2008 No.4 3/22~4/20
作者:浅田次郎(新潮文庫)
評価・・・★★★★ 4.0
映画で有名な本作品は短編だったのですね。
表題作はじめ、死者がたくさん登場する作品集です。
赤ん坊の時に亡くなった娘が、なぜか成長した姿で目の前に現れるという表題作は、不思議で切ない作品でした。
『ラブ・レター』と『ろくでなしのサンタ』は、表題作や『壬生義士伝』のような朴訥な主人公とは正反対のろくでなしのチンピラが登場する作品です。セコイ犯罪で警察にしょっちゅうお世話になるような輩ですが、意外に純情な面を見せます。
特に『ラブ・レター』の、金で偽装結婚した中国人の死んだ“妻”からもらったラブレターを通して、心底その妻に惚れてしまうという主人公を描いていて、滑稽でありながら思わずウルウルしてしまいました。
奇妙で不気味な『悪魔』もなかなか面白かった。
『角筈にて』『うらぼんえ』『ヲリオン座からの招待状』もなかなか味わい深い作品だった。
個人的に一番気に入ったのは『うらぼんえ』。
夫が浮気して愛人に子どもを作り、今まさに夫の身内連中から離婚を突きつけられそうになっている主人公の前に、亡くなったはずの祖父が現れる・・・祖父の無償の愛情に触れ、主人公がようやく前向きになるラストが良かった。