このところ同時多発的に季節の彩りを引っこ抜く不遜な輩が出没しているようです。「貧すれば鈍す」がここまで達するのは重篤であり、日本人の精神はかくも劣化したのかと寒心に堪えません。先の大戦末期に「私がどうしても滅びてほしくない民族は日本人だ。彼らは貧しい。しかし、高貴である」と詩人のヴァレリーにこぼしたクローデル・元駐日仏大使の有名な言葉を思い出しますが、泉下のクローデル氏は今日の日本人を見て何を想う・・・・
◆【日韓共同記者会見詳報(1)】福田首相「シャトル外交いいスタート」(産経)
◆【日韓共同記者会見詳報(2)】李大統領「未来に向け、日韓がともに歩むことが、両国のプラスになる」(産経)
◆李韓国大統領:TBS番組に出演、100人の市民と対話(毎日)
◆「独島・日本教科書問題は取り上げない」…権哲賢駐日大使(中央日報)
「権哲賢(クォン・チョルヒョン)新任駐日大使は18日、在任中には独島(ドクト、日本名・竹島)や教科書問題を取り上げない、と明らかにした」
↓
「要するに、ウリは( )の新任大使ニダ!」
韓国や台湾の外交当局にとって、駐日大使は駐米大使に次ぐ重要なポストのようで(私は歴代の韓国大使の名は存じませんが)、李明博大統領の意図や権哲賢大使の経歴から見るに、( )に入る言葉は〝知日派〟ということになるのでしょう。(〝親日派〟と書いたら×だな。この辺の韓流外交用語の機微も難しいところで・・・・)
しかしながら、そもそも他国の教科書を「問題」にする姿勢自体が異常なわけであって、〝知日派〟を自負するなら竹島の件はむしろ積極的に問題にして解決を目指すべき──日本側は平和的にハーグの法廷で理性的なジャッジメントを求めているだけですが──ではないのかと。(大使本人は自らの「寛容さ」を誇示し、日本に〝貸し〟でも作ったつもりなのかね?)
閑話休題、キャンプデービッドでの米韓首脳会談も印象的でしたが、天皇皇后両陛下に謁見する機会を付与した日本政府の厚遇ぶりも際立っています。韓国大統領の訪日は3年ぶりのようです(当時「指宿の砂むし温泉に埋めてやれ!」と思った記憶があります)が、「国交樹立後の揺れた日韓関係」という点で筆頭に挙げられるのは、金大中拉致事件や文世光事件でしょうね。70年代の事件の記憶は世代的に存在しませんが、日韓首脳会談が中断した間の靖国やら竹島やらはあちらさんが過剰に騒いだだけの話で、相対的に些少な案件でしょう。(報道機関の〝イメージ映像〟にこの点いささか疑問を抱いたのですが・・・・)
「日韓新時代」を歓迎する空気の影で、日本側の懐疑的な本音が見え隠れするのも興味深いところです。それは官房長官記者会見での「歴代の韓国大統領は政権発足直後にそうした姿勢を掲げてきたが、政権の途中で歴史問題が日韓関係の主な焦点になる繰り返しだった」(産経)という質問に集約されるように思うのですが、『マンガ嫌韓流』世代ではない中堅層記者から臆面も無い突っ込みが来ている点は注目に値すると思います。能天気な韓流オバハンはさておき、外交・報道関係者の間でも「倦韓」で疑心暗鬼な空気が漂っているということでしょう。(町村官房長官の答弁にもそれがにじみ出てますわなぁ)
日本に昨夜到着した李大統領は〝在日同胞〟との会合の席で、参政権付与に尽力する意向を表明したようですが、費用のかからない施政方針を掲げたあたり「敵ながらあっぱれ」ですかね。天皇陛下の訪韓要請共々、投げたボールは日本政府の手中にあるという認識でしょうし、実現を見ないのは日本側に問題があるという切り返しができますから。
「この大統領は結構したたか」(記事)と改めて思った次第ですが、〝実利主義〟を掲げる李大統領が対日強硬姿勢に転じるとすれば、手垢にまみれた「歴史問題ナショナリズム」を前面に出すよりも、こうした点ではないかという気がします。(先ほどまでTBSのニュース23を横目で眺めておりましたが、 内外の反応を意識して慎重に言葉を選んでいる感じではありましたね。しかし日本語で「こんにちは!」の一言も発しないのは流石と言うか・・・・)
対北政策面でも、韓国が日米韓の連携を重視する姿勢に回帰したことは歓迎すべきでしょう。李大統領のさわやかな笑顔も印象的で、さしあたって今回の外遊は成功裏に終わったと総括できると思います。しかしながら「未来志向の日韓関係」を報じる皮相的な報道の影で、竹島問題の平和的解決や、首相の靖国参拝といった点が事実上封じられた(=日本側が自制を迫られている) 構図となっている点にも注視すべきではないでしょうか。
中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団
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