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民俗地図への試み

2024-07-02 23:37:46 | 民俗学

 長野県民俗地図研究会は、QGISを利用した民俗地図の作り方を「学ぶ」という段階を越えて、具体的な民俗地図作成を行いながらGISを利用した効果を得ようとしているが、実際のところ効果を一見で示すほどの例にはまだ至っていない。例えば「自然石道祖神数とサイノカミ」で扱った図のように、複数のデータを重ね合わせて何かを表現する、が目的なのだが、まだ思うようなものを描けていない。

 こうした中、研究会では今秋の日本民俗学会年会でグループ発表を予定している。民俗地図の活用について長野県関係者は盛んにこれまでも努力されてきたが、なかなか広まるには至っていない。しかし、GISソフトが身近になった今、それを活用して図の重ね合わせをする作業は容易になった。したがって今汎用化させずにいつ汎用化させるのか、という視点に立って、ようやく研究会を立ち上げたところ。当初は『長野県史』のデータを利用して作図することを目標にしていたが、周辺県とのかかわりに今は目が向くようになった。とりわけ長野県史編纂過程で調査された『県境を越えて』の調査地点も図化のポイントとして追加し、さらには昭和50年代を中心に発行された各県の民俗地図(民俗分布図)のデータも、場合によっては利用しようと考えている。もともとQGISの基本調査地点を長野県図に落とした上で作成方法をみなで講習してきたが、いずれ隣県にも目が向くのは自然な流れと考えていて、隣接県の図を表示する用意もしてきた。したがって各県の民俗地図のデータを落とし込むのも、そう難しいことではなく、今後の展開としては隣接県を含めた地図作成も視野に入れていく考えだが、技術的なことはともかくとして、まず年会に向けて、何をテーマにしていくか、早急に検討しなければならないところにきている。

 それにしてもかつて国庫補助事業で全国の県で実施された民俗地図作成の報告書をいくつか閲覧したが、作り方は各県で異なる上に、作成された図は、やはり地図に至っておらず、分布図に過ぎない。とりわけ記号に至っては、とりあえず違う記号を選択して図に落としてみた、というレベルで、図を一見して何かがわかるというレベルには達していない。せいぜい分布が密であるか、疎であるかといった判読ができる程度。むしろ図ではなく、回答を一覧化してあった方が、これから地図を作成する者には利用しやすい。もちろん図になっているから、密度レベルは判読できるが、これを再利用するには手が掛かる、というのが実態だろうか。もちろん無いよりはましだが…。


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