からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

Bryan Ferry - Slave To Love (Live in Lyon)

2022-07-11 | 小説
Bryan Ferry - Slave To Love (Live in Lyon)



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Little Freak  サンタラ




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(ちんちくりんNo,86)

「で、どうするの」

「別の作家、元々候補に挙がっていた作家に頼もうかと思っているのだけれど、それもね……。日数もないしどうかと」

「そうか、新聞小説となれば毎日の連載だ。ある程度の原稿が出来ていないと、続かないしな」

 裕子の目を見ると、今度は怒りの炎のようなものが見えた。そうか。多分裕子は作家が逃げた先に気が付いていたのだろう。作家は一行も書けないことに悩み、結局はデビューからずっと書いている出版社の担当に相談する。担当はそれなら行く先はこちらから用意しますので、そちらに暫くいて下さいと……。そんなことをすれば、業界での作家の信用は丸つぶれだ。出版社にしても同じだ。しかしそれを敢えて決行したということは、侮られたのだろう。―どうせ田舎の新聞さ、と。それと、これは本当に趣味の悪い想像に過ぎないが、もしかしたら作家は今まで自分のネタをもとにして小説を書いた経験がないのではないだろうか。出版社の担当者から絶えずネタを与えられて、それに忠実に沿って小説を書く。いつもそうやって書いてきたものだから、そういう「サービス」のない他の出版社とは仕事が出来ないというわけだ。甲斐新聞社の仕事を引き受けたのは、作家も今までのそういった現状から抜け出したかったということもあったのだろうし、故郷の新聞であることや裕子の熱意に負けたこともあるだろうし、でも結局は甘い甘い蜜の味のする現状から抜け出すことが出来なかった。僕は作家のこれからの行く末と決して明るくない未来に同情を禁じえなかった。
コメント
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