超えた活動をされています。日経新聞の2020年7月に「私の履歴書」で取り上げられました。その時の肩書は現代美術作家となっています。)の「ロスト・ヒューマン」展の一部で、ほとんど写真の展示がない展示が行われたことを知ったこと(ディックも見たかったです。これは図録を購入。)。

読後には現代写真が何なのか分かった気がするのですが、頭になかなか定着しないので、一定の期間が経つと、また読んで内容を再確認したくなります。何回も読む価値のある本だと思います。


※【本の紹介⑥】
大竹昭子 著「眼の狩人」(1994(平成6年)10月刊 新潮社(その後、ちくま文庫として2004年1月刊))
同著「彼らが写真を手にした切実さを」(2011年(平成23年)6月刊 平凡社)
【本の紹介⑦】
ホンマタカシ 著 「たのしい写真 よい子のための写真教室」(2009年(平成21年)6月刊 平凡社)、同著 「たのしい写真3 ワークショップ編」
にも現代写真に通ずる記述があり、合わせて読むとより理解できるように思いました。


◎ これまでの「本の紹介」は、カテゴリーの「本の紹介」を選択するとまとめてみることができます


気になる箇所に付箋がたくさん貼られています









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「たのしい写真」 「たのしい写真3」 【本の紹介⑦】

2019年11月18日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
ホンマタカシ 著 「たのしい写真 よい子のための写真教室」(2009年(平成21年)6月刊 平凡社)
同著 「たのしい写真3 ワークショップ編」(2014年(平成26年)1月刊 平凡社)
です。

この本の内容は、写真家ホンマタカシさん(1962年-)による誌上写真教室ですが、技術的なことが書いてある訳でないところが、普通のノウハウ本とは違います。

写真とは何かを考えることによって、写真の本質に迫り、それによって自分の撮影スタイルを振り返ってみる。そして自己の撮影する写真の質の向上につなげ、あるいは新たな撮影ジャンルに挑戦するきっかけとする。そういう目的の本だとディックは理解しました。

ディックは、この本に大いに触発されました。またとても勉強にもなりました。
お勧めの本です。
知識として押さえておくといい写真の歴史にも触れられていますし、新しい写真の流れも紹介されていて、少し難しいかもしれませんが、初心者の方が読んでもとても参考になると思います。

なお、「たのしい写真2」は、「PORTRAIT」という題名で、市川実日子さんの写真集の構成になっており、1,3とは毛色が違う構成の本です。



「楽しい写真 よい子のための写真教室」
は、1講義編 2ワークショップ編 3放課後編 4補修編の構成です。

講義編では、「決定的瞬間」、「ニューカラー」、「ポストモダン」について触れられています。

ワークショップ編では。実際に行われたワークショップを基に記載されています。
ディックが興味深かったのは、自分の好きな写真を選んで、その成り立ちを説明し、それと同じ構造の写真を撮影するというものです。これは勉強になると思いました。

放課後編は、いろいろな話題のエッセイで構成されています。ディックは、「謎の山岳写真家寅彦、現る!」が好きです。



「たのしい写真3 ワークショップ編」
は、実際に行ったワークショップをベースに記されたものです。

ホンマさんは、写真は、情報を手軽に伝えるだけのものではなく、もっと魅力的かつ奇妙な、そして時には不思議な曖昧さを味方につけたきわめて現代的なメディアと考えており、それをもっと多くの人たちに知ってもらうために、このワークショップを始めたそうです。
このワークショップは、写真撮影の技術的なものを学ぶのではなく、一般教養のレベルで写真の理解を深めるもので、撮るだけでなく、見る、読むなどの視点から、写真というものを探っていくというものであることが、この本に記されています。

構成は、1写真家はこれまでどんなワークショップを開いてきたか? 2ホンマ式ワークショップ 3ニューカラーの写真を撮ってみよう 4今日の写真について 5対話 表現と教育 個人と社会
となっています。

このワークショップでは、決定的瞬間、ニューカラー、ポストモダンな写真を参加者が実際に撮ってみて、その作品を通じてホンマさんとやりとりをしながら理解を深めていくという流れになっています。また、それぞれについて知識付与としての説明も記載されています。

ポストモダンな写真の新たな流れとして、自分で写真を撮らずにネットから写真を収集して自分の作品を作るというのは、とても興味深かったです。著作権が問題にならない範囲で行う必要はあるでしょうが、「写真=自分で撮る」というのは固定観念であることを気づかされました。

こうしたワークショップなら参加してみたいと思いました。








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「眼の狩人」「彼らが写真を手にした切実さを」 【本の紹介⑥】

2019年10月31日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
大竹昭子 著「眼の狩人」(1994(平成6年)10月刊 新潮社(その後、ちくま文庫として2004年1月刊))
同著「彼らが写真を手にした切実さを」(2011年(平成23年)6月刊 平凡社)
です。

「眼の狩人」は「戦後写真家たちが描いた軌跡」とのサブタイトルがあるように、戦後の主だった14人の写真家の活動を、本人の取材や発表された作品を基に綴ることにより、戦後の写真史がどういったものなのかをみていく(振り返っていく)という狙いがあります。
また、写真とは何か、ことばと写真との関わりはどういったものか、ということも考えさせられる内容になっています。

元々は芸術新潮の連載で、それをベースに単行本化されたものです。
取り上げられている写真家は次のとおりで、そうそうたる面々です。
東松照明、長野重一、森山大道、中平卓馬、比嘉康雄、奈良原一高、高梨豊、柳沢信、渡辺眸、藤原新也、深瀬昌久、荒木経惟、桑原甲子雄、篠山紀信

大竹さんは、写真家や写真評論家ではなく、幅広い分野に関わっている文筆家です。
自身も撮影を通じて、写真にも相当な思入れがあったことから、連載を引き受けることになり、この期間はほぼこの執筆に集中したそうです。写真集には発表時の写真がすべて掲載されていないので、当時のカメラ雑誌に掲載されているバックナンバーをすべて見たとの苦労話もあとがきに載っています。

この文章を読むと、この作家のそれまでの活動の流れが理解できるとともに、どのようにして写真に向き合ってきたかということが伝わってきます。とても臨場感がある文章だと思いました。
これに著者の写真にかける強い思いや、写真というカメラを介在した特殊な芸術の謎に切り込む決意のようなものがベースにあることが伝わってきて、とても文章に引き込まれました。

ディック自身は写真史を体系的に学んだこともないので、著名な写真家のそれぞれの活動自体が目新しいものでした。そうしたこと自体を知ることができたのも、とても参考になりました。



「彼らが写真を手にした切実さを」は、「眼の狩人」の続編的なもので、「日本写真の50年」というサブタイトルが付いています。

最初のプロローグ「写真のなぞ、写真家のふしぎ」は秀逸な文章だと思います。写真と写真家について頭の整理になります。
ここでは、日本写真について、次のような記載があります。
「写真とは、生命とマシンと外界とが三つどもえになったバトルの現場である。感情や無意識の領域をもかかえ込んだ、混とんとした人間のありようそのものと向き合おうとする意志なのだ。外界にカメラをむけずには何も写らない写真では、現実と肉体のコンタクトがほかのジャンル以上に強く直接的になる。こうした写真の傾向を本書では「日本写真」と呼び、現在、活動する写真家の仕事にそのエキスを抽出してみたい。(P17)」

本書では、日本写真の前提を踏まえるために、前書の森山大道、中平卓馬、荒木経惟、篠山紀信の文章を再録し、新しい世代の次の写真家を取り上げています。

佐内正史、藤代冥砂、長島有里枝、蜷川実花、大橋仁、ホンマタカシ

ディックともより近い世代の人々になっています。
写真活動や写真に対する考え方について、それぞれ個性的なところがあって、興味深いものがあります。

エピローグには「日本写真について考える」という章があります。
ここでいう日本写真は、テーマを設けずに日常的に写真を撮ることに意味を見出すものであるということと、言葉に置き換えることを意図して写真を撮っていないという一つの流れが戦後を通じて日本にあるということが理解できました。

二つの本はこれまでに何回も読んでいますが、間が空くと(内容を忘れかけると)また読みなくなります。自身の写真活動について考えるヒントをくれるような気がします。
お勧めの本です。










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「銘機礼讃」シリーズ 【本の紹介⑤】

2019年10月07日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
田中長徳 著 「銘機礼讃」(1992年(平成4年)10月刊)、「銘機礼讃2」(1996年(平成8年)11月刊)、「名機礼讃3」(2007年(平成19年)12月刊 いずれも日本カメラ社から出版)、
です。
※ 田中長徳さんについては、第2回「間違いだらけのカメラ選び」も参照ください

日本カメラの連載と書きおろしで構成されたカメラのエッセイをまとめたものです。
取り上げられたカメラのほとんどが、現在は販売されていないカメラです。いわゆるクラシックカメラも多いです。
メジャーなカメラだけでなく、マイナーなカメラも登場し、長徳さんの扱うカメラの幅の広さやクラシックカメラに対する知識の豊富さが伝わってきます。

このエッセイは、取り上げたカメラにまつわる長徳さんとのふれあいや想い、長徳さんと関係している方のエピソードなどが記されており、長徳さんのワールドに引き込まれます。カメラ愛が伝わってきますね。
そのカメラの使用法や使った感想も出てきますが、これは脇役的な扱いになっています。
また、軽妙な文章も注目すべき点です。カメラを題材にした文学作品といってもよいのではないでしょうか。
タイトルも目を引くもので、素敵だと思います。

「銘機礼讃」が出版されたころにクラシックカメラ(中古カメラ)がブームとなり、1994年ころからこのブームにはまっていったディックは、「銘機礼讃」シリーズでもいろいろなカメラを知りました。そういった面でも参考になった本です。

ディックにとって一番印象的なのは、やはり最初に出た「銘機礼讃」ですね。最初のエッセイは長徳さんも気合が入っており、それが文章に現れているということもあるでしょうし、読んだディックもその文章が新鮮だったこともあるでしょう。もちろん。クラシックカメラ(中古カメラ)がブーム自身の盛り上がりということも多分に影響していると思います。

「名機礼讃3」は「銘機礼讃2」から11年後、クラシックカメラ(中古カメラ)がブームが既に過ぎ去った後に刊行されました。
長徳さんはほぼずっと日本カメラで連載をしているので、ネタは十分あった訳ですが、それまでに取り上げたカメラが多いので、登場するカメラがさらにマイナーになったり、切り口を変えた既出のカメラということで、本が売れるかどうかという点でなかなか出せなかったのかもしれません。
2までは定期の連載物はすべて掲載してしていますが、3ではチョイスされています(前作から年月が経っているので、すべて取り上げるのは元々不可能ですが)。

3の出版からさらに11年が経過しました。そろそろ4も期待したいです。

クラシックカメラの話は年数が経っても古くなりません。クラシックカメラ(中古カメラ)が好きな方、過去のカメラが活躍した時代に触れたい方にこれらの本はお勧めです。




いずれも筆者紹介の欄にご本人の写真がありますが、「銘機礼讃」と「銘機礼讃3」の写真では、15年の経過が窺われます。
「銘機礼讃」の登場時は長徳さんは45歳(ディックと比べると、若いと思ってしまいます。ちょうどいい時期にクラシックカメラ(中古カメラ)ブームが重なった感じですね。)、「銘機礼讃3」の登場時は60歳。現在は70歳を超えられましたが、これからも長く活躍していただきたいです。
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FOCAL FAST FIXED サンダー THE 大口径単焦点主義者 【本の紹介④】

2019年09月25日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
「FOCAL FAST FIXED サンダー THE 大口径単焦点主義者」(サンダー平山 著 トレヴィル 1997年(平成9年)9月刊)
です。

サンダー平山さんは、写真機家を名乗って、新製品のカメラのレビューや撮影技法のノウハウの記事をカメラ雑誌を中心に紹介したり、写真家としては、女性のポートレート写真を中心に活躍されていました(自称ネイチャン派カメラマン)。
また、クラシック(中古)カメラやレンズの収集家でもありました。これに関する記事も多く書かれていたので、当時はいろいろと参考にさせていただきました。

カメラ雑誌等で活躍されていたのは今から15年から20年前までのことで、それ以降は表立った活動は見られなかったため、どうしたのだろうと思っていたら、2011年9月に病気でお亡くなりになっていました(アサヒカメラ2011年12月号の「写真家のイマをリアルに追う 写真家探偵ノート」(p192)にサンダーさんの記事がのっていて、これでディックはご本人がお亡くなりになったことを知りました)。

ディックも以前は、撮影会中心でしたが女性のポートレート写真も撮っていたので、サンダーさんの写真や撮影のノウハウの記事などを興味を持って拝見していました。写真家としてはやはり女性のポートレート写真は秀逸だと思います。

ご本人の風貌は独特のもので、迷彩服を好んで着ておられたこともあって、一度見たら忘れられない印象を与えてくれていました。

サンダーさんは、カメラ撮影のノウハウ本を中心に出版されていますが、この本はそれらの本とは性質が違います。
サンダーさんが写真に興味を持ってから,プロの写真家になるまでの写真やカメラにまつわる出来事が一つの柱の内容で、その時々の自身の人間関係(恋の話も)も触れられていて、自叙伝的な内容にもなっています。
もう一つの柱がカメラやレンズ(大口径レンズ)の論評です。発行年が1997年なので、登場するカメラはフィルムカメラオンリー(1996年登場のニコンF5が、最新鋭のカメラとして出てきます)なのは、懐かしいというかこの点は時代を感じさせます。
カメラ愛だけでなく、サンダーさんの内面の感情がひしひしと伝わってきて、相当な力作だと思います。
今でも好きな本の1つです。

なお、出版元のトレヴィルはセゾングループの美術書の出版社(発売は同系列のリブロポート)でしたが、本体の経営が傾いたことで、1998年にセゾングループの出版事業はリブロポートともども終了しました。









本に記載されている著者の紹介
くだけています
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ブームはどう始まり どう終わるのか 【本の紹介③】

2019年09月10日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
「ブームはどう始まり どう終わるのか」(中川右介 著 岩波アクティブ新書96 2004年(平成16年)1月刊)
です。

この本は、ブームとヒットの違い(本書では、「ヒット」は特定の商品が成功した時に使われ、「ブーム」は単なるヒットを超え、ひとつの社会現象にまでなったことをいうと定義されています)を明確にした上で、ブームの始まりから終わりまでにどののような現象が発生するか、その特徴は何かが記されています。

ブームというと、ディックは「たまごっち」や登場時の「iphone」,プロ化直後のJリーグ,
盛り上がったころのAKBなどが思い浮かびます。
ただ、最近は大きなブームはあまりないように感じます(本書でも、バブルがはじけた後は、「マイブーム」を求めるようになって、大きなブームは少なくなり、「静かなブーム」ばかりが起きるようになったとの記載がありますが、これは、この本の発刊から15年経過した今でも変わらないと思います)。

著者は「アルファ ベータ」という出版社の代表取締役兼編集長をされておられました(2014年に会社を引き継ぎ、アルファベータブックスが創設)。クラシックカメラ(中古カメラ)がブームであることを認識した後に、写真家の田中長徳氏と組んで、クラシックカメラの書籍を中心に出版社を切り盛りし、そのブームが終焉を迎えてその方向から撤退するという実体験をベースに書かれています。
そのため、それから導かれる法則の記載もありますが、とても説得力があるように思います。

本書では、一時期盛り上がった、クラシックカメラ(中古カメラ)ブームを振り返って、そこからブームというものを紐解いています。
クラシックカメラ(中古カメラ)ブームは、筆者によると、1993年(平成5年)ころにその存在が発見され(本書によると、ブームは作られるものではなく、発見されるものとあります)、1999年(平成11年)にはピークを迎え、2003年(平成15年)ころまでには終息したとあります。

ディックも1994年ころには、中古カメラにはまっていったので、まさにこのブームは肌で感じたものでした。
そのため、クラシックカメラ(中古カメラ)ブームのその時々の状況が本書に出てきますが、もうかなり前のことになるのに、その情景が頭の中に浮かんできます。とても懐かしいですね。
当時のクラシックカメラ(中古カメラ)ブームを知らない方には、このブームのイメージがつかめる資料にもなると思います。

この本を読んで印象に残ったのは、ブームにのって展開していると、終焉を迎えた時に撤退する判断が難しいということです。ついつい何かと理由をつけて、ずるずるといってしまいがちになるようです。
アルファ― ベータ社は、最終的に写真関係の書籍等の出版からは撤退してしまいました。これ自体は、傷口を深くしない潔い経営判断でしたが、同社が発行していた月刊誌「カメラジャーナル」もこれとともに唐突な終刊になってしまっただけに、もう少し延命してほしかったという思いは当時は強かったです。

ブームという漠然とした概念を整理して理解できる好書だと思います。
※ 岩波アクティブ新書は2004年12月に終刊になっています


写真とは関係ありませんが、中川氏の著書として、「松田聖子と中森明菜」(幻冬舎新書2007年刊、朝日文庫2014年刊(増補版))があります。同時期のアイドルとしての二人の活躍を作品をも通じて描かれており、二人の曲をよく聞いていたディックとしては、とても懐かしかったです。二人を対比させて描いたアイデアもよく、お勧めの本です。




アクティブ新書の表紙のデザインは目をひきました


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間違いだらけのカメラ選び 1993 【本の紹介②】

2019年08月19日 | 本の紹介
今回取り上げる本は
「間違いだらけのカメラ選び 1993」(田中長徳 著 IPC 1992年(平成4年)12月刊)
です。

この本も、時代は違いますが、前回取り上げた「誰も言わなかったカメラ術」同様、カメラメーカーにおもねることなく、著者の視点でカメラの評価をしている本です。
このタイトルは、当時知名度のあった「間違いだらけのクルマ選び」にあやかったものとのことです。

田中長徳氏は1970年に日大芸術学部写真学科を卒業後、写真家として活躍されています。
特にメジャーになったのは、20世紀の終わりころに突如クラシックカメラ(中古カメラ)がブームとなり(一説には1993年から2003年ころまで)、その特集が雑誌などでなされましたが、その企画の多くに関与したり、さらに自著の出版によって、すそ野の広がったクラシックカメラファンを中心に知名度が高まったことによります。

長徳氏は、クラシックカメラ好きで、しかも多くの機種を実際に使っておられたことから、その知識がとても豊富だったことが、そのブームの流れととてもマッチしたのでした。
特にアルファベータという出版社で「チョートクのカメラジャーナル」という雑誌を主宰し、そのアルファベータから多くの著書と写真集を刊行し、クラシックカメラブームを盛り上げました。

さて、この本の前半は、当時のカメラの話題と各カメラメーカーの最近の動向について30のテーマが挙げられています。
これを読むと1992年当時の状況が頭によみがえってきます。

後半は、全体の3分の2弱を割いて、110のカメラについて長徳氏の論評が掲載されています。
挙げられている機種は現行機種だけでなく、販売が既に終了したカメラやクラシックカメラまでも網羅しているのが面白いところです。
これは、現在販売されているカメラの購買の参考になるという範囲を超えており、ちょうどブームになりつつあったクラシックカメラ購入にも役立つという副次的効果(著者は意識していたのだと思いますが)もあって、より幅広い層の支持を得た(よく売れた)ものと思われます。

長徳氏は文筆家でもあり、カメラの論評といっても、単にスペックや使い勝手を淡々と紹介したものではありません。それぞれのカメラのエッセイになっています。そこには、独特の長徳節が現れており、その文章に引き込まれていきます。
そこにあるベースはカメラ愛ではないでしょうか。
この当時の長徳氏は勢いがあり、それが文章の切れとなって、現れているように感じます。

ディックは、ちょうどクラシックカメラに興味を持ちつつあった1994年秋ころにこの本を購入しました。この本によって古いカメラを知り、欲しくなったものもいろいろと出てきました。
かなりディックも長徳氏に感化されたのですが、この本の影響力は大でした。

この本については、当初は時期がきたら新版が予定されていましたが(あとがきに記載があります)、IPCがなくなり、その後、アルファベータから同様の内容の本(表紙の装丁は異なります)が復刊されただけで、なぜか新版は出版されずにこれのみとなってしまったのは残念です。
長徳氏がその後より多忙になってしまい、この新版に手を付けられなくなってしまったのが原因なのでしょうか。




これは第5刷。IPC最後の刷です。
帯の色がこの刷から、以前のピンクから青に変わったとか。



定価は1900円(税込み)。当時でも高めの本でした。
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