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夜汽車

夜更けの妄想が車窓を過ぎる

厚岸・アッケシ

2015年10月10日 12時43分52秒 | 日記
子供の頃、小学館から”幼年クラブ”、”少年クラブ”、”小学**年生”、などと言う月刊誌が出ていた。連載マンガや物語があったので毎号夢中になって読んだ。今の子供たちにそんなワクワク感はないのではないか?

その中でコロボックルと言う小さな神さんの事を知った。多分100人中100人がそういうのは単なる作り話、迷信だと言うだろう。でもね・・・そういう話を創り出す程、人間は想像力豊かではないよ。何かがあったんだ。大きな蕗の下に、足寄のぶっ魂消る大きさのあの蕗の下に。

やはりその月刊誌の中でアイヌの戦いの物語を読んだ。マキリと言う刀の事をそこで知った。そしてその物語の中でトペケレ、トペシベ、アッケシと言う人物が出て来た。
大学受験に失敗して落ち込んでいた日々、石森延男氏のコタンの口笛を読みふけった。

人生を構成する様々の要素があるとすればどうやらそれは時空を飛び越えて散見されるのかもしれない。夢に見た、信州高冷地、立原道造や津村信夫の詩を思わせるようなカードは一度も現れなかったがなぜか北海道カードは人生の早い時期にチラリと現われた。

だから次男が北海道勤務と聞いても驚かなかった・・・ハハア来たな!と思った。でも彼が結婚する相手が厚岸の人と聞いては流石に考えた。”オマエは北海道や厚岸と何かの縁があるよ”とごくごく早い時期に見せられていたと思う。

ブログタイトル

2015年10月10日 11時40分33秒 | 日記
このブログのタイトルを夜汽車にしたのは僕の人生には夜中の汽車の旅が多く、それだけ印象に残っているからだ。

最初の汽車の旅は4歳の春3月、基隆から真夜中に出航したリバティー船は数日の航海の後、和歌山県の田辺に入港した。夜中に下船してそれからの記憶が途切れている。次に思い出すのはおそらく田辺から乗った汽車が何処かを走っている、僕は両親の間に座り向かい側に叔母たちが居たような感じだ。その時初めて車窓に雪を見た。畑の石の上に残った雪だったのだろう、雪とはコッペパンのような形をした白いものだ、と思った。
その汽車の旅は何かその後の僕の人生を暗示していたような気がする。・・・漆黒の原野を火の粉を散らしながら驀進する汽車、僕はそれに揺られているのに何故か遠くから見ている。

高等学校は男子高校で寄宿舎に入った。休暇に入る前、終業式を終わると机の周りを整理して自宅に持って帰る教科書、参考書などと寄宿舎に置いて帰る書籍などを分類して夕食後に講堂に集まり上級生のアトラクションを観たり歌を歌ったりして遅くに汽車に乗った。同じ町に帰る仲間ととりとめのないおしゃべりをしながらカタン、コトンと鳴る線路の音や汽笛を聞いた。踏切で停車しているバスの窓明かり、ぼんやりと浮かぶ民家の障子の影法師。

大学は遠かった、朝下宿を出ると小倉には真夜中近くに着いた。そこで鹿児島本線に乗り換えて夜通し走る。羽犬塚、袋、千丁、肥後田の浦、・・・如何にも九州の地名が現われては遠のく。夏休み帰省の時は沿線一面水田に星空がけぶり、上り列車と行き合いに停車するとかえるの声が遠い記憶に引きずり込むようにしていた。春の休みに帰省の時は夜の薄暗がりの中に白モクレンや桜がほのかに見えた。遠くの山に赤い灯、あれは何だろうか、飛行機の為の燈台、飛行燈台だろうか?などと考えながらそれが近着いては遠ざかるのを眺めた。山の上の明るい窓、窓・・あれはサナトリウムじゃなかろうか、ああ、出来る事なら結核に罹ってサナトリウムに入りたい、そこに美しい看護婦さんが居て・・・などと夢を描いたりした。中天にあったオリオンが山の端に隠れそうになるころ阿久根、西方、と過ぎて霧深い川内に着く。

造船所に入ると頻繁に東京出張があった。飛行機はご法度で夜行の寝台特急で昼前に東京について午後から会議に出てその遅い夜行でとんぼ帰りした。眠れないままに窓の外を見る、知らない町、知らない道、赤いランプが点滅してチンチンチンと音がする踏切、その傍に立っている母親と子供達、ふと家族を想い出す。どういうわけかやっぱり自分は一人なんだ、と言う匕首のような寂寥感に刺される。

新幹線に最早そのような情緒はない。蒸気機関車の時代は朝真っ白な開襟シャツが着く頃は油煙で襟周りが黒く汚れていた。でも僕は各駅に停車しながら、ゆっくりゆっくり走る汽車が好きだ。考え事をする時間も材料もある。便利・快適・速い、だけがエライのではない。

そして僕の大好きな物語は宮沢賢治の”銀河鉄道の夜”、マンガは”銀河鉄道999”

僕もやがて死ぬ。その時多分、あのかぐや姫のように地上での記憶を一切消し去られるのだろう。そして、銀河鉄道に乗る。果てしない夏の草原をうすら明るい地平線に向かって走る。銀河に白鳥が羽を広げる。僕は一体どこへ行くのだろうか・・・望むらくは海の星、海王星、そこで僕は親たちも、妻も、子供達も知らない不思議な廃墟であてもない旅人となろう。