HORSE SENSE を 往く ≫≫

 この道は いつかきたみち

  このみちを また駈ける

   このみちは 心は遠い ・ ・ ・ ・ に

『あさかぜ号』

2013年02月26日 | Horse
寝台特急〝あさかぜ号〟が山陽本線を初めて走ったのは小六の時だった
学校裏門からの登下校道が山陽本線と交差し 二人がすれちがえるくらいの
小さな陸橋が架かっていた 陸橋の床はコンクリート版を並べたもので
手摺りは胸くらいまでしかなく低く 鋼製柵で足下に障害物はなく丸見えだった
S駅からおよそ7~8キロメートルの位置にあり つぎの停車駅まで加速する地点で
少し左寄りカーブから真っすぐに驀進して来る
漆黒の蒸気機関車と横線入りのやや青味がかったモダンな車体がまぶしかった

橋の真下の列車は手がとどきそうなくらいで 黒煙と白い蒸気を吐き汽笛を鳴らして通過して往く
その蒸気と黒煙が交じりあって濛々とした中に 歓声を上げ跳び込んでゆくのがスリルと楽しみで
時には小石を投げたりする子もいた そのころ列車の窓は開けることができ
子どもたちの歓声に手を振って応える乗客の顔もはっきり見えた
昼休みが待ち遠しく陸橋まで駆けて行くことも何度かあり 時には先生もいっしょに行った

もう時効と思うが あるときは線路(柵はなかった)の中に入り小石を置いたり
当時貴重だった五寸釘を並べ列車通過後 ぺしゃんこになった釘にヤスリを掛け
砥石で研ぎ柄を付け 形と切れ味をくらべ合った
この五寸くらいが、持ち歩きにちょうどよい大きさのナイフになった