THE READING JOURNAL

読書日誌と雑文

「戦勝のかげに 軍法にそむく兵士」

2007-06-19 | Weblog
「日本残酷物語 第五部 近代の暗黒」

第四章 駆りたてられた者  戦勝のかげに 軍法にそむく兵士

ここでは、旧日本軍の軍法および私刑である「掟」によって処罰された事例について。

理非に照らして考えれば、もともと日本における軍隊自体が国家組織の下に根を生やした巨大な犯罪機構であり、暗い倒錯の影をおびた地下集団であった。とすれば、そうした社会で「犯罪」が問われるということ自体、奇怪な矛盾をふくむものとせねばならぬ。すなわち犯罪社会である軍隊において規律上「犯罪」が云々され、処罰がおこなわれたというありうべからざることが、しかも軍法のルールをふみにじる形でおこなわれたという点に日本軍隊における軍法の二重の喜劇性があり、犯罪者の悲劇があった。
・・・・・・中略・・・・・・
軍刑が軍内の独立した司法権によっておこなわれず、統帥権の名目の下に往々にして私刑化されたということは、軍隊社会において日常的に支配していた私刑的「掟」について、軍法がほとんど無力であったという事実と有無相通じることがらである。

このあと、上官侮辱罪や逃亡罪などで軍法にかけられた事例や前線において壊滅的被害をこうむった戦いから必死に後方の司令部まで逃げ帰った将校が軍隊の「掟」により自決させられた事例などが書かれている。

「掟」はさいごには民間人にまでおよばされた。サイパンで、沖縄、満州で数知れぬ婦女子が自決して死んでいったことはわたしたちの記憶に新しい。