ある種の根源的な不安或は存在の不安

７０年生きて、自分はどういうものかについて薄々の洞察は出来ている積りであるが殆ど毎夜見る悪夢はそれが思い違いかもしれないとの焦燥を掻き立てる。何種類かの決まったパターンの夢を見る。

その一は『撤収』の夢である。今までやって来た生活を終わって荷物を片付け、部屋を清掃する夢、今まで勤めていた会社を退職する夢。片付けた積りがまだかなりの書物や書類、衣類が残っており明日はこれを抱えて立ち去らなければならない、と言う夢である。
その変形として何かの仕事で滞在していた宿舎、旅館を退去する準備の夢である。そして『今迄居た部屋』が大体同じ形をしている。集合住宅、どちらかと言えば明確な仕切りのない寮のような処の二階の端っこ、角の部屋。
その夢から目覚めての気分は、『まだ何か残っているのではないか』との不安感である。

その二は『途方にくれる』夢である。場面は決まって薄暗い夜、駅の人混み。そこで私は帰宅するために乗る列車の切符を買わなければならない。しかし既に今日は遅い、最早列車に間に合わない、或はお金がない、或はどこが窓口か判らない。見知らぬ人々、見知らぬ駅、見知らぬ文字、聞きなれない言葉、周囲は影のように忙しく行き交う人混み、そこで私は何処に行けばよいか判らず途方に暮れる。
この変形パターンとして幹線列車を降りてどこか田舎に向かう支線駅に降りた、そこでどこのプラットホームに行くべきか、一体どの支線列車に乗るべきか判らない、或は乗り間違えた、或は乗り過ごした。

その三は死者の夢である。既に故人となって年月が経った祖父、祖母、母などが出て来る。そこで彼らは私に何も言わない。だだ影のようにあの当時のあの部屋に座っている、寝ている、立っている。何かのメッセージを残すわけでもない。私は驚いて目を覚ます。

その四は来客の夢である。先日は伯母が来訪した。場所は多分伯母とその妹である母の父の家。そこに客人を丁重に迎えて・・それから後の記憶はない。つい最近姻戚となった北海道の女性三人の来訪があった。そこで女性たちが、おやすみなさいと妻が用意した別室に行く・・・そんな別室があったかな？と思うと我が家の玄関の右手に知らぬまに綺麗な未使用の部屋が出来ている。

これらを目覚めては考える。自分には何かやり残したことがあるのではないか？また今から経験しなければならない何かがあるのではないか？或は自分の終わりは病院めいたあるいは集合居住区めいたところであるのかもしれない、などと。


https://www.youtube.com/watch?v=elUy_vxPu8Q

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