中台トホホな新幹線

国鉄も分割・民営化されて二十年弱ともなると、対中強硬派の葛西会長率いるJR東海から中国熱に浮かれるJR東日本まで「JRもイロイロ」という様相を呈しているようです。JR東日本は将来的な北海道新幹線開業を睨み、現在時速360キロ運転に躍起になっていますが、東海と東日本は新幹線に対する思想的な違いも大きいですね。

◆中国へ新幹線を初出荷　式典なし、対日感情配慮か（共同）
◆次世代新幹線、時速３６６キロで試験走行（讀賣）
◆中国首相、したたか商談　エアバス１５０機購入、見返りは工場誘致（産経）

台湾に700T車両が渡った際は神戸でも高雄でも盛大な式典が催され、高雄市民も盛り上がっていたようですが、別の国とはいえ、中国へは対照的にさびしい門出となったようです。
マスコミは中国向けの新幹線車両を「東北新幹線のはやてと同タイプ」等と書いていますが、そのE2-1000番台は長野（北陸）新幹線開業時の車両のマイナーチェンジであり、技術的にはもはや10年前のものに過ぎません。（したがって技術流出云々に関しては巷間言われているほどの懸念はないと思われるものの、何せ中国ですから予期せぬ事態は想定されるでしょう。中国如きに渡すこと自体が気に入らないですけどね）
そもそも新幹線というのは、車両と運行システムが一体化して初めてその真価を発揮するものであり、実際台湾で一番難渋しているのは欧州方式の信号システムとのすり合わせです。車両を製造するだけでは難民収容所位にしか活用できず、専用軌道でもない「なんちゃってチャイナ新幹線」はそこら辺の詳細が判然としないのですが、川崎重工としては果たしてオイシイ商売なんでしょうかね？
対中ビジネスは巷間言われているほど儲かるものではないという米国のコンサルタントの指摘（記事）もありますが、中国熱に浮かれる企業（トヨタみたいに北米市場から海外利益の７割を挙げている企業としては適切なリスクテイクでしょうが）というのは、何だか「パチンコで勝った勝った！」とうそぶいている輩と大差ないような印象も受けます。（博打・中国・飲み屋のネーチャンにはあまり入れ込まない方が賢明かと・・・・）
因みにこの中国の新幹線車両には、日本勢の他に独シーメンス社も参加しているのですが、欧州勢は昨年来エアバスの売り込みにも躍起になっています。（A380何かは日本市場には合わないもんなぁ・・・・）中欧の接近は武器禁輸解禁の件とも絡むだけに、こちらの動向も気になります。
合衆国のネット企業が中共の独裁体制に手を貸しているという問題点も含め、対中ビジネスに関しては、広範な視点でその是非とあり方を考える必要があると言えそうです。

◆台湾新幹線、電線泥棒が横行　高圧電流で対抗へ（朝日）

開業が一年遅れ資金面でも難渋している台湾新幹線ですが、沿線のあちこちに「電線泥棒」の出現で約10億NT$（約36億円）の被害とはちょっと痛過ぎる＆トホホな話ですねぇ。THSR側は泥棒対策として全線通電を前倒しで実施したようですが、電気代も余計にかかるだろうしなぁ・・・・
私はいい加減＆見切り発車＆無計画なTHSR側に対しては批判することの方が多いのですが、日本人駐在員が出入りしている台北市の飲食店でも、進捗に関しては芳しい話を聞かなかったのでかなり気を揉むところです。
開業が遅れるなら遅れるで日本にプロモーションにでも来ればいいのに（シンガポールでCM流して日本で流さないというのが理解に苦しむ）と以前から思ってはいたのですが、実際金に困っているのも事実でしょう。こういう時に円借款でも打てたら、日本の新幹線の宣伝効果も期待出来るのにと忸怩たる思いもいたします。
台湾新幹線が開業したら、台北～高雄の縦貫軸がノンストップ最短80分で結ばれることになりますが、日本の前例では羽田～名古屋、仙台、新潟の空路が新幹線開業で撃沈されました。
開業後は国内線専用の松山空港の廃港＆跡地再開発の問題も再び焦点にのぼって来るでしょうし、将来的には台北と高雄の政経分離→遷都といった構想も本格的に論じられることになるのかもしれませんね。

中国は知ったこっちゃないですが、台湾は日本の鉄道の海外進出の試金石（記事）として位置づけられるだけに、台湾高速鉄路（THSR)には何が何でも成功してもらわないとと祈るような思いです。

※写真・・・・JR東日本の次世代新幹線、FASTECH360

東京～札幌４時間程度ならかなり使い物になりますねぇ・・・・

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