明治から昭和に生きた祖父の頭上に桜が毎年咲いた。
生まれ土地柄関係なく、生きた様に品が漂う。
濡れ縁にすわり茶碗をもつ。
静かにゆっくり口に茶をふくみ何を考えているのか庭を眺めしばし佇む。
ただ眺めているようで、そんな単純ではないという複雑な背中をしていた。
複雑な背中の奥は深い愛がいつも伝わってくる人だった。
ワイシャツは傷んだ衿を切り着ている。作業着は油じみや木の香りがしみついている。革靴は草臥れ踵を削り履いていた。
それでも佇む姿は品が漂い、私は祖父の静かな一服姿が好きだった。
家事をし薪で御風呂をくべ必要なつくれる日用品をつくりながら日々を送る。
大きなものなら、箪笥、部屋を建てるという事をしてくれる。だが大工ではない(笑)
日々の私たちの生活をこなし文句ひとつ無く、寡黙で辛抱強く、多くを語らない人だった。
「孫に自分の全ての血をあげてください」
私の病気に祖父は医者に訴えたことがあった。けれど輸血には祖父の年齢は無理だった。
でも私は何とか今も生きている。祖父の深い愛に私は安堵し生き延びれたと感じている。
そして深い愛は今も続いている。
40年経つ桜の幹は太くなり、私の頭上でもうすぐ開花宣言しようとしている。
私には、とても祖父の様な品を漂わせる人間になれそうにないが、近づきたいと考えたり真似事をする。
多分、笑われているだろう(笑)
今年も桜の開花を見計らって桜好きな祖父が桜好きな先祖をつれ帰ってくる。ついでに動物も帰ってくる。
桜の開花は我が家では小さな帰省ラッシュなのである(笑)
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