2011年08月18日 asahi.com
県は17日、県産米の放射性物質検査を始めた。県内では土壌や大気から高濃度の放射性物質が検出されていないことから、県や関係業界は汚染はないと見ており、むしろ、「新潟ブランド」を守る手だて、との位置づけだ。ただ、安全性を十分にPRできるかや、ごく微量でも検出されたらどんな反応が出るか、といった不安も残っている。
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柏崎市西山町の農業村松稔夫さん(69)の水田で17日、県内で最も早くイネの刈り取りが始まった。
4月に田植えをした早生品種「越路早生(こし・じ・わ・せ)」の水田4ヘクタールのうち30アール。黄金色の稲穂が垂れる水田にコンバインが入り、約1時間で約1500キロのもみを収穫。乾燥、もみすりを経て19日に放射性物質検査のためのサンプルを採取し、同日以降に結果が公表される。
「放射性物質はゼロじゃないと困る。『基準値以下』では誰も買わない」。越路早生のほか、コシヒカリも作る村松さんは複雑な表情を浮かべた。「見えないし、においもなく、色もない放射能にどう対処していいのか全くわからない」
JA柏崎管内で越路早生は126ヘクタール作付けされ、うち104ヘクタールは8月中に刈り取る。順調なら27日に関東地方や県内で店頭に並ぶという。渡辺吉隆常務理事は「安全性が証明されると期待している」と語った。
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コメの放射性物質検査は、農林水産省の方針に基づいて県が行う。
調査地点は任意に決めてよいが、県は水稲を作付けしていない粟島浦村を除く29市町村すべてを対象とし、計45地点を定めた。
まず、対象は早生品種の玄米。作付面積の広い自治体に加え、福島第一原発事故の直後に一時、大気中で比較的高い放射線量が検出された阿賀町や南魚沼市で地点数を増やした。
1地点ごとに、たんぼ1枚のすべての稲を刈り取って玄米に。うち約2キロを抜き出し、民間調査機関で放射性セシウムが出ないかを検査。8月末までに調査を終える予定だ。
9月上旬からは、県はコシヒカリを主力とする中生(なか・て)品種も29市町村で各1地点ずつ、独自調査。知名度の高い「新潟コシ」の検査結果を消費者にアピールし、ブランドの信頼性を維持する狙いだ。
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国の定める玄米の放射性物質の暫定基準値は1キロあたり500ベクレル。基準値以上が検出されたら、検出地点がある市町村のコメはすべて出荷・販売が禁止され、廃棄処分となる。
県による4月の土壌調査では県内5カ所でのセシウム検出値は土壌1キロあたり最高30・5ベクレルと基準値(5千ベクレル)を大きく下回った。そのため、玄米から検出される可能性は極めて低いとされ、スーパー県内最大手の原信ナルスホールディングス(長岡市)も「安全宣言のための調査と認識している」との受け止めだ。
昨年は猛暑で県産米の1等米比率が過去最低の23%に落ち込んだ。そのトラウマを抱えるJA全農にいがたは「県は調査結果を示し、安全性をいち早くアピールしてほしい」。県の藤山育郎・農林水産部副部長は結果を素早く公表して安全性をアピールしたい考えだ。ただ、ごく微量でもセシウムが出た場合、消費者や農家がどう反応するのかは気がかりだという。