【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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今年は事業所得がマイナスになりそう

2020-11-02 17:01:00 | 所得税の確定申告
★事業所得がマイナスは「異常」な状況

事業所得がマイナスであるというのは、事業主の「実入り」がないどころか、「持出し」になっているということです。こんな異常な状況ではとても事業を続けることができません。

しかし、コロナ禍が覆いかぶさっている今年は、事業所得がマイナスの事業主が続出することが予想されます。

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◆持続化給付金・家賃支援給付金は事業所得の収入に含める

持続化給付金・家賃支援給付金は事業所得の収入に含めて事業所得を計算します。会計ソフトの「勘定科目」としては「売上」ではなく、「雑収入など」売上以外の収入で処理します。確定申告書に添付する青色申告決算書においては「雑収入」、収支内訳書においては「その他の収入」に含めるとともに、「本年中における特殊事情」に給付金を受け取った旨を記載しておくとよいでしょう。

◆預貯金を取り崩しても収入にはならない

事業所得がマイナスであるということは、実入りがないのですから、何とかして生活費を捻出しなければなりません。

このような場合、蓄えていた預貯金を取り崩すのが一般的ですが、預貯金を取り崩しても収入にはなりません。蓄えていた預貯金は、過去に稼いで「課税も済んでいる」事業所得の結果ですので、それを使ったとしても課税は生じないのです。

◆借入をしても収入にはならない

金融機関などから借入をして資金を得ても、事業所得の計算における収入にはなりません。また、借入金を返済して資金が減っても必要経費にはなりません。ただし、利息は必要経費になります。

借入金で得た資金で仕入代金や家賃を支払えば、それは必要経費になります。その結果として得た売上代金は収入になります。

◆資産の売却は税金に注意

不動産や株式の売却により生じた譲渡所得は「分離課税」されますので、事業所得がマイナスで生活に窮していても課税されてしまいますので注意が必要です。

不動産の譲渡所得の計算は「売却価格-購入価格」ではなく、購入価格からは一定金額が「償却分」として差し引かれますので、思いのほか譲渡所得が生じて課税される場合があります。また、不動産を購入するための借入金は譲渡所得の計算において考慮されません。

株式の譲渡所得については、利用している証券会社で選択している「課税方式」によって手続が大きく異なってきます。一般的な「特定口座の源泉徴収あり」であれば、課税手続は証券会社の事務処理だけで終了しますが、それ以外の場合は自ら確定申告をしなければならない場合があります。

◆生命保険の解約も税金に注意

生命保険の解約返戻金も「一時所得」として課税されます。課税されるのは「解約返戻金-支払った保険料合計」から「50万を差し引いて」「それを2分の1した」金額です。なお、一時所得のプラスは事業所得のマイナスと損益通算できますので、結果的には課税されないことがあります。

◆「副業」の税金

「店を開けていてもどうにもならない!」ということで、よそに働き口を探して給料をもらっていた場合は注意が必要です。

給料からは税金が天引きされており、給与所得しか収入がないサラリーマンはこの天引きだけで課税は完結します。一方、給与所得以外の所得がある場合には、給与所得と給与所得以外の所得を合算しての確定申告が必要です。

事業所得がマイナスの場合には、そのマイナスを給与所得と損益通算できます。たとえば、事業所得のマイナスが100、給与所得はプラス100であった場合、損益通算すれば課税はされません。この場合、給料から天引きされた税金は確定申告により還付されるのです。

◆マイナスの繰越し(青色申告に限る)

事業所得のマイナスは翌年以降3年間繰り越すことができます。他の所得がある場合は損益通算後のマイナスを繰り越せます(損益通算できない所得もある)。令和2年はマイナスで令和3年がプラスの場合、令和3年のプラスから令和2年のマイナスを差し引くことができます。

◆マイナスの繰戻しによる還付(青色申告に限る)

マイナスは繰り越すのではなく、繰り戻すこともできます。令和2年の事業所得がマイナスで、令和1年の事業所得はプラスであれば、令和1年分として納付した所得税の一定額を還付してもらうことができます。

◆予定納税額の還付

事業所得がマイナスであれば、令和2年分として予定納税した分は、確定申告により還付してもらうことができます(事業所得以外に所得がないとして)。

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★確定申告は必ずしましょう!

事業の状況が悪くなると、「確定申告などどうでもいい(どうせ課税されない)」と決めつけがちですが、上記のとおり還付を受けられるケースもあります。また、この先も様々な公的支援が立て続けに実施されることが予想されますが、その公的支援の申込みには「確定申告書の控」が必須です。

確定申告は必ずしてください。(確定申告書は所得ゼロでも税務署は受け付けてくれます。)

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