旧刊時空漂泊

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アルプスヒマラヤからの発想

2014-07-06 09:38:14 | 日記
朝日文庫
1992年7月1日 第1刷発行
著者 藤田和夫
発行所 朝日新聞社
        
 地球科学者、藤田和夫がユーラシア大陸の変動帯を「鳥の目」的視野と「虫の目」の観察
によって実行したフィールドワーク。
舞台は・・・・白頭山を越えて満州へ
        白色地帯――大興安嶺探検
        インダス峡谷の旅
       カラコルムからヒンズークシへ
       アルプス縦断旅行
       地上900キロから見た中央アジア
       日本砂山列島
       雲南地震紀行
       寧夏地震紀行
       西夏王国
       タクラマカン砂漠をめぐる山やま
       日本列島ヒマラヤ論

 本書の末尾に「日本列島はヒマラヤである」という章があります。

       日本列島が古典的アルプス造山運動論では説明できないことが、いまや明白になってきた。
      さらにもうひとつ日本列島についての認識がはっきりしてきたことは、それが海面上に姿をあら
      わしているのはせいぜい三千メートル程度にすぎないけれども、水深五千メートルの太平洋の
      海底からみれば、それは八千メートル、海溝底からみれば一万メートルをこえる一大山脈であ
      るということが最近の詳細な海底調査で明らかになってきたことである。このような視点でみる
      と、海面下をふくめた列島の延長は北海道から九州まで二千キロ、幅は日本海溝から日本海
      まで500キロ、これはグレートヒマラヤ山脈に匹敵する。地向斜概念が消滅し、海溝で沈み込
      むプレートの圧縮による付加体が隆起したものとして褶曲山脈が理解できるようになった現在、
      全貌を陸上にあらわした日本列島としてヒマラヤをみると、いろいろ興味深い類似点がみいだ
      せる。        (中略)
       東北日本まさに太平洋プレートが日本海溝にそってもぐりこむあたりに生じた島弧であるのに
      対して、西南日本は大陸の一部のような性質をもっている。しかしよくみるとその南には太平洋
      プレートの一部といってもよいようなフィリピン海プレートがあって、南海トラフとよばれる浅い海溝
      にそってもぐりこみ、西南日本を南から圧縮している。その方向に直角な断面をとってみると、フ
      ィリピン海の海底の深さが五千メートル、それから南海トラフの七千メートルあたりまでいちど下
      がるが、次いで多くの大規模な逆断層で区切られながら一気に浅くなって、二千メートル付近に
      海段とよばれる平坦面のひろがる階段状の地形があらわれる。この深海の平坦面は、この段上
      に西南日本の沖合五〇キロあたりにそれと平行に東から西へ熊野海盆・室戸海盆・土佐海盆な
      どとよばれる海底の盆地が配列し、それらが第四紀層によって埋めたてられたものである。この
      海段から、大逆断層をともないながら陸上に姿をあらわすのが四国や紀伊半島であるが、この海
      底の部分をくわえた西南日本の南北断面は、インドからヒマラヤにかけての断面とまことに似てい
      る。トラフの部分はインド平原にあたり、海段上の盆地はカトマンズやポカラ盆地などの山間盆地
      に相当する。それらの比高も似かよっているし、盆地を埋める地層の時代まで似ている。西南日本
      は海面から頭をだしたヒマラヤといえる。   (367~369頁)

 日本列島は海底にそびえるヒマラヤであり、日本人はヒマラヤ山中の高地に暮らしていることになります。
昔、造山運動の説明のところに地向斜という言葉が出てきたのを憶えています。ただ地向斜がどうして起きるのかが
わかりませんでした。
そのうちに地向斜という言葉が使われなくなり、プレート理論が登場しました。地質学におけるこの大きな革命を
教科書ではきちんと解説しているのでしょうか。
 本書の結論は日本列島を考えるには、アルプスから太平洋まで視野にいれる必要があるということです。

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