私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

金美齢さん来福秘録

2007年04月02日 | 台湾
TV番組等でおなじみの金美齢さん(元総統府国策顧問)が、福岡李登輝友の会結成三周年記念を祝うべく来福され、「二つの祖国 日本と台湾」という題目での講演会が催されました。前日にも有志で歓迎の食事会を行い、会の後福岡空港へお見送りをしてきたのですが、機知に富んだ何とも気さくな方でしたね。

講演は著書の『日本ほど格差のない社会はありません』(WAC出版)の内容をベースにしたものでしたが、李登輝友の会の企画ということで、96年の総統選にまつわるエピソード等も交えつつ、聴衆を飽きさせない80分でした。折しも会場の同じフロアで横田めぐみさんと家族の写真展が催されていたのですが、彼女はそれを取り上げ「拉致問題も台湾も長い間メディアから無視されてきました。メディアが報じないというのは、(問題が)存在しないに等しいのです」と指摘しました。
金美齢さんが来日した40数年前当時の日本では、「打倒国府独裁」の台湾独立運動を報じるのはタブー視されていたでしょうし、断交後の台湾報道もせいぜい産経一紙といった時代が長かったでしょう。その産経も国府・台湾支持というスタンスだった訳ですから、日本国内で〝反政府運動〟を行う彼女らにスポットライトが当たる機会は皆無に等しかったに違いありません。空港に向かう車中「近年、旅番組等でもメディアへの露出が目立つようになりましたね」と申しましたところ、台湾人としてそういう傾向は大変嬉しく思うとのことでした。

前日の歓迎会ではタイムリーな「謝罪」ネタがありましたので、「この度の光華寮訴訟の件は誠に遺憾なことで・・・・」と切り出しましたところ、彼女自身は光華寮それ自体には特段の感慨はないようでした。「またか・・・・」といった諦観とともに、所詮は国府と中共の「中国縄張り争い」の残滓であるという認識だったのかもしれませんが、「こういう不安があるから、日本での故宮の展示は難しいのよね・・・・」と一言・・・・
故宮博物院の所蔵物の展示に関しては、ドイツやウィーンでの実績がありますし、私自身九州国立博物館の開館時何かは絶好の目玉候補と思ったこともあるのですが、「まぁ、日本、特に九州だったら台北に行っちゃう方が話は早いでしょうけどね・・・・」とその場は我知らずお茶を濁しました。「日本は台湾を中共に売り渡しかねない」という疑念と警戒は看過すべきではないと改めて思う次第です。

金美齢さんは16時に講演会場を後にされたのですが、車の助手席に乗り込み「空港、国際線ターミナルまで・・・・」と告げたところ、「今日は台湾ではなく、東京に帰るのよ!」と爆笑されました。講演の中でも福岡空港の利便性については言及されていましたが、「あら、もう着いたの?ここから台湾にも行ける何て成田と違って近くていいわねぇ・・・・」と改めて驚かれた風でした。
「そう言えば、成田は台湾より前に、その実態に即して〝新東京国際空港〟から〝成田国際空港〟に正名しましたね!」と申したところ、正名はいいけど、台湾線は羽田発着のままで良かったと苦笑されていました。
元々18:30分発のJL便を予約されていたので、早い便に変更を試みるも、生憎16~17時代の便は全て満席。「空くかどうかは判りませんが、キャンセル待ちをしましょう。私がここに立っていますからあちらに座っていらしてください」と申したのですが、「どうせこれから機内で座るんだから、私も立って待っていますよ」と固辞され、一緒に見送りに来た久留米大のC先生と三人でカウンターに並びました。
幸いにも第一候補の16:45分発の便のキャンセルが回って来たのでいそいそと登場口へ向かったのですが、16時に天神からタクシーで空港に向かい(地下鉄では空港まで10分ですが)、キャンセル待ちを試みて45分の飛行機に搭乗するのは流石の福岡空港でも驚異的であり、仮に元々16:45分発の便を予約していたなら、タクシーに乗る時点で泡を食うところでした。「いやはや、ラッキーでした!これも我々三人の日頃の行いでしょうかね?」と申しましたところ、金美齢さんは「いいこと言うねぇ!」と破顔一笑。
出発前に金美齢さんとC先生が二言、三言ちょっとした言葉を交わされたのですが、台湾語での会話(後でC先生に「あれは北京語でなく、台湾語ですよね?」と確認した次第ですが・・・・)でした。彼女にお目にかかったのも、彼女が話す台湾語を耳にしたのも私にとっては初めてでしたが、金美齢さんは台湾の方なんだなと改めて実感させられた印象深い一コマでした。戦前の日本教育を受けた世代は「日本語族」と称されたりしますが、彼らの生活言語はあくまで台湾語であったという一つの例証でしょう。

金美齢さんは講演の中で、李登輝前総統を通じた台湾認識・理解が友の会の意義の一つであると述べられていましたが、勿論それが全てであるという趣旨ではないでしょう。車中、台湾の魅力について尋ねられた際、「私自身難しいことは判りませんが、まさに百聞は一見に如かずでしょうか。適当にぶらぶらしていると何かと面白いんですよね・・・・」と申したのですが、日本への留学経験を共有する両氏は若い世代(もはや私は対象外・・・・)の交流拡大に期待されているようでした。中国への当てこすりや戦前へのノスタルジアだけに依拠する姿勢は長続きしませんし、相互理解に齟齬を生じるのは必至だと思います。

帰宅してから御著書を拝読させていただいたのですが、教育や子育て等をテーマとした講演も面白いでしょうね。金美齢さんの今後の益々のご健勝とご活躍を祈念したいと思います。

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1 コメント

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久しぶり・・・・ (edaats)
2007-04-02 22:05:58
お久ですね。すばらしいイベントでしたね。
私も東京での講演会や台湾での食事会でご一緒しましたが、ホント肝っ玉かぁーちゃんという側面を持ち、台湾人というより下町・江戸っ子って感じでした。

やはりこれからは若い人たちが心底付き合える友人になれるかが大事ですね。
先月も例の文庫運営での方向転換をはかるべく努力を提言したところです。いわゆる知日人、親日家の面々はどんどんこの世を去るのですから・・・・・。
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