銀河のサンマ

何でもあり

茶色の親子丼

2020-08-29 | 銀河食堂

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、マグカップに水を注ぎ、飲む。

2/3飲んだところで一息、と僕に左手からマグカップがスルリと抜け落ちる。

しまったっ! 咄嗟にでた右手、マグカップを宙で救えず。

床に落ちる。

ガラガラン。割れなかった。

当然、残り1/3の水が床に零れる。

転がったマグカップと零れた水をみる。

拭かなきゃいけないと分かっているが、みる。

思考が止まる様に物思いにふけりだす。

「天地始粛になったわ、秋近しも営業中」

おぉっっっ!びっくりしたぁっ! 僕は大きく声を張りあげた。

マグカップと零れた水の視線に突然、小料理屋風「銀河食堂」現る。

まるでビックリハウス。

改めまして、戸をガラリ。

あら、久しぶり。忽ち秋気分?

え?あ・・・ボーっとしてしまったのです。と僕は恥ずかしく頭を掻いた。

朝、未だでしょ。親子丼試食していかない?

でた、女将の初めてシリーズ。僕は試食係?

ふふ、毒味係よ、サラリと言う笑顔の女将。

尚、タチが悪いね(笑) でも嫌いじゃないよ、女将の冗談。

僕は小さく舌をだした。

いただきます、スプーンを手にとり軽く頭をさげた。

見た目、茶色のごった煮。

親子丼を一さじ口に入れる。

うぅっ、美味い!!

ふはっ、そう?女将が満面の笑みをし、言う。

濃い口醤油しか無くて、茶色い親子丼になっちゃったのよ、ふふふ。

女将は照れ笑いをした。

見た目と違い、味つけ濃くなく玉葱のクッタリ感、玉子のふわり、僕は好きだ。

僕はスプーンをすすめながら不思議に思い、女将に尋ねた。

ねぇ、試食のレシピは何を参考にしているの?

ふふふ、思い出。

思い出?

あ、思い出より味の決め手はね・・・

何何?僕の耳がダンボになる。

美味しくなっておくれ、と囁いて思うと味が変わるのっ、ふふふふっ。

本当?

本気よ、ふふふふっ。

分かるようでわからない様な。。。

わかるようで、わかるようになるわ。女将がウインクする。

だからね、すぅと女将が深呼吸し静かに言う。

天地始粛だけど耽るに早いわ。

・・・はい・・。

水を溢さないように注いで。

ん?

みあげると手に一杯の水を持つ女将が僕に勢いよく、かけようとする。

うわぁぁぁぁあっ。

僕は咄嗟にスプーンと一緒に手で顔、頭を覆い身を縮める。

うぅぅぅぅぅぅ・・・もぅ。。。

3分くらいは経ったろうか、恐る恐る目をあけ顔をあげた。

あれ?濡れてない。

ここ何処だろう。

目の前には大きな瓶が倒れている。

その瓶から溢れるようにピンクの花が咲きこぼれる。

スプーンを持っていた手は朝、落としたはずのマグカップ。

溢したはずの水も入っている。

長く咲きますように。

僕はそっと囁き、マグカップの水を花一面に注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

※ 2020.08.27朝食の一部

 

 

 

 

 

 

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