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「サルとともに生きた少女の真実の物語」書評より

2014-12-21 22:22:35 | 小説・好きな物など
失われた名前―サルとともに生きた少女の真実の物語 著 マリーナ・チャップマン
   「朝日新聞」2014年02月02日付

  互いが慈しみあう生活を求めて

 英国に住む今は平凡な主婦となった女性の回想録だが、内容は驚愕(きょうがく)の一言に尽きる。

 マリーナ・チャップマンは自分が出生時に何と名付けられたのか知らない。
名前だけでなく生まれた場所もわからない。
5歳ぐらいの時に何者かに誘拐され、それ以前の記憶が残っていないからだ。

 誘拐された後、彼女はジャングルに置き去りにされた。
花柄のワンピースを着たひとりぼっちの少女が何年も密林で生き延びることができたのは、
ひとえにサルの群れと出会うことができたからだった。
最初は同じ物を食べ、鳴き声を真似(まね)るなどしただけだったが、
そのうち家族同然で過ごすようになり、サルの感情や言葉を理解できるようになる。
ある時などサルは明確な意思をもって病気の彼女を助けたことさえあった。

 失礼かもしれないが、本書はまるでサルが書いた本のようだ。
もちろん悪い意味ではなく視座がサルのそれと同じなのだ。
彼女の描くサルは人間のように会話をし、愛情たっぷりで個性豊かだ。
それは言葉を覚えたサルによるサルの生の報告であり、
どんなに優れた研究者の本にもこんなサルは出てこない。
一方、サルから見た人間の姿は残酷で獰猛(どうもう)で傲慢(ごうまん)で不条理だ。
人間が現れた時、サルたちは恐怖に怯(おび)えて警戒するが、
それを読むと動物にとって人間がどういう存在なのかよくわかる。

 それにしてもこれは本当の話なのだろうか。
人間社会に戻った後も彼女の人生は売春宿に売られ、路上生活をし、
犯罪者家族から命を狙われ……と転変を極める。
居場所が変わるたびに別の名前を与えられる、
そんな奴隷のような生活から何度も逃走を試みるが、
それはただサルと暮らしていた時のような互いが慈しみあう、
愛情のある生活が欲しかったからだった。

 14歳で初めて彼女はそれを人間から与えられるのだが、
その件(くだり)を読んだ時は胸に熱いものがこみあげてきた。

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評者 角幡唯介(ノンフィクション作家・探検家) 



 宝木多万紀訳、駒草出版・1890円/Marina Chapman 50年ごろ南米で生まれる。現在はイングランド在住。

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奇しくも今日、NHKニュースで野性の猿が、感電した仲間の猿を
救助というか、介護して命を救ったという話が流れました

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141221/k10014164101000.html
以下↓ニュース内容です (↑救出中の動画あり)
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インド 感電した猿を仲間が懸命救助
12月21日 17時47分



インドで電線に触れて感電し意識を失った猿を助けようと、仲間の猿が懸命な救助を行い一命を取り留めたことが英雄的な行為だとして話題になっています。

インド北部の都市、カンプールにある鉄道の駅で20日、電線に触れた猿が感電して意識を失い、線路に倒れ込みました。
すぐに仲間の猿が駆けつけ、倒れた猿の意識を取り戻そうと、頭や首にかみついたり、体を激しく揺り動かしたりしましたが、倒れた猿はぐったりとしたままです。
さらに、仲間の猿は、意識を失ったままの猿の体を抱え上げ、線路脇の水の中に投げ込んで目を覚まさせようと必死で体を揺さぶります。
一見、乱暴に見える行為ですが、懸命の救助の結果、20分ほどたって猿が意識を取り戻すと、救助に当たった仲間の猿は優しく背中をさすっていました。
駅のホームに集まった人たちは猿の行動に大きな拍手を送り、現地のメディアは「英雄的だ」とか「思いやりがあるのは人間だけではない」などと取り上げ、インドで大きな話題になっています。
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感動的な場面でした

「サルから見た人間の姿は残酷で獰猛(どうもう)で傲慢(ごうまん)で不条理だ。」

この言葉に代表されるように、人間とは動物にとって、
「残酷で獰猛で傲慢で不条理」な存在なのではないでしょうか

鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、狂牛病他
近来、数多くの家畜の脅威となる病気が大きな問題になった背景にあるのは
残酷な人間のしてきた事への、動物の悲鳴に思われてなりませんのですが
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