つわわわわ

上半身が球体に近づきつつある男の、特になんともないブログ

四本目「ダクト」

2014年04月09日 04時22分59秒 | 怪談
ある女性の話。

彼女は都内の小さな劇場を中心に役者として活動している。

ある舞台公演の本番前のこと。
彼女は舞台上に仰向けになるような形でストレッチをしていた。
劇場の天井には照明機材を吊すための長いバトンや、空調ダクトが設置されていたが、
ストレッチをしている彼女のちょうど真上のダクトの陰から、
幼稚園児くらいの男の子がひょっこり顔を出した。
男の子はニコニコと笑いながらこちらを見下ろしている。
数秒見つめ合っていたが、男の子はニコニコしたまま、またダクトの陰に隠れてしまった。

そこに人間のいられるスペースはない。