旧刊時空漂泊

さまざまな本・出版物がランダムに現れます。

日本の選択 7 「満洲国」とラストエンペラー

2014-06-08 12:56:22 | 日記
角川文庫
NHK取材班 編
平成7年8月10日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

       


 「満洲国」の成立以降、アメリカは日本に対して強い疑念を持つようになります。
そのアメリカが「満洲国」を撮影した映画があるという記述が「厳秘会見録」に残されています。
「厳秘会見録」は皇帝溥儀の会話を通訳林出賢次郎が記録したものです。
         
     アメリカ映画社からの、執政溥儀への取材申し込み。
     四月一日の執政と武藤大使との何気ない会話が、私たち取材班を意外な方向へと導いていった。
     溥儀の会話によれば、米国フォックストーキーとの会見日は、四月三日である。
     溥儀のいう「フォックストーキー」とは、当時の「フォックス映画会社」であった。
     「フォックス映画会社」は、一九三五年(昭和一〇)に、「20世紀映画会社」と合併して「20世紀
     フォックス映画会社」となったが、最盛時の一九二九年には、アメリカ映画の四〇パーセントを製
     作する、ハリウッド最大の映画会社であった。溥儀は、フォックス会社のニュース映画部門、ムー
     ビートーン・ニュースの取材に応じたのであった。
       
      ニューヨーク・ブロードウェイの近く「20世紀フォックス映画会社」のフィルムライブラリー。
            (中略)
     「あいにくですが、あなた方の探している一九三三年のムービートーン・ニュースは、以前、倉庫の
     火災で焼けてしまいました」
            (中略)
     「ただ、サウスカロライナの大学に、火災以前に20世紀フォックスが寄贈した『満洲国』のフィルム
     があるはずです、調べてみたらいかがですか」
     彼は親切にこう教えてくれた。              (159~160頁)
     
そして取材班はサウスカロライナ州の州都コロンビアへ。

      町の中心部にある、州立サウスカロライナ大学に、ムービートーン・ニュースは、たしかに保存さ
     れていた。
             (中略)
     サウスカロライナ大学は、戦後積極的にアメリカの記録フィルムを収集してきたのだという。
      大学が保存していたのは、ムービートーン・ニュースの捨てカットフィルム、つまり撮影後、編集
     によって一本のニュース映画に仕上げるとき、都合で使用しなかったり、必要部分を抜きとった残
     りのフィルムであった。
       若い社員の言葉どおり、20世紀フォックス社は、一九六三年に、このカットフィルムを大学に
     寄贈した。          (中略)
      サウスカロライナ大学の「満洲国」に関する映像の主なものとしては、次のようなものがある。
     一  一九三四年三月一日 皇帝戴冠式の日の溥儀
     二         四月一日 戦没日本兵追悼式と菱刈軍司令官
     三         四月五日 満洲国軍閲兵の溥儀
     四         四月七日 満州国皇帝と小学児童
     五         五月七日 満州国ボーイスカウトと溥儀
     六  一九三五年四月六日 溥儀の天皇訪問

      取り立てなんの変哲もない見出しであるが、映像からは、上映されなかった捨てカットであるだけに、
     かえって「満洲国」の舞台裏の表情が、トーキーの音声の迫力を伴いいきいきと迫ってくる。
                                            (160~162頁)

「満洲国」の映像と音声、体感してみたいものですね。「満洲国」の成立は日本を孤立させたのですから、
日本の生命線と言われた「満洲国」は日本の命取り、ガンとなったようです。