私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

アーミテージ氏の「大岡裁き」は見事だが・・・・

2007年02月20日 | 極東情勢(日本とその周辺)

合衆国のチェイニー副大統領は日本と豪州を矢継ぎ早に訪れ、韓国はスルーのようですね。我が国でもQ魔大臣がスルーされている件が報道で話題になっているようですが・・・・

◆Armitage criticizes State Department(Taipei Times)
◆2006年 両岸関係の世論調査総合報告(台湾週報)

<Former US deputy secretary of state Richard Armitage came to President Chen Shui-bian's (陳水扁) defense on Friday over the decision to drop variations of "China" from the names of state-run firms and constitutional reform, saying the US State Department's criticism of the moves were an over-reaction by the Bush administration.>
(合衆国のR・アーミテージ前国務副長官は、国営企業から「中国」の名称を取り去る決定と憲法改正に関して、こうした動きに対する国務省の批判はブッシュ政権の過剰反応であるという見解を示し、陳総統を擁護する立場を金曜日に示した)

<Regarding the name-change decision, which was criticized by the State Department as a move that altered the "status quo" in the Taiwan Strait, Armitage said the decision "is not one that bothers me one way or the other." On plans for constitutional reform, he said the issue was one for Taiwan's democracy to decide.>
(国務省が「現状」を変更する動きであると批判した名称変更の決定に関し、アーミテージ氏は「何れにせよ、私自身が気を揉むところではありません」と延べ、憲法改正案については、台湾の民意が決定すべき類の問題であるという見解を示した)

この件は私自身溜飲が下がった(「中華航空」の名称変更だとIATAの絡み等で少々際どいかと思った次第・・・・)のですが、アーミテージ氏は昨年三月の訪台時(記事)にも、憲法改正に関して同趣旨の見解を示していました。もっとも、これは『所謂「四つのノー」に抵触しない範囲内で・・・・』という前提が付されているのは間違いないところだと思います。((「二国論」や領土・主権に触れないのが前提で、李登輝前総統らが想定している新憲法のあり方とは合致しないでしょう)

<"So what Taiwan needs to take into consideration, at a time when the United States is depending so heavily on China on the questions of North Korea, is that to be seen unilaterally changing the status quo might give some headaches to the people in the State Department," he said, adding that such a response was "very understandable.">
(「したがって、台湾が考慮すべきなのは、合衆国が北朝鮮問題を巡って中国を大いに頼りにしている最中にあっては、一方的な現状変更にも映りかねない動きが、国務省の職員の頭痛の種となりかねないという点です」と氏は述べ、こうした国務省の反応も「無理からぬことです」と付け加えた)

国務省の立場も慮る端的な背景説明も加えつつ、米台双方に等分な理解を示した見事な「大岡裁き」ぶりだなと感服した次第ですが、感服ついでに、改訂版アーミテージ報告の台湾に関する記述(記事)を改めて眺めてみましょうか・・・・
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・アメリカ合衆国は上海コミュケと台湾関係法に基づく「一つの中国」政策を引き続き堅持すべきである。
・日米両国は2005年2月に発表した「共通戦略目標」を基本指針として、対話を通じた平和的解決を促すべきである。
・台湾は自衛能力と民主主義の強化を図り、中国との緊張を緩和するような両岸関係の構築にも努めるべきである。
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レポートの大筋には特段真新しい印象を受けなかったものの、2005年2月にワシントンで開催された「2プラス2」は一つの転機だったなと改めて思った次第です。「反国家分裂法」が全人代で可決される前月に、日米両国が共同文書で台湾海峡問題への〝関与〟を明言したのは台北側にも歓迎されましたし、画期的な声明であったと評価できようかと思います。

<To advance this interest, the United States has adopted the policy of “dual restraint,” deterring the use or threat of force by China while simultaneously discouraging unilateral Taiwanese steps toward independence.>
(日米両国の利益を促進する手段として、合衆国は中国の軍事力行使や脅威を阻む傍ら、同時に台湾の独立に向けた一方的な動きも封じるという「二重規制」の方針を採用している)

2005年2月の声明を受け、ブッシュ大統領やライス国務長官が台北側に「対話」をけしかけた(記事)こともありましたが、総体的には〝関与〟というより、〝管理外交〟の色彩が強い印象を受けますね。(「二重規制」の件もも衆知の事実ながら、改めて文書で目にするとあからさまと申しますか・・・・)
端的に言えば、(あからさまな〝関与〟の具体的手段として)〝力技〟で台湾海峡の現状を維持させようというのが当面の合衆国の方向性であろうかと思います。当座、こうした合衆国の姿勢は、『基本的には「台湾の独立または統一に賛成する人は少なく、現状維持を主張する人が多い」という傾向が続いている。また、台湾主流についての世論では、台湾海峡の現状は変化を受けるべきではなく、しかも大多数の人が、「台湾は主権独立国家」であることに同意していることが明らかとなった』(台湾週報)という台湾の人々の〝現状維持〟志向と根本的な齟齬を生じることはないのでしょうが、

<"If [Taiwan] goes in the other direction [toward unification], if the KMT [Chinese Nationalist Party] and others try to move more rapidly toward the PRC, that would be cause for a re-evaluation [of US policy toward Taiwan]," Schriver said.>
(「もし[台湾が]別の方向[統一]へ向かうようであれば、仮にKMTその他の勢力がPRCへの傾斜に拍車を掛けるようであれば、それが[合衆国の台湾政策の]、見直しの契機となるであろう」とシュライバー氏は述べた)

将来的に台湾が選択する可能性のある〝a different path〟(日米両国にとっては、とりもなおさずシナリオが狂う場面ということでしょうが)に関して、シュライバー元国務次官補代理は、(民主的なプロセスを経て)親中勢力が台頭してくるケースを想定しているのですが、これまた国務省を初めとするワシントンの危惧(=台北側の独立に向けた動き)と対照的な見方で興味深く思えます。

多元連立方程式を解くが如き複雑怪奇な今日の情勢を概観すると、様々な局面で台北側の〝認知欲求〟がすんなり満たされるケースは想定しづらく、『四つのノー』は、〝現状維持〟のガイドラインとして、次期台湾総統も公約〝させられる〟可能性が高いでしょう。(ちなみに、「北京五輪と総統選という絶妙のタイミングで〝台湾独立宣言〟」といった予測は、何の根拠も可能性もないと私は思います)
しかしながら、ワシントンが台北側の〝認知欲求〟を力技で抑える姿勢だけに今後も終始するのであれば、それこそ彼らが守りたい台湾海峡の現状を蝕む元凶になりかねないという懸念(かつては親米、今反米何て国は、パーレビ国王時代のイランを初め、世界中で枚挙にいとまないのではないかと・・・・)を抱くのも偽らざるところです。
中台両岸の対話を促すのも大切でしょうが、今日の「民主台湾」との信頼醸成のあり方を再検討する姿勢を合衆国には求めたいところです。

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1 コメント

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Unknown (kyouji)
2007-03-11 19:58:05
 台湾の問題は結局は台湾人自身の選択による訳で、本当に難しいですよね。
 この事を考えると、いつも堂々巡りになってしまいます。
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